登録カメラマンに求める、企業撮影の10のルール

企業撮影のカメラマンに求めるルールとは、写真の腕とは別に、発注企業の情報と現場を預かる人として守ってもらう約束のことです。日本プロカメラマン手配では、登録カメラマンに10のルールをお願いしています。直接取引をしない、見聞きした情報を外に出さない、予備機材を現場に持ち込む、変更は事実・影響・代替案をそろえて報告する。この記事では、その10項目と、それぞれが発注企業に何を保証するのかを公開します。

目次
企業専門の出張撮影「日本プロカメラマン手配」が、手配の現場から書いています。料金はハーフ66,000円・フル132,000円(税込)。料金表を見る/無料で見積りを依頼する

結論|10のルールは、発注企業が「自分で確かめなくて済むこと」を増やすための約束

10 HOUSE RULES FOR PHOTOGRAPHERS

書類の項目にペンでチェックを入れていく手元のイメージカット。企業撮影で登録カメラマンに守ってもらうルールを1つずつ確かめる記事の挿絵

撮影を外注するとき、発注企業の担当者が心配しているのは、写真の出来だけではありません。社内で見たことを外で話されないか。撮った写真を勝手に公開されないか。当日来られなくなったらどうなるのか。データはいつまで撮影者の手元に残るのか。こうした心配は、写真を見ても、ポートフォリオを見ても解消されません。

私は元カメラマンとして企業の現場に立ち、いまは企業専門のカメラマン手配として、撮影者を審査してアサインする仕事をしています。撮る側にいたころ、こうした約束は撮影者ごとの心がけに任されていました。心がけの良い人に当たれば問題は起きず、そうでない人に当たると、発注した担当者が後始末をすることになります。手配の仕事を始めてから、この「当たり外れ」を心がけではなく約束に置き換えることを、いちばん大事な仕事の1つだと考えるようになりました。

10のルールは、そのために決めたものです。どれも特別な技能ではなく、企業の業務として撮影を引き受ける人なら当然守るべきことばかりです。ただ、当然のことほど書面にも言葉にもならないまま運用され、崩れたときに初めて気づかれます。だから、ここではあえて一覧にして、発注企業から見て何が保証されるのかと一緒に書きます。

この記事の位置づけ|審査は「登録の前」、ルールは「登録の後」

撮影者の見極めについては、すでに何本か書いています。何を基準に審査しているかはカメラマンを審査する4つの基準|人柄・機材・実績・ポートフォリオに、その中の人柄をなぜ最上位に置くのかはなぜ「人柄」を機材や実績より重く見るのか|企業撮影の写真を決めるものにまとめました。見送りの判断の型は私がカメラマンを断る理由|審査を通過しなかったケースに共通するもので扱っています。

これらはどれも、登録の前に何を見ているかの話です。この記事は、登録の後に何を守ってもらっているかを扱います。審査は入口の判断で、ルールはその後の案件ごとの運用です。審査を通った人でも、案件ごとの約束がなければ、現場での判断は人によってばらつきます。そのばらつきを小さくするのがルールの役割です。

記事答えている問い時点
カメラマンを審査する4つの基準何を基準に撮影者を審査しているか登録の前。総論
なぜ「人柄」を機材や実績より重く見るのかなぜ人柄を最初の関門に置くのか登録の前。理由
私がカメラマンを断る理由どういうケースを見送っているか登録の前。判断の型
機材リストの何を見ているのか機材の備えをどこまで確認しているか登録の前と案件の前。機材だけの深掘り
TPOをわきまえるとは何か当日、発注企業は撮影者のどこを目で確かめればよいか撮影当日。12の場面の具体行動
この記事登録した撮影者に何を守ってもらい、それが発注企業に何を保証するか登録の後。案件ごとの運用のルール

機材の備えは機材リストの何を見ているのか|バックアップ体制という発想、当日の振る舞いを発注企業の目で確かめる方法はTPOをわきまえるとは何か|撮影現場のビジネスマナー基準で詳しく書いています。この記事では、その2本と重なる部分は要点だけに留め、ルールとして約束している範囲と、その理由に絞ります。

企業撮影のカメラマンに「ルール」が要る理由

企業撮影のカメラマンにルールが要るのは、撮影者が発注企業の情報と現場を、数時間から1日にわたって預かる立場にあるからです。撮影者は執務フロアや役員室に入り、社外秘の画面や書類が見える位置に立ち、社内を写したデータそのものを持ち帰ります。一般的な来訪者よりも、預かるものがずっと多い仕事です。

審査基準、マナー、ルールは似た言葉ですが、役割が違います。審査基準は「この人に任せてよいか」を登録の前に判断するためのもの。マナーは当日の現場で目に見える振る舞い。ルールは、登録した撮影者と運営会社の間で、案件ごとに守ると約束している運用の決まりです。発注企業から見れば、ルールは「確かめなくても守られていることになっている範囲」だと考えてください。

言葉何のためのものかいつ効くか発注企業から見えるか
審査基準任せてよい撮影者かを判断する登録の前見えない。運営会社の側で判断する
マナー現場に合った振る舞いをする撮影当日見える。担当者が目で確かめられる
ルール情報・データ・連絡・代替の扱いをそろえる登録の後、案件の前後を通して半分は見えない。撮影の前後で守られていることが多い

表の最後の列が、この記事で10のルールを公開する理由です。ルールの多くは、撮影の前後、発注企業の目の届かないところで守られています。見えないところで守られていることを、見える形で書いておかないと、発注企業は判断の材料を持てません。

登録カメラマンに求める10のルール一覧

登録カメラマンに求める10のルールは、契約と情報に関わる4つ、現場での振る舞いに関わる4つ、納品と報告に関わる2つに分かれます。先に全体を一覧にし、そのあと1つずつ、なぜそのルールを置いているのか、崩れると発注企業に何が起きるのかを書きます。

ルール撮影者がすること発注企業に保証すること
1. 窓口を一本化し、直接取引をしない発注企業との条件や追加の相談は、運営会社を通す撮影者と個別に交渉しなくてよい。品質の管理先が一か所に残る
2. 撮影で見聞きしたことを外に出さない現場で見た情報、社名、撮影内容を、ほかの場で話さない社内の情報が、撮影者を経由してよそに出ない
3. 実績掲載とSNS公開は、発注企業の許可が先撮った写真や現場の様子を、許可なく公開しない公開の判断が発注企業に残る。未発表の内容が先に出ない
4. データは二重に記録し、取り決めどおりに保管・削除する撮影中は2か所に記録し、納品後は決めた期間と方法で扱う撮ったものが消えない。社内を写したデータが必要以上に残らない
5. 予備の機材を「現場に」持ち込む本体・レンズ・電源・記録メディアの予備を当日持参する機材の不具合で、撮り直せない場面が消えない
6. 来られなくなる可能性は、分かった時点で知らせる体調や移動の不安を早めに伝え、差し替えに協力する撮影そのものが消えない。代わりの撮影者に情報が引き継がれる
7. 現場の決まりに合わせる服装、入館の手順、写してはいけないものを事前に確認し、従う社内で「あの人は浮いていた」と言われない
8. 被写体には依頼の形で、誰にでも同じ態度で接する敬語と肩書きで、指示ではなく依頼の形で声をかける社員や役員から、担当者に苦情が上がらない
9. 仕上がりを基準にそろえ、納期を守る定めたレタッチ基準で仕上げ、取り決めた納期で納める撮影者が変わっても、写真の見え方がそろう
10. 変更とトラブルは、事実・影響・代替案をそろえて早く伝える起きたことを隠さず、判断に要る情報を1回で渡す担当者が社内に説明できる。判断が遅れない

この10項目のうち、写真の出来に直接関わるのは5と9くらいです。残りの8項目は、写真の外側の話です。けれど、発注企業が撮影のあとで困るのは、たいていこの外側のほうです。撮影でつまずいた企業の実例は撮影発注のトラブル事例集|納期・データ・著作権にまとめましたが、そこに並ぶのも、腕より約束の問題がほとんどです。

10のルールが効く時点|撮影当日より、その前後のほうが多い

10のルールを時点で並べ直すと、撮影当日だけで完結するものは半分もありません。登録の前後、案件の前、撤収の後、納品の後。発注企業の担当者が立ち会わない時間に効くルールのほうが多いことが分かります。

時点主に効くルール発注企業から見えるか
登録のとき1(直接取引をしない)、2(守秘)、6(代替への協力)を書面で約束する見えない
案件の前5(予備機材)、7(現場の決まりの確認)、10(事前に分かった変更の報告)一部見える。撮影者からの質問に出る
撮影当日4(二重記録)、7(服装・入館・写り込み)、8(被写体への接し方)、10(当日のトラブル報告と終了報告)見える。担当者が目で確かめられる
撤収の後2(ほかの場で話さない)、3(無断で公開しない)、4(原本と複製を分けて持ち帰る)見えない
納品の後3(公開の許可)、4(保管と削除)、9(レタッチ基準と納期)納期と仕上がりだけ見える

見えない時間に効くルールほど、撮影者ごとの心がけに任せると差が出ます。撤収したあとの雑談、帰りの移動中のデータの持ち方、納品から数か月たったあとの削除。どれも発注企業の担当者が確かめに行ける場所ではありません。だから、見えるところは当日に担当者の目で確かめていただき、見えないところは運営会社との約束で支える、という分担にしています。

あえてルールにしていないこと

10のルールには、入れていないものもあります。一律の服装規定、到着時刻を「何分前」と決める規定、撮影中の会話の禁止などです。どれも決めてしまえば分かりやすいのですが、現場によって正解が逆になります。式典で正しい服装が工場では危なく、役員撮影で正しい距離感が社員撮影では硬すぎます。一律に決めると、決まりに合わない現場で撮影者が判断をやめてしまいます。

そのため、現場によって答えが変わるものは、ルールでは「現場の決まりに合わせる」「分からなければ確認する」という形に留め、中身は案件ごとに渡すことにしています。ルールの数を10に絞っているのは、どの現場でも同じ答えになるものだけを残しているからです。撮る側にいたころの私は、細かい決まりが多い現場ほど、決まりの外で起きたことへの反応が遅れると感じていました。決まりの数より、決まりの外で迷ったときに誰に聞くかがはっきりしているほうが、現場は崩れにくくなります。

契約と情報に関するルール|直接取引・守秘・公開・データ

契約と情報に関する4つのルールは、発注企業の情報とデータが、撮影者のところで止まるようにするためのものです。この4つは撮影の前後で守られることが多く、発注企業の担当者からは直接見えません。だからこそ、書面と運用の両方で支えています。

登録カメラマンとは、業務委託契約と秘密保持契約を結んでいます。標準の雛形には、著作権の譲渡、クライアントとの直接取引を行わないこと、撮影者本人が来られなくなったときの代替体制への協力が含まれています。登録の前に、これらを読み合わせて説明し、内容を確認せずに「問題ありません」と即答された場合は、あらためて読み合わせをしています。書面の中身そのものは、専門家のレビューを前提にした雛形であり、個別の案件で法的にどう判断されるかをこの記事で断定するものではありません。

ルール1|窓口を一本化し、発注企業と直接取引をしない

1つ目のルールは、発注企業との条件のやり取りや追加の相談を、撮影者が直接受けずに運営会社を通すことです。撮影の現場で「次回は直接お願いできませんか」と声をかけられることはあります。その場合も、撮影者は個別に受けず、運営会社に話をつないでもらうようお願いしています。

これは手配会社の都合に見えるかもしれませんが、発注企業にとっての意味は別のところにあります。窓口が一本であれば、担当者は撮影者と個別に交渉したり、条件の食い違いを調整したりする必要がありません。そして品質の管理先が一か所に残ります。撮影者と直接つながった案件で問題が起きると、代わりの撮影者を出す、仕上がりの基準をそろえる、といった支えが効かなくなります。

当日の追加作業も同じです。撮影範囲を広げたい、別の部署も撮ってほしいという相談は、撮影者がその場で引き受けて金額を約束するのではなく、運営会社に確認してもらいます。見積りの段階で総額を明示し、撮影後に「別途」の費用が出ない運用を続けるには、この順番が欠かせません。手配会社を通すことの費用構造についてはエージェント経由の発注は「中抜き」なのか、正面から答えるで書きました。

ルール2|撮影で見聞きしたことを、ほかの場で話さない

2つ目のルールは、撮影の現場で見聞きした情報を、ほかの場で話さないことです。対象は、社内の画面や書類に書かれていた内容だけではありません。どの会社の撮影に入ったか、何の撮影だったか、誰を撮ったか。撮影者にとっては実績でも、発注企業にとっては社外に出したくない情報であることがあります。

審査の場で、過去の実績を伺うと、社名と撮影内容を具体的に話してくださる方がいます。審査する側としては分かりやすいのですが、同時に「この方は次の場で、当社の案件も同じように話す」ということでもあります。登録している撮影者には、実績を話すときに「業種と規模まで」で止める線引きをお願いしています。ほかの会社の現場の話を、撮影中の雑談で持ち出さないことも、このルールに含めています。

撮影者は複数の企業の現場を回る仕事です。ほかの会社の話をする撮影者を見た社員は、「この会社の話も、よそでされるのだろう」と受け取ります。守秘は書面で約束するものですが、守られているかどうかは、こうした雑談の一言に出ます。秘密保持の契約面は反社チェック・秘密保持、撮影外注のコンプライアンス実務に整理しています。

ルール3|実績掲載とSNS公開は、発注企業の許可を得てから

3つ目のルールは、撮影した写真や現場の様子を、発注企業の許可なく実績やSNSとして公開しないことです。撮影者にとって、良い写真を実績として見せたいのは自然なことです。けれど、善意の実績紹介であっても、公開前の新製品や未発表の人事、社内の画面が写っていれば、それは情報の持ち出しになります。

基準は「載せてから確認する」ではなく「確認してから載せる」です。この順番が逆になる撮影者は、企業の案件では受けられないと判断しています。許可するかどうかは発注企業が決めることで、許可されなかった写真は、撮影者の実績として外に出しません。撮影者の私用の端末で現場を撮らないことも、同じ考え方から来ています。

写真の権利そのものの扱いは、これとは別の話です。標準の業務委託契約には著作権の譲渡を含めており、納品した写真の商用利用権は料金に含まれます。採用サイト、社内報、SNS、印刷物など、企業の業務用途であれば追加料金なしで使えます。権利の考え方は撮影データの著作権は誰のものか|企業が誤解している3点と写真の「買い取り」「二次利用可」の意味を、企業側の言葉で説明するにまとめました。個別の案件で権利関係の判断が必要な場合は、社内の法務部門や顧問弁護士に確認してください。

ルール4|データは二重に記録し、取り決めどおりに保管・削除する

4つ目のルールは、撮影データを撮影中は2か所に記録し、納品後は発注企業と取り決めた期間と方法で保管・削除することです。撮影データは、撮影者の手元にある間ずっと、発注企業の情報が社外に残っている状態です。消えては困るし、残りすぎても困る。その両方を1つのルールで扱っています。

撮影中は、2つの記録メディアへの同時記録、それができない機材なら区切りごとにカードを分けて、1か所にしか残らない時間を短くします。撤収後は原本と複製を別々に持ち帰り、複製を確かめてからカードを空にします。前の案件のデータが残ったカードを、次の現場に持ち込まないことも含めています。

納品後の保管期間と削除の時期は、企業によって希望が逆になります。再納品に備えて保管してほしい企業もあれば、機密の都合で早く削除してほしい企業もあります。どちらが正しいということはないので、発注の時点で取り決め、そのとおりに扱うことをルールにしています。クラウドへの保存も、撮影者の判断で預け先を決めず、事前に確認する順番にしています。段階ごとの扱いは、機材の記事で表にしました。

現場での振る舞いに関するルール|機材・代替・現場の決まり・被写体

現場での振る舞いに関する4つのルールは、撮影当日を止めないこと、そして担当者が社内で説明に回らずに済むことのためにあります。このうち7と8は、当日に発注企業の担当者が目で確かめられる部分です。5と6は、何も起きなければ目に触れず、何かが起きたときに初めて効きます。

ルール5|予備の機材を「持っている」ではなく「現場に持ち込む」

5つ目のルールは、カメラ本体、レンズ、電源、記録メディア、照明の予備を、撮影当日の現場に持ち込むことです。「予備は自宅にあります」では、式典の途中で本体が止まったときに間に合いません。企業撮影には、表彰の瞬間や来賓の挨拶のように、同じ場面が二度と起きない撮影が多くあります。

登録の前には、当日持参する機材を予備まで含めて一覧で出していただき、1つ落ちたときに撮影を続けられる構成になっているかを確認しています。案件の前には、会場の情報と進行の予定をもとに、どの場面でどの機材が要るか、どこに予備を置くかを撮影者とすり合わせます。確認している7つの項目は、機材リストの何を見ているのかで詳しく書いています。

ルール6|来られなくなる可能性は、分かった時点で知らせる

6つ目のルールは、体調や移動の不安など、撮影当日に来られなくなる可能性が見えた時点で運営会社に知らせ、差し替えに協力することです。急病や事故は誰にでも起こります。問題になるのは、起きたことそのものより、知らせるのが遅れて差し替えの時間がなくなることです。

「たぶん大丈夫」の段階で知らせることを、撮影者に遠慮させない運用にしています。前夜に熱が出た、交通機関が止まりそうだ、という段階で連絡があれば、代わりの撮影者を探す時間が取れます。差し替えの際は、事前の確認事項と現場の決まりを新しい撮影者に引き継ぎます。撮影者が代替体制に協力することは、標準の業務委託契約の条項にも含めています。

個人の撮影者へ直接発注している場合、この時点で撮影が消えることが多くなります。実際に差し替えが必要になった日のことは【事例】急病のカメラマンを2時間で差し替えた日のことに、当日に撮影者が現れなかった場合の動き方は撮影当日にカメラマンが来なかったら、あなたはどうしますかに書きました。

ルール7|服装・入館・写してはいけないものは、現場の決まりに合わせる

7つ目のルールは、その日の現場の決まりを事前に確認し、服装、入館の手順、機材の搬入経路、写してはいけないものについて、発注企業の決まりに従うことです。式典ではダークスーツが合っても、工場では工場側の指定に沿った服装が要り、私服勤務の職場に硬いスーツで入ると被写体が構えます。一律の服装規定ではなく、現場に合わせることをルールにしています。

日本プロカメラマン手配では、打ち合わせで伺ったドレスコード、入館の手順、写してはいけないもの、役員の呼び方といった現場の決まりを、当日までに撮影者へ渡しています。撮影者の側には、渡された決まりに従うこと、分からないことは推測で動かず確認することをお願いしています。撮る前に画面や書類の写り込みを確かめ、気になるものがあれば担当者に声をかける、という順番もここに含めています。

このルールは、撮影者だけでは守れません。会社ごとの決まりは外から推測できないので、発注企業から情報が渡っていることが前提です。事前に伝えておきたい項目と、当日の12の場面で担当者が確かめられる行動は、TPOをわきまえるとは何かに表でまとめています。

ルール8|被写体には依頼の形で、誰にでも同じ態度で接する

8つ目のルールは、被写体に敬語と肩書きで、指示ではなく依頼の形で声をかけ、相手の立場によって態度を変えないことです。企業撮影の被写体は、撮られたくてそこに立っているわけではありません。業務の手を止めて並んでくれている人です。「顎を引いて」ではなく「少しだけ顎を引いていただけますか」。言葉の違いは小さくても、被写体が協力していると感じるか、使われていると感じるかが表情に出ます。

このルールで特に重く見ているのは、後半の「誰にでも同じ態度で」のほうです。役員の前では丁寧で、一般の社員や現場の作業者には言葉が雑になる撮影者がいます。発注した担当者には同じ顔しか見せないので気づきにくいのですが、社員の側は気づいています。被写体の体には触れず、直してほしいところは言葉で伝えるか担当者にお願いする、容姿や役職をいじる冗談を言わない、ということもこのルールに含めています。

人柄を審査の最上位に置いている理由は、この「その日の実際の値」が人によって大きく違うからです。仕組みの説明はなぜ「人柄」を機材や実績より重く見るのかに書きました。審査で人柄を見ていても、案件ごとに約束として言葉にしておくことで、現場での判断がそろいます。

撮影の見積りは、内訳つきで無料です

用途・日程・場所をお知らせいただければ、拘束時間と人員の内訳が分かる見積りをお送りします。料金はハーフ(4時間枠)66,000円・フル(8時間枠)132,000円(税込)です。

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納品と報告に関するルール|仕上がりの基準と、トラブル時の伝え方

納品と報告に関する2つのルールは、撮影が終わったあとの品質と、何かが起きたときの判断の速さをそろえるためのものです。撮影当日がうまくいっても、仕上がりがばらつけば写真は使いにくくなり、トラブルの報告が遅れれば担当者は社内で説明に困ります。

ルール9|仕上がりはレタッチ基準にそろえ、取り決めた納期で納める

9つ目のルールは、定めたレタッチ基準に沿って仕上げ、取り決めた納期で納めることです。レタッチは撮影者が担当しますが、肌の質感、色温度、トリミングなどの基準を定めて運用しています。撮影者ごとの好みで仕上げると、同じ会社の社員写真なのに、撮影日によって肌の色や明るさが違う、ということが起きます。

企業の撮影は、1回で終わらないものが多くあります。採用サイトの社員写真は毎年追加が出ますし、役員の交代があれば撮り直しが要ります。そのたびに撮影者が変わっても、仕上がりの見え方がそろっていれば、サイトに並べたときに違和感が出ません。基準を持っていることは、撮影者が交代したときの保険でもあります。

納期の目安は、少量(数十カットまで)なら即日から翌営業日、大量のポートレート(数十名以上)なら5〜7営業日です。急ぎの場合は、特急納品をオプションとして承ります。取り決めた納期に間に合わない可能性が見えたときは、ルール10に沿って、分かった時点で知らせることになっています。大人数の撮影をどう組むかは社員写真を全員分そろえる|100人規模の撮影を回す時間割と日程の組み方で扱いました。

ルール10|変更とトラブルは、事実・影響・代替案をそろえて早く伝える

10個目のルールは、撮影の前後で変更やトラブルが起きたとき、起きた事実、影響する範囲、代わりの案の3つをそろえて、早く運営会社に伝えることです。「機材の調子が悪いです」だけでは、受け取った側は何を判断すればよいか分かりません。「本体が1台止まりました。予備に切り替えたので撮影は続けられます。切り替えの間の数分、表彰の場面の撮影が1カット分遅れました」と伝われば、担当者はその場で社内に説明できます。

このルールで避けたいのは、起きたことを小さく見せる伝え方と、原因を相手の側に寄せる伝え方です。報告が遅れたり、責任の所在がずれた言い方になったりすると、発注企業の担当者は事実を確かめるところから始めなければなりません。撮影の終わりには、撮れたもの、予定していたのに撮れなかったもの、追加で撮ったもの、現場で気づいたことを、担当者に短く伝えることもお願いしています。

審査の段階でも、過去にうまくいかなかった撮影の話を伺い、原因の説明に自分の側にある要素が入っているかを見ています。登録の後は、それを案件ごとの約束に置き換えています。撮り直しにつながった実例の原因は撮り直しになった企業の実例と、その原因分析に整理しましたが、報告の遅れが原因を大きくしている例は少なくありません。

10のルールを守ってもらうための仕組み

ルールは、書いて渡すだけでは守られません。守ってもらうための仕組みとして、書面での約束、最初の案件での確認、案件ごとの事前共有、撮影後の振り返り、継続の範囲の見直しという5つの段階を置いています。どれも、ルールを罰則で縛るためではなく、判断に迷う場面を減らすためのものです。

STEP

登録の前に、契約と条件を読み合わせる

業務委託契約と秘密保持契約の内容、著作権の扱い、直接取引を行わないこと、代替体制への協力を、登録の前に説明します。質問が出るのは良い兆候です。内容を確認せずに即答された場合は、あらためて読み合わせをします。ここで条件が合わないと分かれば、その時点でお互いに無理をしない判断をします。

STEP

最初の案件は、難易度を調整して一緒に組む

登録が決まっても、いきなり大型の式典をお願いすることはありません。難易度の低い案件から入っていただき、必要に応じて運営会社が同行します。被写体への声のかけ方、時間が押したときの判断、撤収の丁寧さなど、書面と面談では分からないルールの守り方を、実務で確かめる段階です。

STEP

案件ごとに、その現場の決まりを渡す

10のルールは共通ですが、守り方は現場によって変わります。発注企業との打ち合わせで伺った服装、入館の手順、写してはいけないもの、データの保管期間、実績掲載の可否を、案件ごとに撮影者へ渡します。ポートレートの撮影では撮影スロット(時間割)を運営会社が作成し、当日の進行も事前に組みます。

STEP

撮影の後に、起きたことを振り返る

撮影当日の報告と、発注企業からいただいた感想をもとに、ルールに沿って進んだか、判断に迷った場面がなかったかを撮影者と確かめます。迷った場面があれば、それは次の案件で事前に渡す情報を増やす材料になります。撮影者だけの問題にせず、事前の共有で防げたかどうかも見ます。

STEP

継続してお願いする範囲を見直す

人物が得意な方、イベントの記録が速い方、商品撮影の精度が高い方。得意な領域に合わせて、お願いする案件の範囲を決めます。ルールとの折り合いがつかなくなった場合は、お願いする案件を減らします。登録は一度きりの合否ではなく、案件ごとの適合の積み重ねだと考えています。

登録している撮影者は、全国で30名程度に絞っています。東京・大阪が最も多く、金沢・福岡にも在籍しています。この規模に留めているのは、ここに書いた5つの段階を、撮影者1人ひとりについて省略せずに回すためでもあります。登録を増やせば当日の差し替え先は増えますが、ルールの守られ方が読めなくなります。

ルールが崩れたとき、発注企業への影響は誰が受け止めるのか

ルールが崩れたときの影響は、発注企業の担当者ではなく、運営会社が窓口として受け止めます。クライアントとの窓口と品質管理は運営会社が行う形にしているので、何かが起きたとき、担当者が撮影者と直接やり取りして事実を確かめる必要はありません。事実の確認、必要な対応、発注企業への説明は、運営会社の側で行います。

ただし、ルールがあるから問題が起きない、とは言えません。人が現場に入る仕事なので、判断を誤る場面はあります。ルールの役割は、誤りを起こさないことより、起きたときに早く見つけ、早く伝わり、同じことを繰り返さないことにあります。そのためにルール10の報告と、撮影後の振り返りを置いています。

この10のルールを、自社でカメラマンに発注するときに使う方法

この10のルールは、手配会社を通さずに個人の撮影者へ直接発注する場合にも、そのまま取り決めの項目として使えます。直接発注では、ルールを用意する役も、守られているかを確かめる役も、発注企業の担当者が担うことになります。どこで取り決めるかを先に決めておくと、抜けが減ります。

ルール直接発注で取り決める場所撮影者に確認しておきたいこと
1. 窓口と追加作業発注書・契約書当日の追加作業の扱いと、金額が変わる条件
2. 守秘秘密保持の書面撮影日より前に書面を交わせるか
3. 実績掲載とSNS発注書・契約書公開してよい範囲と、確認の順番
4. データの保管と削除発注書・契約書記録の方法、保管の期間、削除の時期、クラウドの使用可否
5. 予備機材見積りの段階のやり取り当日持参する機材の一覧を、予備まで含めて出せるか
6. 来られなくなった場合見積りの段階のやり取り本人が来られなくなったときに、代わりを出せるか
7. 現場の決まり撮影前の打ち合わせ服装、入館の手順、写してはいけないものを伝えたか
8. 被写体への接し方撮影前の打ち合わせ役員や社員への声のかけ方、被写体に触れないこと
9. 仕上がりと納期発注書・契約書レタッチの範囲と基準、納品の形式と納期
10. 変更とトラブルの報告撮影前の打ち合わせ何かあったときに、誰に、どの手段で知らせるか

このうち1から4と9は、書面に書いておく項目です。撮影の発注書や契約書に何を書くかは撮影の発注書・契約書に書く項目とテンプレート|明示義務8項目に整理しています。個人の撮影者と直接契約するときに、社内の法務から止められやすい点は個人カメラマンとの直接契約が法務からNGを出される理由|審査6項目で読み解くで扱いました。契約の文言が法的に十分かどうかは、社内の法務部門や顧問弁護士に確認してください。

6の「来られなくなったときの代わり」だけは、直接発注では用意しにくい備えです。個人の撮影者に代わりを探してもらう約束はできても、その代わりの人が同じルールを守るかどうかまでは確かめられません。手配の形をとる場合と直接発注する場合の違いは、撮影会社と個人カメラマンとエージェント、どう違うのかに整理しています。

発注前に確認しておきたいチェックリスト

上の表を、発注前に確認する項目の形に並べ直します。全部が埋まってから発注する必要はありませんが、埋まらない欄がある場合は、その欄を聞いてから決めても遅くありません。

  • 条件の変更や当日の追加作業を、誰と相談して決めるかが決まっている
  • 秘密保持の書面を、撮影日より前に交わす段取りになっている
  • 撮影した写真や現場の様子を、実績やSNSに公開してよいかを取り決めた
  • 撮影データの記録の方法、保管の期間、削除の時期を確認した
  • 当日持参する機材の一覧を、予備まで含めて出してもらった
  • 撮影者本人が来られなくなったときの代わりについて、答えをもらった
  • 服装、入館の手順、写してはいけないものを事前に伝えた
  • 役員や社員への接し方について、気をつけてほしいことを伝えた
  • レタッチの範囲と、納品の形式・納期を書面で確認した
  • 何かあったときに、誰に、どの手段で知らせるかを決めた

外注全般の確認項目は撮影を外注する前に確認すべきチェックリスト20項目にまとめています。上の10項目は、そのうち撮影者と約束しておく部分を、ルールの形に合わせて並べたものです。

このチェックリストを自社で埋める時間がない場合は、その状態のままご相談いただいて構いません。撮影の用途、被写体の人数と立場、撮影場所、希望日程の幅をお知らせいただければ、その案件で撮影者と取り決めておくべきこと(データの保管期間や実績掲載の可否など)を確認したうえで、必要な撮影枠と総額をお返しします。取り決めの中身がまだ決まっていない段階でも、こちらから質問して整理します。

ルールでは保証できないこと|発注企業にしか決められないこと

10のルールで保証できるのは、撮影者の側で守れる範囲までです。発注企業にしか決められないこと、つまり社内の決まりそのものは、ルールでは補えません。写してはいけないもの、データの保管期間、実績掲載の可否、役員の呼び方。これらは発注企業が決めて渡すもので、撮影者がどれだけルールに忠実でも、知らされていない決まりには合わせられません。

撮る側にいたころを振り返ると、現場で判断に迷ったのは、たいてい事前に聞いておくべきことを聞きそびれていた日でした。ルールは撮影者の判断をそろえるものですが、判断の材料は発注企業から届きます。日本プロカメラマン手配では、打ち合わせでこちらから質問して、その材料を集めるところまでを担当しています。全部が決まっていなくても、分かっている範囲で教えていただければ、足りない部分はこちらから伺います。

もう1つ、ルールは撮影者を選ぶ基準の代わりにはなりません。ルールを守れる人でも、依頼した用途を撮れなければ意味がありません。ポートフォリオと現場の力のずれについてはポートフォリオが良いのに現場で失敗するカメラマンの特徴で書きました。審査で腕と人柄を見て、登録の後はルールで運用をそろえる。この2つが揃って、初めて発注企業が確かめなくて済む範囲が広がります。

この記事で書いていないこと

この記事では、ルールの違反件数や、ルールを設けたことで何が何件減ったかといった数値は示していません。ルールの効果だけを取り出して測ることができないためです。また、ここに挙げた10のルールは、日本プロカメラマン手配が登録カメラマンにお願いしている運用上の決まりを、発注企業に向けて一般化して書いたものです。契約書や秘密保持の書面が個別の案件で法的に十分かどうか、著作権や肖像権の扱いをどう判断するかは、この記事の範囲に含めていません。社内の法務部門や顧問弁護士に確認してください。

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撮影者との取り決めや当日の確認まで、自社で抱える時間がない場合は、その工程ごとお任せいただけます。撮影者の選定、事前の取り決め、当日のディレクション、納品までの窓口は運営会社が担当します。基本料金は時間単位で、ハーフ(半日・4時間枠)が60,000円+税=66,000円、フル(1日・8時間枠)が120,000円+税=132,000円です。拘束時間はカメラマンの現地到着から撤収完了までで計測し、標準機材と商用利用権は基本料金に含みます。交通費などの諸経費は実費のまま見積りに明記し、撮影後に「別途」の費用が出ることはありません。

よくある質問

企業撮影のカメラマンには、どんなルールを守ってもらうべきですか

写真の腕とは別に、情報とデータと連絡の扱いについての約束を守ってもらうのが基本です。日本プロカメラマン手配では、窓口を一本化して直接取引をしない、撮影で見聞きしたことを外に出さない、実績掲載とSNS公開は許可が先、データは二重に記録して取り決めどおりに保管・削除する、予備機材を現場に持ち込む、来られなくなる可能性は早く知らせる、現場の決まりに合わせる、被写体に誰にでも同じ態度で接する、仕上がりを基準にそろえて納期を守る、変更とトラブルは事実・影響・代替案をそろえて伝える、の10項目を登録カメラマンにお願いしています。

手配会社がカメラマンと発注企業の直接取引を認めないのはなぜですか

窓口と品質の管理先を一か所に残すためです。窓口が一本であれば、発注企業の担当者は撮影者と個別に条件を交渉する必要がありません。直接つながった案件で問題が起きると、代わりの撮影者を出す、仕上がりの基準をそろえる、といった支えが効かなくなります。当日の追加作業も撮影者がその場で金額を約束せず運営会社を通すことで、撮影後に「別途」の費用が出ない運用を保っています。

撮影データは、撮影後いつまでカメラマンの手元に残りますか

発注の時点で取り決めた期間と方法に従います。再納品に備えて保管してほしい企業もあれば、機密の都合で早く削除してほしい企業もあり、答えが企業によって逆になるためです。撮影中は2か所に記録し、撤収後は原本と複製を別々に持ち帰り、納品後は取り決めどおりに保管・削除することを、登録カメラマンのルールにしています。クラウドへの保存も、事前に発注企業へ確認する順番です。

個人のカメラマンに直接依頼する場合も、同じルールを守ってもらえますか

取り決めておけば、多くは守ってもらえます。守秘、実績掲載の可否、データの保管と削除、レタッチの範囲と納期は発注書や契約書に書き、予備機材や現場の決まりは打ち合わせで確認します。ただし、撮影者本人が来られなくなったときの代わりは、個人への直接発注では用意しにくい備えです。契約の文言が法的に十分かどうかは、社内の法務部門や顧問弁護士に確認してください。

登録カメラマンがルールを守らなかった場合はどうなりますか

発注企業への影響は、運営会社が窓口として受け止めます。事実の確認、必要な対応、発注企業への説明は運営会社の側で行い、担当者が撮影者と直接やり取りする必要はありません。撮影者とは撮影後に起きたことを振り返り、事前の共有で防げたかどうかも含めて確かめます。ルールとの折り合いがつかない場合は、お願いする案件の範囲を減らします。

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