スタートアップの資金調達では、写真は「ピッチ資料に載せる1枚」では終わりません。ピッチデッキのチーム紹介、投資家に渡す会社概要、コーポレートサイト、調達リリース、メディア取材、登壇イベント、採用ページ、受賞の掲載面。同じ素材が短い期間に8つの面へ同時に回ります。だから撮影は「何面に回るか」から逆算して設計します。
結論|資金調達フェーズの写真は「1回の撮影が何面に回るか」から逆算する
STARTUP FUNDRAISING PHOTO

スタートアップのご担当者から撮影のご相談をいただくとき、連絡の入り方には特徴があります。「調達のリリースを来週出すのですが、創業メンバーの写真が手元になくて」。この一文から始まることが多い。すでに公表日が決まっていて、配信の準備も進んでいて、写真だけが空欄のまま残っている状態です。
このとき困っているのは、良い写真の撮り方ではありません。困っているのは、写真を求められる面が思っていたより多いことと、それに気づいた時点で時間が残っていないことの2つです。ピッチデッキ用に1枚あればいいと思っていたら、リリース用、サイト用、メディア提供用、登壇者紹介用がまとめて必要になる。しかも締切が全部同じ週に来る。
この記事では、資金調達フェーズの写真を「使われる面の広さ」と「時間のなさ」から組み立て直します。具体的には、写真が人目に触れる8つの面の一覧、調達フェーズ特有の時間の逆転構造、1回の撮影を複数の面に回すためのカット設計の条件、メンバーが増減する前提での撮り方と記録の残し方、調達リリースとメディア掲載で写真を求められたときの実務、社外に写真を渡すときの権利の考え方、撮影前に決めておく12項目、そして撮影日を逆算して押さえる手順までを順に書きます。
先に、この記事が扱わない範囲をはっきりさせておきます。1つは、上場後の企業が開示物に載せる写真の話です。統合報告書・決算説明資料・IRサイトのように、開示物という制度的な制約がかかる領域はIR・決算資料に使う写真の考え方にまとめました。本記事が扱うのは、その手前にある未上場のスタートアップが調達フェーズで使う写真です。読者として想定しているのは、シードからシリーズの段階にいる創業者・CxO・広報1人目・コーポレート担当の方です。
もう1つ扱わないのが、ポートレートそのものの作り方です。表情の引き出し方、服装の選び方、背景の作り方、ライティングの考え方は社長・役員のプロフィール写真、失敗しないための全知識に書いています。本記事が引き受けるのは、その手前にある「調達フェーズという状況が、写真の設計に何を要求するか」という部分です。撮り方は同じでも、使われ方が変わると決めるべきことが増えます。
この記事が書くこと・書かないこと(先にお読みください)
「写真が良いと投資家に刺さる」「写真を整えると調達が決まりやすくなる」といった効果の話は書きません。撮影を手配する立場で検証できないためです。この記事で書けるのは、実務として観測できる範囲のことだけです。すなわち、資金調達のフェーズでは写真を求められる場面が実際に多いこと、そして用意がないと調達リリースの直前やメディア掲載の直前に段取りが詰まること。この2点までを材料として、撮影の設計と段取りを整理します。
資金調達フェーズで写真が人目に触れる8つの面
資金調達のフェーズで写真が人目に触れる面は、大きく8つあります。ピッチデッキのチーム紹介ページ、投資家に渡す会社概要・エグゼクティブサマリー、コーポレートサイトのメンバー欄、調達リリースの配信、メディア取材での写真提供、登壇・ピッチイベントの登壇者紹介、採用ページとスカウト文面、受賞・アクセラレータの掲載面。この8つです。
この一覧を最初に置くのには理由があります。写真の相談は「ピッチ資料に載せる写真をどうするか」という形で始まることが多いのですが、実際に素材が足りなくなるのは資料の外側だからです。資料の中の1枚だけを考えて撮ると、リリースの配信画像で比率が合わない、メディアから依頼された縦位置がない、採用ページに使える働く風景がない、という形で後から不足が出ます。面ごとに、必要な向きも、使う人も、後から差し替えられるかどうかも違います。
| 写真が触れる面 | 必要なカットと向き・比率の目安 | 誰が使うか | 差し替えやすさ |
|---|---|---|---|
| 1. ピッチデッキのチーム紹介ページ | 創業メンバーの個人ポートレート。スライド上で小さく並ぶため、正方形または縦長に切っても顔が判別できる余白が要る | 創業者・CxO本人。資料は面談のたびに更新される | 高い。ファイルを差し替えれば済む。ただし面談が始まると更新の手が止まりやすい |
| 2. 投資家に渡す会社概要・エグゼクティブサマリー | 個人ポートレートに加えて、チームの集合と働く風景。PDFで配布されるため、印刷にも耐える解像度で持っておく | 創業者。投資家・仲介者経由で第三者にも渡る | 中程度。一度渡したPDFは相手の手元に残り、回収できない |
| 3. コーポレートサイトのメンバー欄 | 個人ポートレート。一覧でトリミングされる前提。役職の追加・変更に合わせて増える | 広報・コーポレート担当、制作会社 | 中程度。差し替えの作業自体は軽いが、1人だけ違う条件で撮ると並びで浮く |
| 4. 調達リリース(プレスリリース配信) | 配信サービスのサムネイルに合う横位置と、本文中に置く集合・代表のカット。配信面ごとに切り取られる | 広報担当、配信サービス、転載するメディア | 低い。公表日が決まっており、配信後の差し替えは実務上むずかしい |
| 5. メディア取材での写真提供 | 媒体から指定される。横位置・縦位置の両方、寄りと引き、集合と個人を求められることがある | 媒体の編集者・デザイナー。こちらでレイアウトを決められない | 低い。依頼から掲載までが短く、追加撮影の時間が取れない |
| 6. 登壇・ピッチイベントの登壇者紹介 | 個人ポートレート。イベント側のフォーマット(多くは正方形または縦長)に合わせて提出する | イベント主催者。サイト・会場スライド・配信画面に載る | 中程度。提出前なら差し替え可。締切は登壇日よりかなり前に来る |
| 7. 採用ページとスカウト文面 | 働く風景、チームの雰囲気が伝わる引きのカット、社員の個人ポートレート | 採用担当、人材エージェント、スカウト送信者 | 高い。運用しながら差し替えられるが、素材がないと更新が止まる |
| 8. 受賞・アクセラレータなどの掲載面 | 個人ポートレートと集合。主催者のフォーマットに合わせて提出する | 主催者・事務局。先方のサイトや資料に長く残る | 低い。掲載後は先方の管理下に入り、こちらから差し替えられない |
この表で見てほしいのは右の2列です。写真を使うのが自社の担当者だけではないこと、そして差し替えがきかない面が半分近くあることの2つが、調達フェーズの写真の性格を決めています。ピッチデッキだけなら何度でも直せますが、配信済みのリリース、媒体に掲載された記事、主催者のサイトに載った登壇者紹介は、こちらの都合では動かせません。
面の数は、調達のラウンドが進むほど増えます。シードの段階ではピッチデッキと簡素なコーポレートサイトで足りていたものが、ラウンドが進むと、リリースの配信、メディアの取材、イベント登壇、採用の本格化が一度に重なります。撮影の設計を「今のラウンドに必要な分」で切ると、次のラウンドでまた同じ場所から始めることになります。
採用の面については、写真が応募者にどう効くのかを別の記事で整理しています。採用サイトの写真と応募数の関係は採用サイトの写真で、応募数は本当に変わるのかをご覧ください。調達の直後は採用を一気に動かす時期でもあるので、調達用の撮影と採用用の撮影を別々に手配するのは、時間の面でも費用の面でも損になりやすいところです。
コーポレートサイトのメンバー欄については、いつ写真を更新するかという判断軸をコーポレートサイトの写真を撮り直すべきタイミングにまとめました。スタートアップの場合、更新のきっかけは「移転」「CI刷新」よりも「人が増えた」「役職が変わった」が圧倒的に多くなります。この違いが、次に書くカット設計の条件にそのまま効いてきます。
「調達が決まってから撮る」では間に合わないことがある理由
資金調達の写真が間に合わなくなるのは、担当者の準備不足というより、調達フェーズに固有の時間構造のためです。写真の必要性に気づくのが工程のいちばん最後で、被写体である創業者の予定が社内でいちばん早く埋まる。この逆転が、毎回同じ場所で詰まりを起こします。
公表日が決まってから解禁までの期間が短い
調達のリリースは、公表日が決まってから解禁までの期間が短くなりがちです。条件が固まる、契約を締結する、公表日を関係者と合わせる、リリース文を書く、配信の手配をする。この工程が動き出したときには、公表日までの残りが週の単位になっていることが珍しくありません。
短くなる理由は、公表日そのものが自社だけで決められないからです。投資家側の都合、他の出資者との足並み、事業上の発表タイミングとの兼ね合い。複数の関係者が関わるほど、日付が固まるのは後ろにずれます。一方で、固まった後の段取りは前倒しできません。結果として、写真の準備に使える時間だけが圧縮されます。
ここで前年・前回の素材があれば話は早いのですが、スタートアップの場合はその前回がないことが多い。初めての調達であれば当然ですし、2回目であっても、前回はメンバー構成が違います。手元にあるのは、創業者が自分のスマートフォンで撮った写真か、イベント会場で誰かが撮ったスナップか、という状態から始まります。
メディアからの写真依頼は「今日明日」の単位で来る
メディアから「写真を送ってください」と言われるタイミングは、こちらで決められません。調達リリースを見た媒体から取材の打診が入り、掲載の段になって素材の依頼が来る。このとき提示される期限は、多くの場合その日か翌日です。媒体側の制作スケジュールがそうなっているためで、こちらの都合で延ばせる性質のものではありません。
依頼される内容も、事前には読めません。横位置でほしいと言われることもあれば、縦位置を指定されることもある。代表個人の寄りを求められることも、チーム全体の引きを求められることもある。この不確実性に「素材の幅」で備えるのが現実的な対処で、依頼が来てから撮るのは時間的に成り立ちません。
私は元カメラマンとして、公表の直前に「明日の朝までに使える写真がほしい」というご相談を受けたことが何度もあります。そういうときにできるのは、手元の素材から使えそうな1枚を選び、トリミングで比率を合わせることだけです。撮影そのものを差し込むには、被写体の時間も、場所も、天候も、すべてが偶然そろう必要があります。段取りとして当てにできるものではありません。
写真の必要性に気づくのが最も遅く、創業者の予定が最も埋まっている
調達フェーズで写真が後回しになるのは、優先順位の問題ではなく気づく順番の問題です。事業計画、財務モデル、デューデリジェンスの対応、契約条件の詰め。これらはどれも締切と相手がいるので先に動きます。写真は締切が見えるのが最後なので、思い出されるのも最後になります。
ところが、写真の被写体は創業者とCxOです。調達の期間中、この人たちの予定がいちばん埋まっています。投資家との面談、既存株主への報告、事業側の意思決定、採用の面接。ここに1〜4時間の撮影枠を差し込むのは、思っているより難しい作業になります。人数が増えるほど、全員がそろう時間は先送りになります。
この構造を工程として並べると、どこで手を打てるかが見えてきます。下の表は、調達の各工程がいつ動くか、その工程で写真が要求されるか、そして写真の準備が間に合わなくなる理由を対応づけたものです。
| 調達の工程 | この工程で写真が要求されるか | 間に合わなくなる理由 |
|---|---|---|
| 投資家への初期接触・ピッチ資料の作成 | 要求される。チーム紹介ページに使う個人ポートレート | 手元の素材で仮に埋めてしまい、そのまま差し替えを忘れる。面談が始まると資料の更新は数字と事業の記述に集中する |
| 面談・デューデリジェンス | 直接は要求されない | 写真の話題が出ないので、準備が止まる。創業者の予定はこの期間がいちばん埋まる |
| 条件確定・契約締結 | 直接は要求されない | 公表の準備が始まる直前だが、まだ広報の作業が動いていない。ここが最後の撮影チャンスになることが多い |
| 公表日の決定・リリース文の作成 | 要求される。配信用の画像、本文中のカット | 公表日が決まってから解禁までが短い。この時点で撮影日を入れられる余地がほとんどない |
| 調達リリースの配信 | 要求される。配信面のフォーマットに合う比率 | 手元の素材の比率が合わず、トリミングで顔が切れる。差し替えは配信後にはきかない |
| メディアの取材・掲載 | 要求される。媒体の指定するカット | 依頼から掲載までが短く、追加撮影の時間がない。手元の素材の幅で決まる |
| 採用の立ち上げ・登壇の増加 | 要求される。働く風景、チームの引き、登壇者紹介用 | 調達の写真を「リリース用」とだけ考えて撮ると、この段階で素材が尽きる |
この表で打ち手が入るのは、上から3行目の「条件確定・契約締結」の前後です。公表日が決まる前で、かつ調達の見通しが立っている時期。ここに撮影を置ければ、以降の工程で写真が理由になって止まることはほぼなくなります。逆に、4行目まで進んでから撮影を考え始めると、日程の選択肢がほとんど残っていません。
実務的な言い方をすると、撮影の判断材料は「調達が決まったかどうか」ではなく「公表の準備が始まる前かどうか」です。調達が流れる可能性があるから撮影を待つ、という考え方は理解できるのですが、撮った写真はコーポレートサイト・採用ページ・登壇者紹介にそのまま回ります。調達の結果と関係なく使い道のある素材なので、待つ理由としては弱いというのが実感です。
1回の撮影を8つの面に回すためのカット設計の条件
1回の撮影を複数の面に回すには、カットの選び方より先に「使い回しに耐える条件」を決めておきます。条件は6つです。寄りと引きの両方を押さえること、上下左右に余白を残すこと、縦横比の違う面に同じ素材が回る前提で撮ること、背景に時期が特定できるものを入れないこと、集合写真1枚で勝負しないこと、そして同じ日に働く風景まで押さえておくことです。
| 条件 | 具体的にどうするか | 外すと何が起きるか |
|---|---|---|
| 1. 寄りと引きの両方を押さえる | 同じ場面を、顔が大きく入る寄りと、上半身から全身が入る引きの2通りで撮っておく。撮影時間の差は1人あたり数十秒 | 媒体から「引きの写真はありますか」と聞かれて出せない。逆に引きしかないと、一覧の小さい枠で顔が判別できない |
| 2. 上下左右に余白を残す | 被写体を画面いっぱいに入れない。頭上と肩の左右に、後から切れる分の余白を作る | 正方形に切ると頭が切れる。横長のサムネイルに切ると肩から上しか残らない。面ごとにトリミング先が違うため、余白がないと対応できない |
| 3. 縦横比の違う面に回る前提で撮る | 横位置と縦位置の両方で撮る。配信サービスのサムネイル、イベントの登壇者紹介、サイトの一覧は、それぞれ求める比率が違う | 横位置しかないと、縦長を指定された面で使えない。急きょ縦に切ると構図が破綻する |
| 4. 時期が特定できるものを背景に入れない | 季節の装飾、期間限定の掲示物、古いロゴの入った看板、その時点のメンバー数に依存する掲示を画面から外す | 1年後に同じ写真を使うと、背景だけが過去のものになる。ロゴを刷新した後だと、旧ロゴが写った写真が対外的に使えなくなる |
| 5. 集合写真1枚で勝負しない | 集合のカットを撮る場合でも、同じ条件で個人カットを全員分そろえる。集合は補助、個人が主と考える | メンバーが1人増減しただけで、集合写真が使えなくなる。撮り直しは全員の予定を再度そろえる作業になる |
| 6. 同じ日に働く風景まで押さえる | ポートレートの前後に、オフィスの引き、打ち合わせの様子、作業中の手元、外観を撮っておく | 採用ページ・スカウト文面・メディア掲載で「人物以外の写真」を求められたときに出せない。後から半日の撮影を追加することになる |
この6つのうち、現場で抜けやすいのは1番目と6番目です。撮影が進むと、良い表情が撮れた時点で次の人に移りたくなります。そこで「引きでも1枚押さえておきましょうか」の一言が出るかどうかで、半年後の選択肢が変わります。私は元カメラマンとして、この一言を省いた日のことをよく覚えています。後日、媒体から横長の見出し用に引きの素材を求められて、手元にあるのは寄りだけでした。その日の撮影で数十秒惜しんだ結果が、撮り直しの相談になりました。
4番目の「時期が特定できるもの」は、スタートアップで特に効きます。オフィスの移転が短い周期で起きる、ロゴやサービス名を刷新する、壁に貼ってある指標やボードが数か月で変わる。この変化の速さが、背景の写り込みを通じて写真の寿命を縮めます。撮影の当日、背景に入る範囲だけでも掲示物を外しておくと、使える期間が延びます。
働く風景・オフィス外観のカットは、事業の性質によって中身が変わります。製造やハードウェアを扱うチームであれば、現場のカットが説得力の中心になります。この場合は安全管理と写り込みの確認が別に必要になるので、工場・製造現場の撮影で押さえる安全管理と段取りもあわせてご覧ください。建設・不動産に関わるチームで、竣工した建物そのものを見せる必要がある場合は建築の竣工写真は誰に頼むべきかが参考になります。
メンバーが増減する前提で撮る|後から入った人を同条件で足す方法
スタートアップの写真は、在籍者が変わる前提で設計します。個人カットを同条件でそろえておけば、人が増えたときはその人だけ撮り足せば済み、抜けたときはその1枚を外せば済みます。集合写真だけで運用していると、1人の増減で全員の撮り直しが発生します。
調達の前後は、人の動きが最も大きい時期です。CxOが加わる、1人目の広報が入る、業務委託だったメンバーが正社員になる、逆に方向転換に伴って離れる人が出る。半年で顔ぶれが変わることは珍しくありません。この動きを「例外」として扱うか「前提」として扱うかで、撮影の設計が変わります。
撮影を手配する側として、いちばん多いご相談がこれです。「メンバーが2人増えたので、その2人だけ前と同じ感じで撮ってもらえますか」。お受けできるかどうかは、前回の撮影条件が記録として残っているかどうかで決まります。残っていれば同条件で足せます。残っていなければ、前回のデータから読み取れるのは画角と背景の色のおおよそだけで、光の当て方や背景との距離は復元できません。結果として、新しく撮った2人だけがメンバー一覧の中で浮きます。
ここで揃わないと、実際に何が起きるか。メンバー欄に並べたときに、2人だけ背景の明るさが違う、顔の大きさが違う、影の落ち方が違う。見る人は撮影条件を知りませんから、単に「あとから入った人」に見えます。社外の読み手にとってメンバー欄は会社の体制を確認する場所なので、そこに段差があると情報として読まれてしまいます。
この問題は、撮影者の腕ではなく記録で解けます。撮影の当日に、下の7項目を書き残しておくだけです。撮影が終わってから思い出して書くと距離や高さの記憶が曖昧になるので、撮りながらカメラマンに聞いて埋めるのが現実的です。
| 記録する項目 | 書き方の例 | 後から1人足すときに効く理由 |
|---|---|---|
| 撮影場所と背景 | 場所の名前、壁の色と素材、人物と背景の距離をメートルで。移動可能な背景紙を使ったなら、その色と設置位置 | 背景の色は写真から読めても、人物との距離は読めない。距離が変わると背景のぼけ方と明るさが変わる |
| 光の方向と高さ | 主な光が被写体から見てどの方向にあったか、高さ、被写体からの距離。窓の自然光を使ったなら時間帯と天候も | 影の落ち方は光の位置で決まる。ここがずれると、同じ背景・同じ服装でも別の日に撮ったと分かる |
| レンズの画角帯 | 機種名ではなく焦点距離の帯で書く(中望遠帯など) | 画角が変わると顔の見え方が変わる。翌回に別の機材でも、同じ画角帯なら並びが揃う |
| カメラの高さと距離 | カメラが被写体の目の高さに対して上か下か、被写体までのおおよその距離 | 目線の高さは一覧でいちばん目立つ差になる。1人だけ見下ろした角度だと並びで浮く |
| 立ち位置と体の向き | 正対か半身か、右肩を前にするか左肩を前にするか、手の位置、座るか立つか | 向きがばらばらだと一覧の印象が散る。会社としてどちらに統一するかを決めておけば、追加の1人にもそのまま指定できる |
| トリミングの余白 | 画面に対する頭の大きさ、頭上の空き、肩から下をどこで切るか。上下左右に残す余白の量 | 余白の量が揃っていないと、同じ比率に切ったときに顔の大きさが違ってしまう |
| 服装の申し合わせと命名規則 | 服の色の範囲、襟の有無、ロゴ入りのアイテムを着るかどうか。データのファイル名の付け方(撮影年月+氏名など) | 追加撮影の案内文にそのまま使える。命名規則がないと、どれが採用カットか半年後に分からなくなる |
この7項目に加えて、基準となる1枚を決めておくことをおすすめします。撮ったカットの中から「これが自社の標準」という1枚を選び、記録と一緒に保管する。次の撮影では、その1枚を画面に出しながら合わせられます。言葉で書いた条件と、見本の1枚。この2つがそろうと、担当するカメラマンが変わっても並びが揃います。
もう1つ、抜けたメンバーの扱いも先に決めておくと後が楽です。集合写真に写っている人が退職した場合、その写真を使い続けるかどうかの判断が発生します。個人カットで運用していれば外すだけですが、集合写真しかないと、写真ごと使えなくなるか、そのまま使うかの二択になります。これは権利の問題でもあるので、後の章でもう一度触れます。
撮影の見積りは、内訳つきで無料です
用途・日程・場所をお知らせいただければ、拘束時間と人員の内訳が分かる見積りをお送りします。料金はハーフ(4時間枠)66,000円・フル(8時間枠)132,000円(税込)です。
調達リリースとメディア掲載で写真を求められたときの実務
調達リリースとメディア掲載では、写真を「渡す」作業が発生します。ここで手が止まる理由は素材の有無だけではなく、どの1枚を渡すかが決まっていないこと、渡す形式が決まっていないことにもあります。この2つは撮影の前に決められます。
プレスリリースの配信では、配信サービスの面にサムネイルが表示され、そこから転載する媒体がさらに独自のレイアウトで切り出します。PR TIMESをはじめとする配信サービスは、それぞれ推奨する画像のサイズや比率を公開しています。自社が使う配信サービスの仕様は、リリース文を書き始める段階で確認しておくと、素材を選ぶときの基準になります。ここで確認するのは仕様だけで、どの写真を載せるかは自社の判断です。
媒体への提供で決めておくとよいのは、次の4点です。1つ目は、社外に出す「正となる1枚」を代表・CxOそれぞれについて決めておくこと。依頼が来るたびに選び直すと、媒体ごとに違う写真が出回ります。2つ目は、ファイル名の付け方。媒体側で複数の企業の素材を扱うため、社名と氏名が入っているだけで扱いが早くなります。3つ目は、渡すサイズ。長辺のピクセル数を決めて、縮小版ではなく元のサイズで渡せる状態にしておきます。4つ目は、クレジット表記の要否。撮影者名の表記を求めるかどうかは、撮影時の取り決めによります。
渡し方そのものも、事前に決めておくと詰まりません。大容量のデータをメールで送ると、媒体側の受信制限に引っかかることがあります。共有リンクで渡す場合は、有効期限とアクセス権限の設定を確認しておきます。急ぎの依頼が来たときに「どこに置いてあるか分からない」で30分使うのは、もったいない時間の使い方です。撮影データの保管場所と、社外提供用のフォルダを分けておくだけで解決します。
登壇・ピッチイベントの登壇者紹介は、締切が登壇日よりかなり前に来ます。主催者側でサイトの掲載や会場スライドの制作が必要なためです。イベントの応募や採択が決まった時点で、提出フォーマット(比率とサイズ、背景の指定の有無)を確認しておくと、当日ではなく提出時点で困らずに済みます。ここでも、余白を残して撮ってあるかどうかが効いてきます。
写真の権利と社外配布|調達フェーズは素材が社外に出ていく
調達フェーズの写真は、社内で完結しません。投資家、配信サービス、媒体、イベント主催者、アクセラレータの事務局。撮影を発注する段階で、写真が社外に渡ることを前提にしておくと、後から使用条件を確認し直す手間がなくなります。
日本プロカメラマン手配では、納品した写真の商用利用権を基本料金に含めています。コーポレートサイト、ピッチ資料、プレスリリース、採用ページ、社内報、印刷物といった企業の業務用途であれば、追加料金なしで使えます。用途ごとに使用料が発生する契約形態ではないので、媒体へ提供するたびに条件を確認する作業は発生しません。
一方で、撮影のたびに確認したほうがよい論点が2つあります。1つは、退職したメンバーが写った写真の扱いです。集合写真やオフィスの風景に写っている人が退職した場合、その写真を使い続けてよいかは、撮影時にどう同意を取っていたかによります。個人カットで運用していれば外すだけで済むので、ここでも集合1枚勝負にしない設計が効きます。
もう1つは、被写体に社外の方が含まれる場合です。業務委託のメンバー、アドバイザー、来訪中の取引先、イベントの共演者。社員とは同意の取り方が変わります。誰が同意書を用意するのか、何を書くのかという論点はモデルリリース(肖像権同意書)は誰が用意するのかに整理しました。
権利の最終判断について
ある写真をどの範囲まで使えるかは、撮影時の契約内容と個別の事情によって決まります。この記事で法的な判断を示すことはできませんので、自社の法務担当または顧問弁護士にご確認ください。過去に撮った写真の利用条件が確認できない場合は、確認作業を続けるより、次の撮影で条件を整えて撮り直すほうが早く終わることが多いのが実情です。調達フェーズは素材が社外へ出ていく時期なので、条件の分からない写真を使い回すより、利用範囲のはっきりした素材に入れ替えておくほうが後が楽になります。
権利まわりの考え方は、記事を分けて書いています。撮影データの著作権が誰のものになるのかという基本は撮影データの著作権は誰のものかを、見積書や契約書に出てくる「買い取り」「二次利用可」という言葉が実際に何を指しているのかは写真の「買い取り」「二次利用可」の意味をご覧ください。発注書・契約書に書いておく項目は撮影の発注書・契約書に書く項目とテンプレートにまとめています。
資金調達フェーズの撮影で、先に決めておく12項目
ここまでの内容を、撮影を発注する前に決めておく12項目にまとめます。どれも社内で決められるか、配信サービス・制作会社に一度聞けば答えが返る項目です。これが埋まっていると、撮影当日に決めることがほとんどなくなり、1回の撮影で取れるカットの幅が広がります。
- 今回の写真が載る面を書き出した(ピッチデッキ/会社概要/サイト/リリース/メディア提供/登壇/採用/受賞のうちどれか)
- 被写体になる人を氏名と役職で確定した(創業者・CxO・社員・業務委託メンバーのどこまでを入れるか)
- 個人カットを全員分そろえる方針を決めた(集合写真だけで運用しない)
- 働く風景・オフィス外観を同じ日に撮るかどうかを決めた
- 使う予定の配信サービスの画像仕様(推奨サイズ・比率)を確認した
- コーポレートサイトのメンバー欄のトリミング比率を、制作担当に確認した
- 寄りと引き、横位置と縦位置の両方を撮る方針をカメラマンと共有した
- 背景に入る掲示物・ロゴ・季節の装飾を、撮影当日までに外す担当を決めた
- 服装の申し合わせを、撮影日の何日前に誰から案内するかを決めた
- 撮影条件の記録(背景・光・画角・カメラ位置・立ち位置・余白・命名規則)を誰が残すか決めた
- 社外提供用の「正となる1枚」を誰が選ぶか、どこに置くかを決めた
- 社外の方が被写体に含まれる場合の同意の取り方を、法務担当またはアドバイザーに確認した
撮影を外部に発注するときの一般的な確認項目は撮影を外注する前に確認すべきチェックリスト20項目にまとめてあります。上の12項目は調達フェーズに固有の論点に絞っているので、撮影の外注そのものが初めてであれば、両方を通すと抜けが減ります。
この12項目が埋まりきらない状態でも、そのままご相談いただいて構いません。写真を載せる予定の面、撮りたい人数、オフィスの場所、公表の予定時期をお知らせいただければ、必要な撮影枠と、いつまでに撮影日を押さえるべきかを逆算してお返しします。撮影条件の記録はこちらで作成してお渡しします。
撮影日は調達スケジュールから逆算して押さえる
撮影日は、公表日からではなく「公表の準備が始まる前」から逆算して押さえます。公表日を起点にすると、写真の入る余地がほとんど残っていません。以下の6ステップで、撮影日を置くべき時期が具体的な日付として出ます。
写真が載る面と、それぞれの締切を1枚に並べる
ピッチデッキの更新、コーポレートサイトの公開、調達リリースの配信、登壇イベントの素材提出、採用ページの公開。自社が実際に予定しているものだけで構いません。日付が決まっていない項目は「未定」と書き、いつ決まるかの見込みを添えます。ここを起点にするので、推測の日付ではなく確定した日付を入れてください。
いちばん早い締切から、レタッチと社内確認の期間を引く
並べた中でいちばん早い締切が、実質的な期限です。撮影の翌日に写真が仕上がるわけではない点に注意してください。少量であれば即日から翌営業日、人数が多いポートレートであれば5〜7営業日が納期の目安になります。ここに社内で見る時間を足したものが、撮影日から締切までに必要な日数です。
調達の工程を重ねて、撮影できる時期を絞り込む
デューデリジェンスの対応期間、条件交渉の山場、公表準備の期間は、創業者も担当者も動けません。ここを外すと候補日は思ったより狭くなります。狙い目は、条件の見通しが立ってから公表日が決まるまでの間です。この時期であれば、日程の選択肢がまだ残っています。
創業者・CxOの予定を、カメラマンの手配より先に押さえる
順番が逆になりがちですが、代替がきかないのは被写体の側です。人数が多いほど、全員がそろう日は先になります。実務的には、経営会議や全社ミーティングの前後に撮影枠を置くと、全員が同じ場所にいる時間をそのまま使えます。1人ずつ別の日に撮ると、条件を揃えるのが難しくなり、記録を残していても差が出やすくなります。
撮影スロット(時間割)を作る
日程が決まったら、何時に誰が入って、どのカットをどの順で撮るかを決めます。ポートレートの撮影では、被写体の呼び出しが滞った時間がそのまま撮れるカット数を削ります。時間割の精度が、そのまま成果物の量になります。日本プロカメラマン手配では、この撮影スロットの作成を運営会社側で担当しています。働く風景やオフィス外観を撮る場合は、人が動いている時間帯を先に押さえておきます。
増員・差し替え用の枠を、あらかじめ見込んでおく
調達の後は人が増えます。撮影の時点で「半年後に追加撮影が要る」と分かっているなら、その枠を先に見込んでおくと、増えるたびに一から相談する手間がなくなります。撮影条件の記録があれば、追加分は短い枠で済みます。当日の欠席に備えて、同じ条件で撮れる予備日を1つ置いておくのも有効です。創業者の予定は動きやすいので、この予備日の有無で段取りが変わります。
この6ステップで作った日程表は、次のラウンドでもそのまま使えます。調達の工程は会社が変わってもおおむね同じ順番で進むので、1回目に作っておけば、2回目は日付を書き換えるだけになります。調達のたびに写真で慌てる会社と、そうでない会社の差は、素材の量よりもこの1枚があるかどうかです。
年に複数回の撮影が見込まれる場合は、調達用の撮影だけを切り出さず、採用・広報・営業資料の撮影とまとめて計画すると無駄が減ります。部署をまたいだ発注の組み立て方は年間で撮影を発注する企業のコスト最適化パターンに書きました。スタートアップの場合は部署が分かれていないぶん、まとめやすい立場にあります。
日本プロカメラマン手配の場合|調達フェーズの撮影枠の決め方と進め方
日本プロカメラマン手配は、企業専門のカメラマン手配サービスです。運営は株式会社ファーストブレイク(横浜市中区相生町3-60 泰生ビル308)で、私(代表・宮崎大地)は元カメラマンです。資金調達フェーズの撮影では、創業者・CxOの個人ポートレート、チームの集合、働く風景、オフィスの内外観を組み合わせることが多くなります。
基本料金は時間単位で、ハーフ(半日・4時間枠)が60,000円+税=66,000円、フル(1日・8時間枠)が120,000円+税=132,000円です。拘束時間はカメラマンの現地到着から撤収完了までで計測し、移動時間は課金しません。端数は30分単位で切り上げます。延長は30分ごと(切り上げ)7,800円+税=8,580円ですが、当日の延長はカメラマンのスケジュールによりお受けできない場合があります。
枠の判断は、人数ではなく撮る内容と場所の数で決まります。料金体系が拘束時間で決まるためで、少人数だから安くなる、大人数だから高くなるという計算ではありません。判断の目安を下の表にまとめました。
| 撮る内容 | 枠の目安 | 前提になる条件 |
|---|---|---|
| 創業メンバーの個人ポートレートのみ(同一拠点・背景1パターン) | ハーフ(半日・4時間枠)66,000円税込 | 撮影場所を1か所に固定し、順番に入れる時間割を組めること。ポートレートはハーフで最大20名が目安 |
| 個人ポートレート+チームの集合(同一拠点) | ハーフ(半日・4時間枠)66,000円税込 | 集合はセッティングが別に要るため、全員がそろう時間帯を1枠確保できること。カットの幅を広げたい場合はフルを選ぶ |
| 個人ポートレート+集合+働く風景・オフィス内外観 | フル(1日・8時間枠)132,000円税込 | オフィス内で移動が完結すること。人が動いている時間帯と、静かな時間帯を分けて押さえられること |
| オフィスと現場・店舗など拠点をまたぐ | 拠点ごとに枠を取る | 連続する日程での複数日発注は合計から一律10%オフ。日程が離れた飛び地の発注は対象外 |
| 白い背景で人物を切り抜ける状態にしたい | スタジオ利用を別途組む | カメラマン所有の白ホリスタジオは1時間20,000円+税=22,000円。外部のロケスタジオを使う場合は実費でお通しする |
| 登壇・ピッチイベント当日の記録 | イベントの所要時間に合わせて枠を決める | 当日限りで撮り直しがきかないため、進行表を事前に共有すること |
複数拠点をまわる場合の連日割について、条件を正確に書いておきます。割引の対象は連続する日程での複数日発注で、合計から一律10%オフです。日程が離れた複数回の発注(飛び地)は対象外になります。オフィスと現場を別の週に撮る予定なら、日程を寄せられるかどうかを先に検討してみてください。移動を伴う撮影では、日程を連続させるだけで交通費側も抑えられます。
予算を絞る必要がある場合は、押さえる順番を決めてください。最優先は創業者・CxOの個人ポートレートです。8つの面のほとんどで使われ、かつ差し替えのきかない面(リリース・メディア提供・受賞の掲載面)で求められるのがこのカットだからです。次がチームの集合、その次が働く風景とオフィス外観になります。働く風景は採用の立ち上げまで時間があるなら後に回せますが、個人ポートレートを後に回すと、公表の直前で選択肢がなくなります。
「今あるスナップで足りないか」というご質問もよくいただきます。面によります。ピッチデッキのチーム紹介やコーポレートサイトのように、自社で見せ方を決められる面は、手元の素材でしばらく回せます。難しいのは、こちらでレイアウトを決められない面です。媒体から比率を指定される、配信サービスのサムネイルで切られる、主催者のフォーマットに合わせて提出する。この3つでは、余白のない写真や、光の条件がばらばらな写真が使えません。判断の基準は写真の見栄えではなく、切り取りに耐えるかどうかです。
基本料金には、標準機材(カメラ・レンズ・簡易照明)、商用利用権、事前の撮影スロット作成、当日のディレクション、レタッチ、データ納品までが含まれます。交通費や外部レンタルのスタジオ代といった諸経費は実費でお通しし、運営会社の上乗せはありません。見積りの段階で総額をお出しするので、撮影後に別途の請求が出ることはありません。追加人員が要る場合は、進行アシスタントが+30,000円+税=33,000円、独立して同格に撮る2カメが+120,000円+税=132,000円、補助的に撮るサブカメが+80,000〜100,000円+税=88,000〜110,000円です。ヘアメイク・スタイリストの手配は別途見積りになります。
納期の目安は、少量(〜数十カット)が即日〜翌営業日、人数の多いポートレート(数十名〜)が5〜7営業日です。特急納品はオプションでお受けします。公表日が決まっている場合は、そこから逆算して撮影日をご提案します。レタッチは肌の質感・色温度・トリミングなどの基準を定めて運用しているため、後からメンバーを撮り足した場合でも、並べたときの見え方が揃います。メンバー一覧では、この揃い方がそのまま印象に出ます。
進め方は、打ち合わせ、撮影スロットと撮影条件の記録の作成、当日のディレクション、納品まで運営会社が一貫して担当します。カメラマンは全国厳選30名程度の登録者から、撮影の用途に合う人を選んでアサインします。オフィスが東京以外にある場合や、拠点が分かれている場合は、現地のカメラマンをアサインすることもできます。撮影費用を社内や株主に説明する材料が要る場合は社内の稟議を通すための「撮影費用」の説明の仕方を、依頼先の選び方で迷っている場合はカメラマン選びで失敗する企業に共通する7つのパターンをあわせてご覧ください。ご相談は見積りフォーム(https://photo-jellish.jp/business/contact/)またはメール(contact@firstbreak.jp)でお受けしています。
なお、上場を視野に入れた段階に進むと、写真の要件は開示物の制約に切り替わります。統合報告書・決算説明資料・IRサイトに載せる写真をどう設計するかはIR・決算資料に使う写真の考え方にまとめました。調達フェーズで撮影条件の記録を残しておくと、そのまま上場準備期の継続性にも使えます。
まとめ|調達フェーズの写真は「1回分の素材」ではなく「回る素材」として撮る
資金調達フェーズの写真は、ピッチ資料の1枚として撮ると足りなくなります。同じ素材が、ピッチデッキ、投資家向けの会社概要、コーポレートサイト、調達リリース、メディア提供、登壇者紹介、採用ページ、受賞の掲載面へ、短い期間に同時に回るためです。しかも、そのうち半分近くは差し替えがききません。
実務として先にやることは3つです。1つは、写真が載る面を書き出して締切を並べること。2つ目は、寄りと引き・余白・縦横比・時期の写り込み・個人カットの5点を条件として撮影に持ち込むこと。3つ目は、撮影条件を記録に残して、後から入った人を同条件で足せる状態にしておくことです。どれも撮影の腕とは関係のない、発注側の作業です。
そして撮影日は、公表日からではなく「公表の準備が始まる前」から逆算してください。写真の必要性に気づくのが工程の最後なのに、創業者の予定は最初に埋まる。この逆転を知っていれば、今回から順番を変えられます。調達のたびに写真で慌てる会社と、そうでない会社を分けているのは、素材の量でも撮影の予算でもなく、この順番です。
この記事の次に読むと、判断が一段進みます
- 創業者・CxOのポートレートそのものを詰めたいとき:社長・役員のプロフィール写真、失敗しないための全知識
- 上場を視野に入れて開示物の写真を考えるとき:IR・決算資料に使う写真の考え方
- 調達後の採用を写真で動かしたいとき:採用サイトの写真で、応募数は本当に変わるのか
- 社外に写真を渡す条件を整理したいとき:写真の「買い取り」「二次利用可」の意味
調達の公表時期が見えているなら、撮影日を押さえる相談だけでもお持ちください。写真を載せる予定の面、撮りたい人数、オフィスの場所と撮れる時間帯、公表の予定時期をお知らせいただければ、必要な枠、連日割の適用可否を含めた総額、いつまでに日程を決めるべきかを書き出してお送りします。撮影条件の記録がまだない場合は、今回の撮影で作るところから承ります。
よくある質問
資金調達の準備では、写真はいつ撮っておくべきですか
公表日が決まる前、条件の見通しが立った段階が現実的な目安です。調達リリースは公表日が決まってから解禁までの期間が短く、その時点では創業者の予定も埋まっているため、撮影日を差し込む余地がほとんど残りません。撮った写真はコーポレートサイト・採用ページ・登壇者紹介にもそのまま回るので、調達の結果が出る前でも使い道があります。判断の基準は「調達が決まったかどうか」ではなく「公表の準備が始まる前かどうか」です。
ピッチデッキ用とコーポレートサイト用で、写真は別々に撮る必要がありますか
多くは1回の撮影で共用できます。共用の条件は3つで、寄りと引きの両方を押さえること、上下左右に余白を残すこと、横位置と縦位置の両方を撮っておくことです。面ごとにトリミングの比率が違うため、余白がないと切ったときに頭が切れます。共用しにくいのは登壇・ピッチイベント当日の記録で、これはその場でしか撮れないため別の撮影として組み立てます。
メンバーが増えたとき、その人だけ撮り足せますか
前回の撮影条件が記録として残っていれば、その人だけ撮り足せます。分かれ目は、背景と人物の距離、光の方向と高さ、レンズの画角帯、カメラの高さ、立ち位置、トリミングの余白が書き残されているかどうかです。記録がない場合、写真のデータから読み取れるのは画角と背景の色のおおよそまでなので、新しく撮った人だけがメンバー一覧の中で浮きます。集合写真しか手元にない場合は、増減のたびに全員分の撮り直しになります。
メディアから「写真を送ってください」と言われたとき、どれを送ればよいですか
社外提供用の「正となる1枚」をあらかじめ決めておき、それを送るのが確実です。依頼のたびに選び直すと、媒体ごとに違う写真が出回ります。あわせて決めておくとよいのが、ファイル名の付け方(社名と氏名を入れる)、渡すサイズ(縮小版ではなく元のサイズ)、クレジット表記の要否、受け渡しの方法です。媒体からの依頼は当日か翌日を期限として来ることが多いため、置き場所が決まっているかどうかで対応の速さが変わります。
創業メンバーが2〜3人でも撮影を依頼できますか
依頼できます。日本プロカメラマン手配の料金は人数ではなく拘束時間で決まるため、少人数でも枠の考え方は同じです。基本料金はハーフ(半日・4時間枠)が66,000円税込、フル(1日・8時間枠)が132,000円税込で、標準機材と商用利用権が含まれます。少人数の場合は時間に余裕ができるので、個人ポートレートに加えて集合、働く風景、オフィス外観まで同じ枠で押さえておくと、その後の面に回せる素材が増えます。
