反社チェック・秘密保持、撮影外注のコンプライアンス実務

撮影の外注は、人が社内に入り、社内の様子をデータとして持ち出す外注です。だから購買部門が他の外注先に使っている審査——反社会的勢力の確認、秘密保持、情報の取り扱い——がそのまま当てはまります。決めるのは撮影日ではなく、発注前です。

目次

撮影の外注は、人が社内に入りデータを持ち出す外注

COMPLIANCE CHECK

カメラマンの機材チェックやポートフォリオ確認をしている審査風景を連想させるカット

「カメラマンを1日呼ぶ」という発注は、社内では小さな買い物として扱われがちです。ところが実際に起きることを分解すると、外部の人が執務フロアに入り、社員の顔と社内の景色をデータとして記録し、そのデータを持ち帰り、手元で加工してから返してくる、という流れになります。人の立入りと情報の持ち出しが同時に起きる外注は、金額の大小と関係なく購買審査の対象になります。

だから、購買や法務から「反社チェックはしているのか」「NDAは結ぶのか」「情報セキュリティ規程との整合は取れているのか」と聞かれるのは、意地悪ではなく手順どおりです。止まっているのは撮影の中身ではなく、外注先の審査という一般的な手続きのほうです。ここを先に埋めておけば、撮影の相談はそのまま前に進みます。

この記事では、そのうち反社会的勢力の確認と秘密保持の2つに絞って扱います。カメラマンの技術面の見極めはカメラマンを審査する4つの基準|人柄・機材・実績・ポートフォリオ、発注前の確認事項の全体像は撮影を外注する前に確認すべきチェックリスト20項目にまとめてあります。

なお、以下は公表されている政府の指針と法令の条文をもとにした一般的な整理です。自社の規程に照らしてどこまでの確認が求められるか、契約書にどう書くかは、業種・取引規模・社内規程によって変わります。最終的な当てはめは、法務部門または顧問弁護士にご確認ください。

政府指針が企業に求めていること|基本原則5つと「通常必要と思われる注意」

政府の指針が企業に求めているのは、反社会的勢力と関係を持たないための取り組みを、担当者個人ではなく組織として行うことです。撮影の外注も取引のひとつなので、この枠組みの中に入ります。

出典は「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(平成19年6月19日 犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)です。法律ではなく政府の申合せですが、多くの企業の反社チェック規程はこの指針を土台に作られています。購買部門から求められる書類の根拠をたどると、たいていここに行き着きます。

指針はまず、反社会的勢力をどう捉えるかを示しています。脚注には「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である『反社会的勢力』をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である」と書かれています。

属性と行為の両方を見る、というのがここでの要点です。相手が何者かというラベルだけでなく、取引の中で不当な要求をしてこないかという振る舞いも見る。撮影の外注に引き寄せると、契約前の一度きりの確認で終わらせず、当日の言動や追加請求の出し方まで含めて見る、という読み方になります。

指針が示す基本原則は5つです。それぞれを撮影の外注に置き換えると、次のようになります。

指針が示す基本原則撮影の外注に引き寄せた読み方
組織としての対応発注担当者個人の人脈や印象で決めない。確認の手順と結果を、社内の様式に乗せて残す
外部専門機関との連携判断に迷う情報が出てきたときの相談先(警察、暴力追放運動推進センター、弁護士)を、発注前に確認しておく
取引を含めた一切の関係遮断撮影が単発でも継続でも、判明したときに関係を解消できる状態を契約で作っておく
有事における民事と刑事の法的対応不当な要求を受けたときに、発注担当者が個人で処理せず社内の窓口へ上げる経路を決めておく
裏取引や資金提供の禁止請求書に載らない現金精算など、表に出せない支払いを撮影の諸経費に混ぜない

指針は平素からの対応として、経営トップが基本方針を社内外に宣言すること、反社会的勢力に対応する部署を整備して情報を一元的に管理・蓄積すること、契約書や取引約款に暴力団排除条項を導入すること、取引先の審査のために反社会的勢力の情報を集約したデータベースを構築すること、外部専門機関と平素から緊密な連携関係を築くことを挙げています。

そのうえで、取引の相手方について求められているのは「常に、通常必要と思われる注意を払う」ことです。ここは実務の落としどころとして大事な一文です。指針は、相手が反社会的勢力でないことを企業に証明させているのではなく、通常必要と思われる注意を払うことを求めています。判明したり疑いが生じたりした時点で速やかに関係を解消する、という後段とセットで読むと、求められているのは完璧な調査ではなく、注意を払ったという事実と、その記録だと分かります。

撮影の発注で言えば、「個人カメラマンだから調べようがない」で止めるのではなく、相手方を特定した、契約書に暴力団排除条項を入れた、表明保証を取った、公知情報を確認した、という手順を踏み、それを社内の様式に残す。ここまでできていれば、購買部門への回答としては形になります。

暴力団排除条項に入れる2つの要素

指針は、暴力団排除条項として契約書・契約約款に盛り込んでおくことが有効な内容を2つ挙げています。ひとつは、反社会的勢力が取引の相手方となることを拒絶する旨。もうひとつは、取引開始後に相手方が反社会的勢力であると判明した場合や不当要求を行った場合に、契約を解除して取引から排除できる旨です。

入口(拒絶)と出口(解除)の2つがそろって、はじめて条項として働きます。入口だけを書いた条項では、契約後に事情が判明したときに、取引を続けるか止めるかの根拠が契約書の中にありません。撮影は着手金や前金が動くことがあるので、解除したときに支払済みの費用や撮影済みデータをどう扱うかまで書いておくと、実際に使える条項になります。

単発の撮影では、契約書ではなく発注書と注文請書のやりとりで済ませることもあります。その場合は、取引約款や発注書の裏面約款のほうに暴力団排除条項が入っているかを確認してください。条項の文言そのものは、自社の標準ひな形を法務部門に確認して使うのが早道です。

都道府県の暴力団排除条例

都道府県の暴力団排除条例は、2011年10月1日に東京都と沖縄県で施行されたことにより、全都道府県で出そろいました。事業者に対して、契約の際に相手方が暴力団関係者でないことを確認するなどの努力義務を課すものが多くなっています。

撮影の外注は、複数の都道府県にまたがることがあります。本社が東京、撮影が大阪の支社、カメラマンの居所がさらに別の県、という組み合わせは珍しくありません。どの条例がどう関係するかは個別の事情によるため、自社の規程がどの条例を前提に作られているかを法務部門に確認しておくと、案件ごとに迷わずに済みます。

個人カメラマンの反社チェックが難しい理由と、実務でできる確認の範囲

個人カメラマンの反社チェックが難しいのは、法人向けに設計された確認手順が、個人事業主にはそのまま当たらないからです。個人だから信用できないという話ではありません。確認に使う道具が個人向けに用意されていない、という構造の問題です。

法人が相手なら、まず登記簿があります。商号、本店所在地、設立年月日、役員の氏名が公的に確認でき、商号で検索をかければ過去の報道や公表情報にも当たれます。世の中の反社チェックの手順やサービスは、この「商号で引ける」ことを前提に組み立てられています。

個人カメラマンには、この入口がありません。個人事業主の開業届は登記のように公開されないため、商号にあたる情報を公的に確認する手段がありません。屋号を名乗っていても、屋号と本名が結び付くとは限らず、屋号だけでは同一人物かどうかも確定できません。

検索する側にも限界があります。新聞記事のデータベースで個人名を引くと、同姓同名が大量に混ざります。「該当なし」が本当に該当なしなのか、表記の揺れで引っかからなかっただけなのかを、名前だけで切り分けるのは困難です。法人の商号が持っている一意性が、個人名にはありません。

さらに、撮影は単発の取引になりがちです。継続的な仕入先のように取引情報が蓄積されないので、社内に判断材料が溜まりません。「知り合いのカメラマンだから」で通してしまう発注が生まれるのはこのためですが、紹介は審査の代わりにはなりません。この論点は「知り合いのカメラマン」に頼むリスクを冷静に整理するでも扱っています。

では何ができるのか。実務でできる確認と、それぞれの限界を並べます。限界のほうを先に社内で共有しておくと、購買部門との会話がかみ合います。

実務でできる確認分かること分からないこと・限界
本人確認書類の提示を受ける契約の相手方が誰かを特定できる。屋号と本名の対応が付く提示された情報が現在も正しいか。書類そのものの真正性を発注者側で検証する手段は限られる
契約書で表明保証を取る(自らが反社会的勢力でない旨)相手が事実と異なる表明をしていた場合に、契約上の責任を問う根拠ができる表明があること自体は、相手が反社会的勢力でないことの証明にはならない
暴力団排除条項を入れる(拒絶と解除)判明したときや不当要求を受けたときに、取引から離脱する根拠ができる事前に見つける機能はない。使えるのは判明・不当要求のあとになる
公知情報を確認する(検索エンジン・報道)公表されている問題があれば把握できる。確認した日付と方法を記録に残せる同姓同名が混ざる。公表されていない事実は出てこない
反社会的勢力の情報を集約したデータベースを照会する社内に蓄積した情報や、利用している外部サービスの収録範囲で照合できる個人名の照合精度は法人ほど高くない。収録範囲の外にあることは分からない
外部専門機関に相談する(警察・暴力追放運動推進センター・弁護士)疑いが生じたときの対応方針を専門機関と相談できる平時の一般的な照会に、常に個別の回答が得られるわけではない
法人と契約する(手配会社・撮影会社を相手方にする)登記簿のある法人1社に対して、社内の通常の購買審査をそのまま適用できる契約の相手方が法人になるだけで、現場に入る個人の取り扱いは契約条項と運用で担保する

この表から見えてくるのは、個人カメラマンに対する確認は「事前に白であることを証明する」方向では組み立てにくい、ということです。組み立てられるのは、相手方を特定し、表明を取り、判明したときに離脱できる状態を作り、その手順を記録する方向です。指針が求めている「通常必要と思われる注意」も、この方向と矛盾しません。

調査は一般的な実務の範囲にとどめてください

相手方の確認は、公表されている情報と契約上の手続きの範囲で行うものです。私生活を探る、第三者から無断で情報を集めるといった方法は、別の法的な問題を生みます。また、確認のために受け取った本人確認書類は個人情報にあたるため、保管期間と廃棄の方法を社内のルールに乗せてください。どこまでの確認が適切かは、法務部門または顧問弁護士にご確認ください。

秘密保持|不正競争防止法の営業秘密3要件から撮影を見る

秘密保持は、NDAの文面から入るより、不正競争防止法の営業秘密の定義から入るほうが早く整理できます。同法第2条第6項は「営業秘密」を、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものと定めています。

ここから、秘密管理性・有用性・非公知性という3つの要件が導かれます。3つがそろって、はじめて営業秘密として扱われるという構造です。撮影で問題になりやすいのは、このうちの秘密管理性です。

営業秘密の3要件条文上の表現撮影の現場で問われること
秘密管理性秘密として管理されている撮影者に見せてよい場所と見せない場所を区分していたか。その区分を撮影者に伝えていたか
有用性事業活動に有用な技術上又は営業上の情報写り込んだ情報が、事業活動に使える中身を含んでいたか
非公知性公然と知られていないものその情報が、撮影の時点でまだ公表されていなかったか

撮影者を現場に入れるとき、どこを撮ってよくてどこを撮らないかを区分しないまま入れてしまうと、あとから「その情報は秘密として管理していた」と言いにくくなります。撮影者に見せること自体が問題なのではなく、見せる範囲を決めていない状態が問題になる、という順番です。

逆に言えば、区分は難しい作業ではありません。撮影する部屋を決める、映してよい壁とそうでない壁を決める、机上を片づける、撮影前にモニターの電源を落とす。この程度のことを事前に決めて当日に伝えるだけで、管理していたという事実が積み上がります。手間としては、撮影スロットを組むついでに済む分量です。

不正競争防止法は、第2条第1項の第4号から第9号にかけて、営業秘密に関する不正競争の類型を置いています。窃取・詐欺・強迫その他の不正の手段による取得(第4号)や、営業秘密保有者から示された場合に不正の利益を得る目的等で使用・開示する行為(第7号)などです。撮影の場面で問題になりうるのは後者の系統ですが、どの類型に当たるかの判断は個別の事情によります。法務部門または顧問弁護士にご確認ください。

撮影現場で情報が外に出る経路と、その手当て

撮影で情報が外に出る経路は、だいたい決まっています。写真に写り込むもの、撮影データそのもの、そしてデータを扱う人の3系統です。経路ごとに、発注前に決めておく取り決めをセットで並べます。

情報が外に出る経路起きること発注前に決めておくこと
ホワイトボード・モニターの写り込み議事の走り書き、未発表の企画名、業務システムの画面が高解像度で記録される撮影する部屋とカメラの向きを事前に決める。撮影前にホワイトボードを消し、モニターの電源を落とす
書類・座席表・掲示物取引先名や社員の氏名が入った紙が背景に入る撮影範囲の机上と壁面を事前に片づける。剥がせない掲示物は画角から外す位置を決める
製品の試作品・開発中の設備発表前の形状や仕様が記録される撮影可能なエリアを図面か口頭で区分し、当日の立入り範囲として伝える
社員証・入館証・名札番号やコードが読める状態で記録される撮影時は外す運用にするか、納品前に処理する範囲を決めておく
撮影データの一時保存先メモリーカード、カメラマンのPC、クラウドストレージに複製が残る保存先と保管期間を決める。私物端末を使う場合の条件を決める
カメラマンのSNS・ポートフォリオ掲載実績として公開され、社名や社内の様子が第三者の目に触れる掲載の可否を決める。可とする場合は掲載してよい範囲と、事前確認の手順を決める
レタッチ・現像の再委託撮影データが契約していない第三者の手元に渡る再委託の可否を決める。認める場合は再委託先に同等の義務を課すことを条件にする
当日の同行者アシスタント、ヘアメイク、機材の運搬担当が現場に入る同行者の氏名と役割の届出を事前に求める。入館手続と秘密保持の及ぶ範囲を決める
納品後のデータ保管納品と検収が終わったあとも、撮影者の手元にデータが残り続ける保管期間と消去の時期、消去したことの報告方法を決める

最後の行、納品後のデータ保管は、いちばん忘れられます。納品して検収が終わると案件は社内的に閉じますが、撮影データは撮影者の手元に残ったままです。再納品やデータの差し替えに備えて一定期間持っていてもらうほうが実務では便利なので、消してほしいのか、いつまで持っていてほしいのかを、発注のときに決めておくのが現実的です。

決め方は難しくありません。「納品から◯か月は再納品に備えて保管し、その後に消去して報告する」という一文があれば足ります。ここを決めずに撮影を終えると、1年後に社内で「あの撮影のデータはまだ外に残っているのか」と聞かれたときに、答えられる人がいなくなります。

私自身、カメラマンとして企業の撮影に入っていた頃、控室として案内された部屋のホワイトボードに、まだ発表されていない企画名が書かれたまま残っていたことが何度もありました。撮る側は「これは画角に入れないでおこう」と判断できますが、判断しているのは外部の人間です。撮らない判断を撮影者に委ねている状態そのものが、管理としては弱い。手配する側に回ってから、撮影前の部屋の確認を発注時のやりとりに組み込むようにしたのは、この経験からです。

写り込みの多くは、撮影が始まってからでは直せません。始まってから片づけを始めると進行が止まり、時間枠を延長することになります。撮影にまつわる典型的なつまずきは撮影発注のトラブル事例集|納期・データ・著作権にまとめています。

NDAに撮影固有で入れておく条項

秘密保持契約のひな形は多くの会社が持っていますが、そのまま撮影に使うと撮影固有の論点が抜けます。抜けやすいのは、撮影データがどこにどれだけ保管されるか、実績として公開してよいか、再委託を認めるか、の3つです。

以下は、撮影の発注で決めておく項目です。契約書の条文そのものではなく、条文にする前に社内で決めておく中身として読んでください。

決めておく項目決めておく中身決めないまま進めると起きること
撮影データの保管場所保管に使う媒体と場所。社外クラウドの利用を認めるかどうかデータが今どこにあるのか、発注側で把握できない
保管期間と消去いつまで保管し、いつ消去するか。消去したことをどう報告するか案件が終わったあとも、期限のないままデータが残る
私物端末の使用カメラマン個人のPC・スマートフォンで取り扱う場合の条件現像や転送の経路が見えず、情報セキュリティ規程との整合を説明できない
実績としての掲載可否ポートフォリオ・自社サイトへの掲載の可否と範囲、事前確認の手順公開されてから社内で問題になり、取り下げ交渉から始まる
SNSへの投稿撮影中・撮影後の投稿の可否。社名を出さない投稿の扱い撮影を行った事実そのものが外に出る
再委託の可否レタッチ・現像・アシスタント業務の再委託を認めるかどうか契約していない第三者にデータが渡る
再委託先の義務再委託を認める場合、再委託先にも同等の秘密保持義務を課すこと義務が再委託先まで届かず、経路の途中で切れる
当日同行者の届出同行者の氏名・役割を事前に届け出る手順と期限入館者を把握できず、秘密保持の及ぶ範囲も不明確になる
秘密情報の範囲何を秘密情報として扱うか。撮影中に見聞きした事項を含めるかどうか写り込みや立ち話で知った情報が対象から外れる
義務の存続期間契約が終了したあとも秘密保持義務が続く期間納品後の取り扱いに歯止めがなくなる

ひな形をそのまま使わず、法務部門のレビューを前提にしてください

ここに並べたのは「決めておく項目」であって、契約書の条文ではありません。同じ趣旨でも書き方によって効き方が変わりますし、自社の標準ひな形や情報セキュリティ規程との整合も要ります。実際の条項は、法務部門または顧問弁護士のレビューを通してから使ってください。

撮影者の側から見ると、これらの項目は面倒な要求ではありません。むしろ、実績として載せてよいかどうかを撮影前に決めてもらえるほうが助かります。あとから「載せてよいですか」と聞きにいくのは、撮る側にとっても気の重い作業だからです。掲載の条件が先に決まっていれば、撮影中から掲載を前提にした撮り方を選べます。

なお、著作権の帰属と秘密保持は別の論点です。著作権を譲り受けたからといって秘密保持の取り決めが自動で付いてくるわけではありませんし、その逆もありません。権利まわりの整理は撮影データの著作権は誰のものか|企業が誤解している3点にまとめてあります。

社員の顔写真を撮影者に渡すこと|個人情報保護法での整理

社員の顔写真を撮影者が撮り、データとして持ち帰る構図は、個人情報保護法の枠組みで整理されるのが一般的です。ただし、どの条文がどう当たるかは事実関係によるため、当てはめは断定できません。ここでは、法務から聞かれたときに参照する条文の並びを示します。

「個人情報」は、生存する個人に関する情報であって、その情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものと定義されています(第2条第1項第1号)。他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものも含まれます。顔写真は、これに該当することがあります。写真であれば常に個人情報だと決まっているわけではありません。

取り扱いの起点は利用目的です。第17条第1項は、個人情報を取り扱うにあたって、その利用の目的をできる限り特定しなければならないと定めています。採用サイトに載せる、社員証に使う、社内報に使う、名刺に印刷する。撮影の企画段階で用途を書き出しておくと、この特定の作業がそのまま撮影の指示書になります。

そして、あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱うことはできません(第18条第1項)。撮影のときに採用サイト用と伝えて撮った写真を、あとから別の用途に回そうとして止まるのは、この線に触れるためです。用途は撮影前に広めに書き出しておくほうが、あとの手戻りが減ります。

では、撮影者にデータが渡ることは第三者提供にあたるのか。第27条第1項は、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています。一方で第27条第5項第1号は、利用目的の達成に必要な範囲内で個人データの取扱いの全部又は一部を委託することに伴って提供される場合、提供先は「第三者」に該当しないとしています。撮影を外注して社員の写真データが撮影者側に渡る構図は、この委託の枠組みで整理されることが多いものです。

ただし、委託として整理されるのであれば、委託先の管理が求められるという順番になります。前の章で並べたNDAの項目——保管場所、保管期間と消去、私物端末、再委託の可否——は、この管理の中身にそのまま重なります。自社のケースがどう当たるかは、法務部門または顧問弁護士にご確認ください。

なお、撮影される社員本人への説明は、法的な整理とは別に、当日の進行に効きます。何に使う写真かを聞かされていない社員は、カメラの前で表情が固くなります。用途を先に伝えておくことは、手続きであると同時に、写真の出来を左右する準備でもあります。

日本プロカメラマン手配の場合|契約の相手方が法人になるということ

日本プロカメラマン手配では、契約の相手方は株式会社ファーストブレイクという法人です。撮影に入るのは登録カメラマンですが、貴社と個々のカメラマンが直接契約する形にはなりません。購買審査の対象が法人1社になる、というのがいちばん実務に効く違いです。

法人が相手方であれば、登記簿があり、商号で確認ができ、社内の購買規程が想定している審査手順にそのまま乗ります。個人事業主向けに手順を作り直す必要がありません。ここで申し上げられるのは、審査の対象が変わるという事実関係までです。当社が反社チェックを代行するとか、審査の結果を保証するといった話ではありません。確認そのものは、貴社の規程に沿って貴社が行うものです。

登録カメラマンとの間には、業務委託契約とNDAの標準雛形があります。著作権譲渡、直接取引の禁止、代替体制への協力の条項を含みます。窓口と品質管理は運営会社が行うので、当日の進行の指示も、データの取り扱いの依頼も、カメラマン個人ではなく運営会社にお伝えいただければ通ります。撮影スロット(時間割)の作成も運営会社の担当です。

標準雛形があることと、それだけで法的な最終判断ができることは別です。貴社のひな形と照らしてどう扱うかは、貴社の法務部門のご判断になります。契約のドラフトは、法務レビューに回せる形でお渡ししています。

料金は時間単位です。ハーフ(半日・4時間枠)が60,000円+税=66,000円、フル(1日・8時間枠)が120,000円+税=132,000円。標準機材と商用利用権が基本料金に含まれ、交通費やスタジオ代などの諸経費は実費のパススルーで運営会社の上乗せはありません。適格請求書(インボイス)にも対応しています(登録番号 T2020001106718)。運営は株式会社ファーストブレイク、所在地は横浜市中区相生町3-60 泰生ビル308です。

個人カメラマンへの直接発注と、会社やエージェントを通す発注で、審査や事務手続きがどう変わるかは撮影会社と個人カメラマンとエージェント、どう違うのかに整理しています。適格請求書の扱いはインボイス制度で個人カメラマンへの発注はどう変わったかをご覧ください。

発注前チェックリスト|購買・法務に回す前に埋めておく項目

購買や法務に相談を上げる前に、この11項目を埋めておくと差し戻しが減ります。撮影の内容ではなく、外注先の審査に関する情報だけを並べました。

  • 契約の相手方が個人事業主か法人かを確定し、名称と所在地を書き出している
  • 契約書または取引約款に、暴力団排除条項(拒絶と解除の2つ)が入っている
  • 相手方から、自らが反社会的勢力でない旨の表明保証を取る手順を決めている
  • 公知情報の確認を行い、確認した日付と方法を社内の様式に記録している
  • 疑いが生じたときの社内の報告先と、外部専門機関への相談先を決めている
  • 秘密情報として扱う範囲を決め、撮影中に見聞きした事項を含めるかを決めている
  • 撮影可能なエリアと立入り範囲を区分し、当日に撮影者へ伝える段取りにしている
  • 撮影データの保管場所・保管期間・消去の時期と、消去の報告方法を決めている
  • 実績としての掲載可否と、掲載する場合の事前確認の手順を決めている
  • 再委託の可否を決め、認める場合は再委託先に同等の義務を課す条件にしている
  • 当日の同行者の届出と入館手続を、撮影日より前に済ませる段取りにしている

この11項目のうち、上の5つが反社会的勢力の確認、下の6つが秘密保持と情報管理にあたります。稟議書に添える説明の作り方は社内の稟議を通すための「撮影費用」の説明の仕方に書きました。金額の説明とこの審査の説明を同じ資料にまとめておくと、決裁が1往復で済むことが多くなります。

まとめ|反社と秘密保持は、撮影日ではなく発注前に決まる

撮影の外注は、人が社内に入り、社内の様子をデータとして持ち出す外注です。だから、購買部門が他の外注先に使っている審査がそのまま当てはまります。撮影の話が止まっているとき、止めているのはたいてい撮影の中身ではなく、この手続きが埋まっていないことです。

反社会的勢力の確認について、政府の指針が求めているのは「常に、通常必要と思われる注意を払う」ことです。完璧な調査ではありません。相手方を特定し、契約書に暴力団排除条項(拒絶と解除)を入れ、表明保証を取り、公知情報を確認し、その手順を記録する。個人カメラマンに対しては法人向けの道具がそろわないぶん、この記録そのものが購買部門への回答になります。

秘密保持は、不正競争防止法第2条第6項の営業秘密の3要件のうち、秘密管理性が現場に効きます。撮影者に見せてよい場所と見せない場所を区分し、それを伝える。写り込み、データの保管先、実績掲載、再委託、保管期間という経路ごとに取り決めをセットにしておけば、NDAに書くべき中身も自然に決まります。

そして、どれも撮影当日には間に合いません。決めるのは発注前です。自社のケースがどこまで当たるか、条項をどう書くかについては、法務部門または顧問弁護士にご確認ください。

この記事の次に読むと、発注の準備が一段進みます

反社と秘密保持の枠が決まったら、次は相手の見極めと、発注そのものの設計です。

反社チェックとNDAの手続きで撮影の相談が止まっている、という段階でしたら、契約の相手方が法人になる形でお見積りをお出しします。撮影日と場所、撮影する人数、写真を使いたい媒体をお知らせいただければ、必要な枠と諸経費まで書き出してお送りします。契約書のドラフトも、貴社の法務レビューに回せる形でお渡しできます。

よくある質問

個人カメラマンに撮影を依頼するとき、反社チェックはどこまで行えばよいですか

「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(平成19年6月19日 犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)が求めているのは、相手方が反社会的勢力かどうかについて常に、通常必要と思われる注意を払うことです。個人の場合は法人の登記簿にあたる公的な確認手段がないため、本人確認で相手方を特定し、契約書に暴力団排除条項を入れ、自らが反社会的勢力でない旨の表明保証を取り、公知情報を確認したうえで、その手順を社内の様式に記録する、という組み立てが実務的です。どこまでの確認が求められるかは自社の規程によるため、法務部門または顧問弁護士にご確認ください。

撮影の契約書に暴力団排除条項を入れるとき、何を書けばよいですか

政府の指針は、契約書や契約約款に盛り込んでおくことが有効な内容として2つを挙げています。反社会的勢力が取引の相手方となることを拒絶する旨と、取引開始後に相手方が反社会的勢力であると判明した場合や不当要求を行った場合に契約を解除して取引から排除できる旨です。入口の拒絶だけでなく、出口の解除までそろって条項として働きます。撮影は着手金や前金が動くことがあるため、解除したときの費用や撮影済みデータの扱いも併せて決めておくと、実際に使える条項になります。条文の書き方は法務部門または顧問弁護士のレビューを前提にしてください。

社内にある秘密保持契約のひな形を、撮影にそのまま使ってよいですか

使えることもありますが、撮影固有の項目が抜けやすいので確認をおすすめします。抜けやすいのは、撮影データの保管場所と保管期間、消去の時期と報告方法、ポートフォリオやSNSへの掲載の可否、レタッチなどの再委託の可否と再委託先への同等義務、当日同行者の届出です。秘密情報の範囲に「撮影中に見聞きした事項」を含めるかどうかも、背景の写り込みや立ち話で知った情報の扱いに関わります。実際の条項は、法務部門または顧問弁護士のレビューを通してから使ってください。

社員の顔写真をカメラマンに渡すのは、個人データの第三者提供にあたりますか

委託の枠組みで整理されることが多い場面です。個人情報保護法第27条第1項は、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定める一方、第27条第5項第1号は、利用目的の達成に必要な範囲内で個人データの取扱いの全部又は一部を委託することに伴って提供される場合、提供先は「第三者」に該当しないとしています。前提として、第17条第1項により利用目的をできる限り特定しておくことが求められます。自社のケースがどう当たるかは事実関係によるため、法務部門または顧問弁護士にご確認ください。

撮影が終わったあと、カメラマンの手元のデータはいつ消してもらえばよいですか

発注のときに決めておくのが実務的です。納品直後に消してもらうと、再納品やデータの差し替えを依頼できなくなるため、「納品から一定期間は再納品に備えて保管し、その後に消去して報告する」という形で期間を決めておくと、双方の実務が回ります。決める中身は、保管場所、保管期間、消去の時期、消去したことの報告方法の4つです。ここを決めずに撮影を終えると、後日に社内からデータの所在を問われたときに、答えられる人がいなくなります。

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