桜の前撮りは3月のいつが安全なのか。紅葉は11月と12月のどちらで狙うのがよいのか。日程のご相談のたびに感覚で答えるのではなく、数字で答えられるようになりたい。そう考えて、私たちフォトジェリッシュは、気象庁が公開している生物季節観測のデータを集計しました。
対象は、店舗のある横浜と金沢の2都市です。さくらの開花日・満開日は2011〜2026年の16シーズン、かえでの紅葉日・落葉日は2011〜2025年の15シーズンの実測値を使いました。
先に集計の結論をお伝えします。この期間のデータでは、桜は早く、紅葉は遅くなっていました。さくらの開花日は横浜で10年あたり約3日、金沢で約6日早く。かえでの紅葉日は両市とも10年あたり約3日遅く。季節の入口と出口が、両側に少しずつ伸びている。それがデータの示す姿でした。本記事では、集計の根拠と年別の実測値をすべて開示し、前撮り計画への使い方まで整理します。
この記事のデータについて(出典・観測の定義・集計方法)
本記事の数値はすべて、気象庁の生物季節観測の公開データに基づいています。生物季節観測とは、気象庁が各地の気象官署で行っている観測で、植物の状態の変化を目視で記録し、季節の進み方や気候の変化を捉えることを目的としたものです。
- さくらの開花日:気象庁「さくらの開花日」(掲載ページ1・掲載ページ2)
- さくらの満開日:気象庁「さくらの満開日」(掲載ページ1・掲載ページ2)
- かえでの紅葉日:気象庁 生物季節観測 累年表(PDF)
- かえでの落葉日:気象庁 生物季節観測 累年表(PDF)
- 平年値:気象庁の平年値(1991〜2020年の統計値)
「開花日」「紅葉日」の観測の定義
それぞれの「日」の定義は、気象庁の「生物季節観測指針」(令和3年12月改正版)で決められています。観測は、各気象官署が定めた観測用の木「標本木」を対象に、目視で行われます。さくらの観測対象はソメイヨシノ、かえでの観測対象はイロハカエデが基本です。
- 開花日:標本木に5〜6輪の花が咲いた最初の日
- 満開日:咲きそろったときの約80%以上の花が咲いた状態になった最初の日
- 紅葉日:標本木を全体として眺めたとき、葉の大部分が紅色に変わり、緑色がほとんど認められなくなった最初の日
- 落葉日:標本木の葉の約80%が落葉した最初の日
ここでひとつ、大切な注意があります。かえでの「紅葉日」は、緑色がほとんど認められなくなるまで色づきが進んだ段階を捉える定義です。観光情報でいう「色づき始め」や「見頃の始まり」とは厳密には別のもので、見頃の始まりより後に観測されることが多い日付として読んでください。
集計の方法
- 各系列について、最も早い観測日・最も遅い観測日・中央値を求めました
- トレンドは期間全体の単回帰(期間全体を1本の直線でならした傾き=1年あたりの変化日数)で算出し、「10年あたり約◯日」と表記しています。あくまでこの期間のデータに見られた傾向で、将来の予測ではありません
- 比較の基準として、気象庁の平年値(1991〜2020年)を併記しています
- 横浜のかえで紅葉日は2016年が欠測のため、集計から除いています
なお、タイトルの「15年分」はかえで(2011〜2025年)基準の表記で、さくらは2026年春までの16シーズンを含みます。本記事の集計表とグラフは、出典(気象庁の観測データをフォトジェリッシュが集計)を明記していただければ、引用を歓迎します。
桜は早くなっている|開花日は横浜で10年に約3日・金沢で約6日
この期間のデータでは、さくらの開花日は横浜で10年あたり約3日(1年あたり約0.33日)、金沢で10年あたり約6日(1年あたり約0.61日)のペースで早くなっていました。まずは推移のグラフをご覧ください。

開花日のレンジを整理すると、次のとおりです。
| さくら開花日 | 最も早い年 | 最も遅い年 | 中央値 | 平年値 |
|---|---|---|---|---|
| 横浜 | 3/15(2023年) | 4/2(2012年) | 3/23 | 3/25 |
| 金沢 | 3/23(2021年・2023年) | 4/10(2012年) | 3/30 | 4/3 |
変化の大きさは、期間の前半と後半を比べるとよく分かります。直近5年(2022〜2026年)の開花日の平均は、横浜が3/23、金沢が3/29。集計期間の前半5年(2011〜2015年)の平均と比べると、横浜は3/26から2.8日、金沢は4/3から5.8日早くなっています。特に金沢の変化幅が大きく、「金沢の桜は4月上旬」という従来のイメージは、この期間のデータでは3月末へ寄ってきています。
満開日も同じ方向でした。この期間のデータでは、横浜で10年あたり約2日、金沢で約5日早くなっています。
| さくら満開日 | 最も早い年 | 最も遅い年 | 中央値 | 平年値 |
|---|---|---|---|---|
| 横浜 | 3/22(2013年) | 4/9(2012年) | 3/31 | 4/1 |
| 金沢 | 3/29(2021年) | 4/13(2012年) | 4/5 | 4/8 |
一方で、レンジ表が示すもうひとつの事実も見逃せません。早くなる傾向の中でも、2012年のように4月にずれ込んだ年、2024年のように横浜の開花が4/1まで待った年があります。「早まっているから3月中旬で大丈夫」と単純化できないのが、実測値の正直なところです。
集計に使った年別の実測値は次のとおりです(出典:気象庁 生物季節観測)。
| 年 | 横浜 開花 | 横浜 満開 | 金沢 開花 | 金沢 満開 |
|---|---|---|---|---|
| 2011 | 3/30 | 4/8 | 4/7 | 4/12 |
| 2012 | 4/2 | 4/9 | 4/10 | 4/13 |
| 2013 | 3/18 | 3/22 | 3/30 | 4/5 |
| 2014 | 3/25 | 3/31 | 4/1 | 4/7 |
| 2015 | 3/23 | 3/31 | 3/31 | 4/4 |
| 2016 | 3/23 | 4/2 | 3/30 | 4/4 |
| 2017 | 3/25 | 4/6 | 4/4 | 4/8 |
| 2018 | 3/19 | 3/27 | 3/29 | 4/3 |
| 2019 | 3/21 | 4/1 | 4/1 | 4/6 |
| 2020 | 3/18 | 3/28 | 3/26 | 4/1 |
| 2021 | 3/17 | 3/27 | 3/23 | 3/29 |
| 2022 | 3/21 | 3/28 | 3/30 | 4/5 |
| 2023 | 3/15 | 3/25 | 3/23 | 3/30 |
| 2024 | 4/1 | 4/7 | 4/1 | 4/8 |
| 2025 | 3/25 | 4/4 | 3/29 | 4/6 |
| 2026 | 3/22 | 4/1 | 3/29 | 4/3 |
金沢の桜は「咲いたら一気」|開花から満開まで平均5.5日
開花日から満開日までの日数を集計すると、横浜は平均8.6日(実測の幅は4〜12日)、金沢は平均5.5日(同3〜8日)でした。金沢の桜は、咲き始めてから一気に満開へ向かいます。
撮影の計画にとって、この差は小さくありません。横浜は開花から満開まで平均8.6日の助走があるため、開花のニュースを見てから日程を最終調整する余裕が比較的あります。金沢の平均5.5日では、開花を確認してから動き出すと満開のピークに乗り遅れることがあり得ます。金沢で満開の画を狙うなら、開花前から日程の候補を持っておく。データはそういう備えを勧めています。
紅葉は遅くなっている|かえで紅葉日は両市とも10年に約3日
秋は、春と逆の方向でした。この期間のデータでは、かえでの紅葉日は横浜・金沢とも10年あたり約3日遅くなっています(横浜は1年あたり約0.32日)。落葉日も両市とも10年あたり約3日遅い方向でした。

| かえで紅葉日 | 最も早い年 | 最も遅い年 | 中央値 | 平年値 | 標準偏差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 横浜 | 12/4(2017年) | 12/24(2021年) | 12/18 | 12/14 | 4.8日 |
| 金沢 | 11/22(2015年・2016年) | 12/3(2024年) | 11/26 | 11/24 | 3.1日 |
もうひとつの発見は、ブレ方の違いです。横浜の紅葉日は最早12/4から最遅12/24まで、標準偏差(年ごとのばらつきの目安)4.8日と振れ幅が大きいのに対し、金沢は最早11/22から最遅12/3まで、標準偏差3.1日と安定しています。横浜の紅葉は読みにくく、金沢の紅葉は読みやすい。データはそう言っています。
また、かえでの紅葉日は金沢が横浜より平均で約21日早く観測されています(年による差は5〜30日)。同じ「紅葉シーズン」という言葉でも、金沢と横浜では3週間ほどずれた別の季節と考えたほうが実態に合います。
| かえで落葉日 | 実測の範囲 | 中央値 | 平年値 |
|---|---|---|---|
| 横浜 | 12/15〜1/7(年越しあり) | 12/30 | 12/27 |
| 金沢 | 11/27〜12/11 | 12/2 | 12/4 |
紅葉日から落葉日までの経過にも、都市の個性が出ました。横浜の落葉日は12/15〜1/7の範囲で、年を越してから落葉が観測された年もあります(表の1月の日付は翌年1月を指します)。一方の金沢は11/27〜12/11の範囲に収まり、中央値で見ると紅葉日11/26から落葉日12/2まで、色づきの後に残された時間は約1週間と短めです。
年別のかえで紅葉日の実測値は次のとおりです(出典:気象庁 生物季節観測 累年表。横浜の2016年は欠測)。
| 年 | 横浜 紅葉日 | 金沢 紅葉日 |
|---|---|---|
| 2011 | 12/19 | 11/25 |
| 2012 | 12/15 | 11/25 |
| 2013 | 12/16 | 11/29 |
| 2014 | 12/16 | 11/26 |
| 2015 | 12/15 | 11/22 |
| 2016 | 欠測 | 11/22 |
| 2017 | 12/4 | 11/29 |
| 2018 | 12/23 | 11/28 |
| 2019 | 12/16 | 11/26 |
| 2020 | 12/22 | 11/24 |
| 2021 | 12/24 | 11/24 |
| 2022 | 12/19 | 11/28 |
| 2023 | 12/21 | 12/1 |
| 2024 | 12/20 | 12/3 |
| 2025 | 12/15 | 11/25 |
このデータを前撮りの計画にどう使うか
ここからは、集計値を撮影計画の言葉に置き換えます。私たちフォトジェリッシュは横浜と金沢の両方に店舗があり、毎年この2都市で桜と紅葉の撮影をしています。その立場から、データが支える判断と、データが保証しない部分を分けて書きます。
今秋の紅葉と来春の桜のどちらで撮るか迷っている方にも、このデータは目安になります。紅葉は、金沢なら紅葉日が11月下旬に、横浜なら12月中〜下旬に集まっているため、今から動けば候補日づくりに間に合う季節です。桜は、金沢の開花から満開まで平均5.5日という立ち上がりの速さを考えると、開花前の秋のうちに候補日を持っておくほうが余裕を持てます。
桜:横浜→金沢の「リレー」はデータで裏付く。ただし保険であって保証ではない
さくらの開花日は、金沢が横浜より平均7.7日遅く観測されています。横浜の見頃を逃しても金沢ではこれから、という「桜リレー」の考え方は、この期間の実測値で裏付けられます。
ただし、年による差は0〜12日と幅があり、2024年には横浜と金沢が同じ4/1に開花しました。リレーは日程の選択肢を増やす保険として有効ですが、「横浜がだめでも金沢が残っている」ことを約束する仕組みではありません。この点は正直にお伝えしておきます。あわせて、金沢は開花から満開まで平均5.5日と立ち上がりが速いため、リレーで金沢に切り替える場合も、判断は早めが向いています。
桜のロケーション選びや予約の逆算スケジュールは、桜の前撮り・フォトウェディングの記事に詳しくまとめています。
紅葉:横浜は12月後半に残る年がある。金沢は11月下旬の集中戦
横浜のかえで紅葉日は中央値12/18で、12/24に観測された年もありました。落葉が年を越した年もあることを踏まえると、横浜には「12月後半でも紅葉の画が残っている年がある」と言えます。年末の前撮りを検討している方にとって、覚えておく価値のある実測値です。
一方の金沢は、紅葉日が11月下旬に安定して集まり、紅葉日から落葉日までの時間も短めでした。狙う時期を絞りやすい反面、勝負の期間は短い。金沢の紅葉撮影は、11月下旬を軸に早めに日程を押さえる計画が実態に合います。
紅葉のロケーション選びや予約の考え方は、紅葉の前撮り・フォトウェディングの記事にまとめています。
共通の原則:1日を当てにいくのではなく、幅に備える
このデータは「来年の開花日」や「来年の紅葉日」を教えてくれません。私たちがおすすめするのは、中央値を計画の軸に置き、最早・最遅のレンジを想定の幅として持っておく使い方です。1日を当てにいくのではなく、幅に備える。それがこの実測値から引き出せる、いちばん誠実な結論だと考えています。
このデータの限界と注意点
集計を公開するにあたり、このデータで言えないことも明記しておきます。
- 観測値は各気象官署の標本木(原則1本)のものです。市内のすべての桜・かえでの状態を代表するものではなく、ロケーションごとの品種や立地によって実際の開花・色づきは前後します
- さくらはソメイヨシノ、かえではイロハカエデの観測です。河津桜や八重桜、いちょう並木など、他の品種・樹種にはそのまま当てはまりません
- かえでの紅葉日は、観光的な「見頃」とは定義が異なります(緑色がほとんど認められなくなった最初の日)。見頃の始まりはこれより前に来ることが多い点にご注意ください
- 「早くなっている」「遅くなっている」という傾向は、2011年以降のこの期間のデータで見られたものです。原因についての断定は本記事では行いません(一般には気温の上昇の影響が指摘されています)
- 横浜のかえで紅葉日は2016年が欠測です
本記事は、毎年の観測値が出そろい次第、表とグラフを更新していきます。数値の誤りにお気づきの場合は、お問い合わせよりご指摘いただけると助かります。
よくある質問
気象庁の「紅葉日」と観光でいう「見頃」は同じですか?
別のものです。気象庁の紅葉日は、標本木を全体として眺めたときに葉の大部分が紅色に変わり、緑色がほとんど認められなくなった最初の日を指します。色づきが十分に進んだ段階を捉える定義のため、観光情報の「見頃の始まり」より後に観測されることが多く、本記事の日付は観測上の基準日として読んでください。
このデータで来年の開花日や紅葉日を予想できますか?
できません。本記事は過去の実測値の集計であり、特定の年の予想は行っていません。計画に使う場合は、1日を当てにいくのではなく、中央値を軸に最早・最遅のレンジで幅を持って考える使い方をおすすめします。
桜が早く、紅葉が遅くなっている原因は何ですか?
本記事のデータだけでは原因は特定できません。一般には気温の上昇の影響が指摘されていますが、この記事では2011年以降の実測値に見られた傾向の報告にとどめています。
元データはどこで確認できますか?
気象庁のウェブサイトで公開されています。さくらの開花日・満開日は「さくらの開花日」「さくらの満開日」のページ、かえでの紅葉日・落葉日は生物季節観測の累年表(PDF)で、どなたでも確認できます。本文の出典リストにURLを記載しています。
この記事のデータは更新されますか?
毎年更新する予定です。さくらは春の観測値、かえでは秋から冬の観測値が出そろった時点で、表とグラフに追記します。
桜も紅葉も、日程は「幅」を持ってご相談ください
私たちフォトジェリッシュは、横浜と金沢の両店舗で、桜と紅葉の前撮り・フォトウェディングを毎年お手伝いしています。このデータを眺めながら、おふたりの予定に合う時期の幅を一緒に探すところからで大丈夫です。横浜店・金沢店のページから、お気軽にご相談ください。




