コーポレートサイトの写真を撮り直すかどうかは、前回の撮影から何年経ったかでは決まりません。判断材料になるのは、会社側に起きた変化です。役員の交代、オフィスの移転、CIの刷新など、7つのトリガーのどれかが立った時点が、更新を検討するタイミングです。
結論|撮り直しの判断は「経過年数」ではなく、会社側に起きた7つの変化で決める
WHEN TO REFRESH

広報のご担当者から「うちのサイトの写真、そろそろ古いですよね」というご相談をいただくことがあります。ただ、このご相談の多くは「古い気がする」という感覚のまま止まっています。感覚のままだと稟議書に書けません。書けないので、上長に相談する前の段階で先送りになります。そして翌年も同じ会話をします。
判断を動かすには、根拠を「時間」から「変化」に置き換えるのが早いです。写真が古く見える理由は、撮影日が遠いことそのものではありません。写真が写している会社と、いまの会社がずれていることです。ずれていなければ5年前の写真でも通用しますし、ずれていれば去年撮った写真でも差し替えの対象になります。
この記事では、そのずれを7つのトリガーに分けて並べます。トリガーごとに「何が問題になるか」「撮り直す範囲はどこまでか」「急ぎ度はどれくらいか」を表で持たせました。そのうえで、全面撮り直し・部分差し替え・今回は見送りの3段階の切り分け方、撮影を発注する前にやる写真の棚卸しの手順、今期に予算化すべきかを判定するチェックリストまで書きます。
先に、この記事が扱う範囲をはっきりさせておきます。ここで書くのは「撮影そのものは成功していたのに、会社側が変わったので更新する」ケースだけです。撮影が想定どおりにいかず、その結果として撮り直しになったケースは、原因も対処も別物になります。そちらは撮り直しになった企業の実例と、その原因分析にまとめています。いま手元にある写真の出来に不満があるなら、この記事より先にそちらをご覧ください。
もう一点、この記事は採用サイトの写真の話でもありません。採用サイトの写真が応募にどう影響するかという論点は採用サイトの写真で、応募数は本当に変わるのかで扱っています。ここで扱うのは、広報部が持っているコーポレートサイト、つまり会社案内・対外的な事業説明・営業資料やプレスリリースにも流用される写真です。同じ社屋を撮った写真でも、使う部署と用途が違えば、更新すべきタイミングも変わります。
コーポレートサイトの写真を撮り直す7つのトリガー
コーポレートサイトの写真を撮り直すトリガーは7つです。経営体制・役員の交代、オフィスの移転や改装、ロゴやCI・ブランドガイドラインの刷新、事業内容や主力サービスの変更、サイトのリニューアルやデザイン刷新、写真の出どころがバラバラになったこと、そして服装・什器・機材・掲示物が時代とずれたこと。このうち1つでも立っていれば、更新を検討する理由になります。
7つに共通しているのは、どれも「会社側で起きた事実」だという点です。誰が見ても日付が特定できる出来事なので、稟議書にそのまま書けます。「写真が古いので撮り直したい」は感覚ですが、「4月付で役員が2名交代したため、役員紹介ページの写真を差し替えたい」は事実です。この違いが、予算化できるかどうかを分けます。
| トリガー | 何が問題になるか | 撮り直す範囲 | 急ぎ度 |
|---|---|---|---|
| 1. 経営体制・役員の交代 | 役員一覧に在籍していない人の写真が残る。新任者だけ別の日・別の光で撮った写真が並び、一覧としての見え方が揃わない | 部分差し替え(役員ポートレートを一覧単位で。1人分だけ足すのではなく並びで判断する) | 高(就任の公表日が締切になる) |
| 2. オフィスの移転・改装 | サイトに載っている外観・エントランス・執務風景・会議室が現存しない。来訪者や求職者が現地で見る景色と一致しない | 全面撮り直し(外観・内観・職場風景・集合写真) | 高(移転の告知と同時に出すのが最も無駄がない) |
| 3. ロゴ・CI・ブランドガイドラインの刷新 | 写真の中に旧ロゴが写り込む(サイン・名刺・封筒・什器・社員証・PCの壁紙)。写真の色調が新しいガイドラインの指定と合わない | 全面撮り直し(旧ロゴが写るカット)。写り込みが限定的なら部分差し替え | 高(新CIの公表日が締切になる) |
| 4. 事業内容・主力サービスの変更 | テキストで説明している事業と、写真が示している仕事が食い違う。撤退した事業の現場写真が残り続ける | 部分差し替え(事業紹介・サービス紹介ページのカット) | 中 |
| 5. サイトのリニューアル・デザイン刷新 | 新デザインの縦横比やトリミング位置に既存写真が収まらない。フルワイドのメインビジュアルに解像度や引きが足りない | 全面撮り直し(少なくともキービジュアルと主要ページのカット) | 高(デザイン確定前に決めないと手戻りになる) |
| 6. 写真の出どころがバラバラになった | 社員のスマートフォン・フリー素材・過去の外注が混在し、撮影者と利用許諾の範囲が分からないカットがある。営業資料やプレスに転用してよいか判断できない | 部分差し替え(出どころが確認できないカットから優先) | 中(ただし利用条件が不明なカットは高) |
| 7. 服装・什器・機材・掲示物が時代とずれた | 写り込んでいるPC・電話機・掲示物・服装から撮影年が推測される。取引先や求職者に「動きが止まっている会社」と読まれる | 部分差し替え(気になったカットから。全面は不要なことが多い) | 低〜中 |
この表の使い方は単純です。自社に立っているトリガーに印をつけて、その行の「撮り直す範囲」を見てください。範囲の欄に「全面撮り直し」が1つでも入っていれば、部分差し替えでしのぐより、一度まとめて撮ったほうが結果的に早く終わります。逆に、印がついた行がすべて「部分差し替え」なら、今回は必要なところだけで足ります。
トリガー1|経営体制・役員の交代
役員が交代したら、役員紹介ページの写真は差し替えます。ここまでは誰でも判断できます。判断が分かれるのは、交代した人の分だけを撮り足せばよいのか、役員一覧をまとめて撮り直すのかというところです。答えは、既存の写真の撮影条件を再現できるかどうかで決まります。
役員のポートレートは、一覧に並んだ状態で見られます。1枚ずつ見れば違和感がなくても、並べると背景の明るさ、顔の大きさ、目線の高さ、影の落ち方の違いが目立ちます。新任の1人だけを別の日に、別の場所で、別のカメラマンが撮ると、その1人だけが浮きます。私は元カメラマンとして役員のポートレートを撮っていた頃から、この「1人だけ画角と光が違う」状態を何度も見てきました。写真の出来の問題ではなく、揃っていないことが目に付くのです。
再現できるかどうかの判断材料は、前回の撮影記録が残っているかです。撮影場所、背景、レンズ、照明の位置、服装の指定。これが残っていれば、1人分の撮り足しで揃えられます。残っていなければ、一覧単位で撮り直したほうが確実です。役員のポートレートそのものの作り方は社長・役員のプロフィール写真、失敗しないための全知識に書きました。
トリガー2|オフィスの移転・改装
オフィスを移転したら、サイトに載っているオフィス関連の写真はすべて使えなくなります。これは7つのトリガーの中で最も分かりやすく、迷いようがありません。問題は、どこまでが「オフィス関連の写真」なのかを見落としやすいことです。
外観とエントランスは誰でも気づきます。見落とされやすいのは、背景に旧オフィスが写っている写真です。会議室で撮った打ち合わせのカット、執務席で撮った社員の写真、窓際で撮った代表のポートレート、応接室で撮った対談。これらは主題がオフィスではないので、移転のチェックリストから漏れます。そして新オフィスに来た取引先や求職者が、サイトで見た景色と違うことに気づきます。
移転を控えている場合、撮影のタイミングは「引っ越し直後」ではなく「片付いた直後」です。移転当日から数日は段ボールと配線が残っていて、撮っても使えません。逆に数か月経つと、机の上に書類と私物が積まれて、片付けに時間がかかります。実務的には、什器が入って社員が動き始めてから2〜3週間あたりが撮りやすい状態です。
トリガー3|ロゴ・CI・ブランドガイドラインの刷新
ロゴやCIを刷新したら、旧ロゴが写り込んでいる写真は差し替えの対象になります。写真の中の小さなロゴは、デザインの差し替え作業では拾いきれません。サイトの画像を新しいロゴに置き換えても、写真の中に旧ロゴが残っていれば、そのページは新旧が混ざった状態になります。
旧ロゴが写り込む場所は決まっています。エントランスのサイン、受付の背面、会議室の壁、名刺、封筒、社員証、ノベルティ、PCの壁紙、社用車、作業着や制服の胸元。ブランドの刷新プロジェクトでは、これらの物理的な入れ替えのスケジュールが引かれているはずなので、そのスケジュールを写真の撮影日と突き合わせます。サインの掛け替えより前に撮ると、撮った写真がその日から使えません。
色調のずれも見落とされやすい点です。新しいブランドガイドラインで写真のトーンが指定されている場合、既存の写真は指定に合っていません。彩度、コントラスト、色温度の方向が違うと、新しいデザインの中に置いたときに写真だけが古い印象になります。ガイドラインに写真の指定がある場合は、そのページを撮影の依頼時に共有してください。撮影とレタッチの両方に効きます。
トリガー4|事業内容・主力サービスの変更
事業内容や主力サービスが変わったら、事業紹介ページの写真は説明文より先にずれます。文章は書き換えれば済みますが、写真は撮り直さないと変わりません。結果として、テキストでは新しい事業を語っているのに、写真は前の事業の現場を写している、という状態が残ります。
トリガー5|サイトのリニューアル・デザイン刷新
サイトのリニューアルは、写真の撮り直しを検討する最も強いタイミングです。理由は印象の問題ではなく、寸法の問題です。新しいデザインが要求する縦横比、トリミング位置、解像度に、既存の写真が物理的に収まらないことが多いからです。
よく起きるのは、フルワイドのメインビジュアルです。画面の横幅いっぱいに写真を敷くデザインでは、横に長い比率で切り出すことになります。もともと縦位置で撮った写真や、被写体が画面いっぱいに写っている写真は、切り出すと成立しません。人物の頭が切れる、必要な要素が枠外に出る、引きが足りずに解像度が持たない。デザインが上がってから写真を当てはめる段階で、この問題が一斉に出ます。
順番としては、デザインの方向と主要ページの写真の使い方が固まってから撮影日を決めるのが合理的です。ただし、撮影の枠は先に押さえておいてください。デザイン確定を待ってから撮影の相談を始めると、撮影日・レタッチ・サイトへの実装で、公開日に間に合わなくなることがあります。デザイン確定前でも「この時期にこの規模で撮る」という枠だけは動かせます。
トリガー6|写真の出どころがバラバラになった
サイトの写真が、社員のスマートフォンで撮ったもの、フリー素材、過去に外注したもの、制作会社が用意したもので混ざっている状態は、更新を検討するトリガーです。見た目が揃わないという問題もありますが、実務でより重いのは、どのカットをどこまで使ってよいかを判断できなくなることです。
私が撮影のご相談をいただく場面で、いちばんよく出てくる言葉があります。「この写真、いつ誰が撮ったのか分からないんです」。悪気があって分からないのではなく、引き継ぎの資料に写真の出どころを書く欄がなかっただけです。そして分からないカットは、営業資料に転用してよいか、プレスリリースに添付してよいか、その場で判断できません。判断できないから使わない、という運用になり、せっかくある写真が動かなくなります。
トリガー7|服装・什器・機材・掲示物が時代とずれた
写真の中に写り込んでいる物から撮影年が推測できるようになったら、部分差し替えを検討するタイミングです。人物の服装や髪型よりも、実際に年代を伝えてしまうのは背景の物のほうです。
具体的には、デスクの上のPCとディスプレイ、固定電話機、壁の掲示物やカレンダー、会議室のホワイトボードとプロジェクター、書類の積み方、椅子のデザインあたりです。オンライン会議が日常になった前後で、会議室の写り方も変わりました。誰も座っていない席にモニターとカメラが並んでいるか、全員が同じ部屋で紙を見ているかで、読み手が受け取る時代の印象が変わります。
ただし、このトリガーだけで全面撮り直しに踏み切る必要はありません。急ぎ度が「低〜中」なのはそのためです。他のトリガーが立って撮影する機会ができたときに、気になっていたカットを撮影リストに足せば十分回収できます。逆に言えば、このトリガーしか立っていない状態で予算を取りにいくのは、社内の説得がいちばん難しいパターンです。
「何年で撮り直すか」に年数で答えない理由
「コーポレートサイトの写真は何年で撮り直すべきですか」というご質問には、年数ではお答えしていません。会社ごとに変化のスピードが違うので、一律の年数を出しても判断の役に立たないからです。3年で総入れ替えが必要になる会社もあれば、7年前の写真がいまも成立している会社もあります。
年数を基準にすると、2つの間違いが起きます。ひとつは、まだ使える写真を撮り直してしまうこと。もうひとつは、年数に達していないという理由で、明らかにずれている写真を放置してしまうことです。移転した翌月に「前回の撮影から2年しか経っていないので来期に」と判断してしまうのは、後者の典型です。
そのうえで、年数がまったく無意味かというとそうではありません。年数は「棚卸しのきっかけ」としては役に立ちます。前回の撮影から一定の期間が経ったら、撮り直すかどうかではなく、いまサイトで使っている写真がどうなっているかを一度点検する。点検した結果、7つのトリガーが1本も立っていなければ、そのまま使い続ければよいという判断になります。
年数の扱いについて
この記事では「何年経ったら撮り直す」という基準は示しません。写真の耐用年数に関する統計を当メディアは持っておらず、平均的な年数を出しても、それらしいだけの数字になるからです。年数は撮り直しの根拠ではなく、点検を始めるきっかけとして使ってください。実務的には、サイトの改修や会社案内の改訂といった既存の定期作業に、写真の点検を1工程として足しておくのが続きます。
撮り直す範囲を3段階で切り分ける
撮り直すと決めたあとの判断は、全面撮り直し・部分差し替え・今回は見送りの3段階に分かれます。トリガーが立っていても、全部撮り直す必要はありません。範囲を先に決めておかないと、見積りを取る段階で条件が定まらず、金額の比較もできなくなります。
| 判断 | 当てはまる状態 | 進め方 | 撮影枠の目安 |
|---|---|---|---|
| 全面撮り直し | 移転・改装、CIの刷新、サイトのリニューアルのいずれかが確定していて、既存カットの大半が使えなくなる。あるいはトリガーが3本以上同時に立っている | 用途別に必要カットを洗い出し、1日にまとめて撮る。撮影当日の進行表を先に作る | フル(1日・8時間枠) |
| 部分差し替え | 使えなくなるのが特定のページ・特定の人物に限られ、他のカットは撮影条件が揃っている | 差し替える範囲と、既存カットと見え方を揃えるための条件(背景・光・画角・服装)を先に決める | ハーフ(半日・4時間枠) |
| 今回は見送り | 気になっているのが「なんとなく古い」だけで、会社側に変化が起きていない。トリガーが0〜1本 | 棚卸しだけ先にやり、出どころと利用条件を記録しておく。次の変化が起きたときにすぐ動ける状態にする | 撮影費用は発生しない |
撮影枠の目安は、あくまで目安です。実際の枠は、拠点数、被写体になる人数、移動の有無で決まります。1つのオフィスで役員のポートレートと職場風景を撮るならハーフで収まることが多く、複数拠点をまわる場合や、集合写真と個人写真と職場風景をすべて1日で押さえる場合はフルになります。判断がつかない場合は、撮りたいものの一覧を出していただければ、こちらで枠を計算してお返しします。
3段階のうち、いちばん書かれないのが「今回は見送り」です。撮影を手配する側が「今回は撮らなくていいです」と書くのは商売として不利ですが、書かないと信用されないとも思っています。会社側に変化が起きていない状態で撮り直しても、新しい写真は前の写真とほぼ同じ内容になります。同じ人が同じ場所で同じ服装で写っている写真が1組増えるだけです。
撮影を発注する前にやる、写真の棚卸し5ステップ
撮影を発注する前に、いまサイトで使っている写真の棚卸しをします。所要は規模によりますが、ページ数が数十のコーポレートサイトなら半日から1日の作業です。この工程を飛ばして撮影の相談を始めると、撮影日が決まってから「あのページの写真も要る」が次々に出てきます。
いま使っている写真を1枚残らず一覧にする
サイトの全ページを開いて、使われている写真をページ単位で書き出します。表計算ソフトで「ページURL/写真の内容/ファイル名/掲載位置」の4列があれば足ります。コーポレートサイトだけでなく、会社案内PDF、営業資料のテンプレート、プレスリリースの定型素材も対象に入れてください。同じ写真が複数の場所で使われていることが多く、差し替えの影響範囲はここで分かります。
出どころと利用許諾の範囲を1枚ずつ確認する
一覧に「撮影者/撮影時期/利用条件」の3列を足して、分かる範囲で埋めます。ここで多くの企業が、埋められない行が想像より多いことに気づきます。分からない行には「不明」と書いてください。空欄のままにすると、あとから見たときに未確認なのか確認済みで問題なしなのかが判別できなくなります。この工程の目的は、権利を確定させることではなく、確認が必要な写真を可視化することです。
用途別に分類する
一覧の各行を、コーポレートサイト・採用・営業資料・プレスリリース・社内報のどれで使っているかで分類します。1枚が複数の用途で使われている場合は、すべての用途に印をつけてください。用途が多い写真ほど、差し替えたときの効果が大きく、放置したときの影響も大きくなります。撮影の優先順位は、この印の数でだいたい決まります。
使えないカットと不足しているカットを特定する
一覧の各行に、7つのトリガーのどれが当たっているかを書き込みます。トリガーが当たっている行が「使えないカット」です。あわせて、いま素材がなくて困っている場面も書き出します。縦位置のポートレートがない、引きのオフィスカットがない、横長に切り出せる写真がない、といった不足はここで初めて言語化されます。使えないカットと不足カットを合わせたものが、次の撮影で撮るべきリストになります。
撮影の設計に落とす
撮るべきリストを、撮影の設計に変換します。決めるのは、必要なカットの内容と点数、撮影場所、被写体になる人と人数、その人たちが動ける時間帯、そして納品の期日です。ここまで決まれば、撮影に必要な枠が計算できます。設計まで自社で作るのが難しい場合は、リストの段階でご相談いただければ、こちらで撮影スロット(時間割)に落とし込みます。
この5ステップで手が止まりやすいのは、STEP2です。実務でよくあるのは、写真の出どころ(撮影者・利用許諾の範囲)が分からないカットが一定数混ざっているケースです。前任者が用意した写真、制作会社が入れた写真、どこかからコピーされてきた写真。契約書やメールを探せば出てくることもありますが、探しても見つからないことのほうが多いのが実情です。
出どころが分からない写真の扱いについて
利用条件が確認できない写真を使い続けてよいかどうかは、契約の内容と個別の事情によります。この記事で法的な判断を示すことはできませんので、自社の法務部門または顧問弁護士にご確認ください。実務の進め方としては、確認できない写真を「差し替えの優先対象」として撮影リストに入れてしまうのが早いことが多いです。確認の作業を続けるより、新しく撮って権利関係をはっきりさせたほうが、結果的に時間がかからないためです。
権利まわりの考え方は、記事を分けて書いています。撮影データの著作権が誰のものになるのかという基本は撮影データの著作権は誰のものかを、見積書や契約書に出てくる「買い取り」「二次利用可」という言葉が実際に何を指しているのかは写真の「買い取り」「二次利用可」の意味をご覧ください。棚卸しのSTEP2で「不明」と書いた行を減らすには、次の撮影の発注条件を先に整えるのが確実です。
STEP5で撮影の設計に落とすときに、発注条件として何を確認しておくべきかは撮影を外注する前に確認すべきチェックリスト20項目にまとめました。棚卸しの結果を持ったままこのチェックリストを通すと、見積り依頼の文面がほぼそのまま出来上がります。
撮影の見積りは、内訳つきで無料です
用途・日程・場所をお知らせいただければ、拘束時間と人員の内訳が分かる見積りをお送りします。料金はハーフ(4時間枠)66,000円・フル(8時間枠)132,000円(税込)です。
今期に予算化すべきかを判定するチェックリスト
今期の予算に載せるかどうかは、次の12項目で判定できます。3つ以上当てはまるなら、今期の予算化を検討する段階です。5つ以上なら、来期に回すと公表日のある案件に間に合わなくなる可能性が高くなります。0〜2項目なら、棚卸しだけ先にやって見送るという判断が合理的です。
- 今期または来期に、役員の交代または増員が予定されている
- サイトの役員紹介ページに、すでに在籍していない人の写真が残っている
- オフィスの移転または改装が決まっている、あるいは1年以内に実施した
- ロゴ・CI・ブランドガイドラインの刷新が動いている、あるいは刷新済みで写真が旧のまま
- サイトに載っている写真の中に、旧ロゴ(サイン・名刺・封筒・社員証・什器)が写り込んでいる
- 主力サービスや事業内容が変わり、事業紹介ページの写真が説明文と合っていない
- サイトのリニューアルまたはデザイン刷新が今期の計画に入っている
- フルワイドのメインビジュアルに使える、横に長く切り出せる引きの写真がない
- サイトの写真に、社員のスマートフォンで撮ったものとフリー素材と外注が混ざっている
- 誰がいつ撮ったのか分からない写真が、サイトまたは会社案内に載っている
- 営業資料やプレスリリースに使いたい写真があるのに、使ってよいか判断できず止まっている
- 写真に写り込んでいるPC・電話機・掲示物・服装が、いまの職場の様子と食い違っている
数え方で1点だけ補足します。上から5つ目までの項目は、当てはまった時点で社外への公表日が決まっていることが多く、他の項目より重く見てください。そして、当てはまった項目はそのまま稟議書の「背景」の欄に転記できる書き方にしてあります。感覚ではなく、会社側に起きた事実を並べる。この形にしておくと、上長からの「今じゃないといけない理由は」という質問に、その場で答えられます。
チェックが3つ以上ついた場合は、いまサイトで使っている写真の一覧と、当てはまった項目をお送りいただければ、撮り直す範囲が全面なのか部分なのか、必要な撮影枠はどれくらいかを整理してお返しします。撮影する前の段階のご相談で構いません。棚卸しの途中でも、途中までの一覧で判断できます。
撮り直しを1回で終わらせるための設計
撮り直しを1回で終わらせるには、撮影日を決める前に、用途別の必要カットを洗い出しておきます。コーポレートサイト用に撮った写真は、そのまま営業資料、採用資料、プレスリリース、社内報、IR的な対外説明の資料に流用されます。流用先を先に把握しておけば、同じ日に必要なカットをまとめて押さえられます。
逆に、コーポレートサイトのことだけを考えて撮ると、半年後に営業部から「提案書に使える横位置の写真がほしい」、人事部から「採用ページ用に社員の写真がほしい」と別々に相談が来ます。そのたびに撮影を手配することになり、写真の見え方も回ごとに変わります。1回にまとめられなかったコストは、撮影費だけでなく、担当者の手配の手間としても効いてきます。
| 用途 | よく必要になるカット | 同じ日に一緒に押さえておくと効くこと |
|---|---|---|
| コーポレートサイト | 代表・役員のポートレート/社屋の外観とエントランス/執務風景/会議のシーン/受付や応接 | デザイン変更に備えて、同じ場面を寄りと引きの両方で押さえる。横に長く切り出せる引きのカットを主要な場面ごとに1枚ずつ確保する |
| 採用サイト・採用資料 | 社員の個人写真と集合写真/職場の様子/面談や打ち合わせのシーン/若手と管理職の両方 | 同じ人物で表情と目線のバリエーションを分けて撮る。人物の背景に空きを作り、テキストを載せられる余白を残す |
| 営業資料・提案書 | 商談風景/製品や設備/担当者の顔写真/会社の全体像が伝わる引き | スライドに置く前提で、被写体を中央に寄せすぎず余白のある構図を残す。白背景に近い明るい場面を1組作っておく |
| プレスリリース・メディア対応 | 代表のポートレート(横位置・縦位置の両方)/製品カット/社名やロゴが自然に入る引きの絵 | 媒体側が自由に切り抜く前提で、上下左右に余白を持たせる。使用許諾を出せる状態にしておく |
| 社内報・周年・記念資料 | 部署ごとの集合写真/全社の集合写真/日常業務のスナップ | 人数が揃う日を先に押さえる。全社の集合は撮影日の中で最初か最後に置き、待ち時間を作らない |
撮影を年に複数回に分けるか、1回にまとめるかという判断は、部署をまたいだ発注の設計そのものです。年間で複数回の撮影がある会社がどう組み立てるとよいかは年間で撮影を発注する企業のコスト最適化パターンに書きました。撮り直しをきっかけに、翌年以降の撮影の持ち方まで決めてしまうと、以後の稟議が軽くなります。
もう1つ、1回で終わらせるために効くのが撮影スロット(時間割)です。何時に誰が来て、どのカットをどの順で撮るかを事前に決めておくと、同じ枠で撮れる量が変わります。特に人物が多い撮影では、被写体の呼び出しが滞った時間がそのまま撮影可能なカット数を削ります。日本プロカメラマン手配では、この撮影スロットの作成を運営会社側で担当しています。
依頼先の選び方そのもので迷っている場合は、カメラマン選びで失敗する企業に共通する7つのパターンもあわせてご覧ください。更新の撮影は、既存の写真と並べたときに違和感が出ないことが条件になるため、作品性より再現性で選ぶ判断が要ります。
日本プロカメラマン手配の場合|更新撮影の進め方
日本プロカメラマン手配は、企業専門のカメラマン手配サービスです。運営は株式会社ファーストブレイク(横浜市中区相生町3-60 泰生ビル308)で、私(代表・宮崎大地)は元カメラマンです。コーポレートサイトの更新撮影では、オフィス・施設・職場風景の撮影と、役員・社員のプロフィール撮影を同じ日に組み合わせることが多くなります。
基本料金は時間単位で、ハーフ(半日・4時間枠)が60,000円+税=66,000円、フル(1日・8時間枠)が120,000円+税=132,000円です。この金額に、標準機材(カメラ・レンズ・簡易照明)、商用利用権、事前の撮影スロット作成、当日のディレクション、レタッチ、データ納品までが含まれます。交通費や外部レンタルのスタジオ代といった諸経費は実費でお通しし、運営会社の上乗せはありません。
商用利用権が基本料金に含まれているのは、コーポレートサイトの写真では特に効きます。撮った写真をサイトだけでなく、営業資料、採用資料、社内報、SNS、印刷物といった企業の業務用途に使う場合でも、追加料金は発生しません。棚卸しのSTEP2で「不明」と書く行を、次の撮影から作らないための設計でもあります。
納期の目安は、少量(〜数十カット)が即日〜翌営業日、大量ポートレート(数十名〜)が5〜7営業日です。特急納品はオプションでお受けします。サイトの公開日が決まっている場合は、公開日から逆算して撮影日をご提案します。レタッチは肌の質感・色温度・トリミングなどの基準を定めて運用しているため、複数回に分けて撮った場合でも、並べたときの見え方が揃います。
進め方は、打ち合わせ、撮影スロットの作成、当日のディレクション、納品まで運営会社が一貫して担当します。カメラマンは全国厳選30名程度の登録者から、撮影の用途に合う人を選んでアサインします。複数拠点をまわる場合や、遠方の拠点を撮る場合は、現地のカメラマンをアサインすることもできます。ご相談は見積りフォーム(https://photo-jellish.jp/business/contact/)またはメール(contact@firstbreak.jp)でお受けしています。
稟議に出すときの言い方
稟議を通すときは、感覚を表す言葉を、会社側に起きた事実に置き換えます。「写真が古い」は評価ですが、「4月付で役員が2名交代した」は事実です。決裁者は評価には反論できますが、事実には反論できません。下の表は、よく使われる感覚語を、そのまま稟議書に書ける形へ言い換えたものです。
| 言いがちな書き方(感覚) | 稟議書に書ける形(事実と影響) |
|---|---|
| サイトの写真が古いので新しくしたい | ◯月◯日付の役員交代により、役員紹介ページの写真2点が現在の体制と一致していない。就任の対外公表日までに差し替えが必要 |
| 移転したので写真も変えたい | ◯月の本社移転により、サイト掲載中の写真◯点(外観・エントランス・執務風景・会議室)が現存しない施設を写している。移転告知と同時に差し替える |
| ロゴが変わったので撮り直したい | 新CIの公表日は◯月◯日。サイト掲載中の写真◯点に旧ロゴの写り込みがあり、公表日以降は新旧が混在した状態になる |
| 写真がバラバラなので統一したい | サイト掲載写真◯点のうち◯点は撮影者と利用条件が記録として残っていない。営業資料・プレスへの転用可否を都度判断できず、素材が使えない状態にある |
| サイトのリニューアルに合わせて撮りたい | 新デザインのメインビジュアルは横◯:縦◯の比率で切り出す仕様。既存写真は縦位置または寄りの構図が中心で、切り出しに耐えるカットが◯点しかない |
右の列の「◯点」という数字は、棚卸しの一覧から出てきます。棚卸しをやる実務上の理由の半分は、この数字を作るためだと言ってもいいくらいです。「多い」「かなりある」ではなく「12点」と書けると、決裁の場での質問がほとんど出なくなります。
もうひとつ、稟議書に入れておくと効くのが「今回撮らないもの」です。全部を撮り直すのではなく、範囲を絞ったうえで、絞った理由を書く。決裁者から見ると、要求額の妥当性より、要求の設計がされているかどうかのほうが判断しやすいからです。撮影費用そのものの説明の組み立て方は社内の稟議を通すための「撮影費用」の説明の仕方にまとめました。
まとめ|変化が起きた日が、写真を見直す日
コーポレートサイトの写真を撮り直すタイミングは、経過年数ではなく、会社側に起きた変化で決まります。役員の交代、オフィスの移転や改装、CIの刷新、事業内容の変更、サイトのリニューアル、写真の出どころの散逸、そして写り込んだ物と現状のずれ。この7つのどれかが立った日が、写真を見直す日です。
そして、変化が起きても全部を撮り直す必要はありません。全面撮り直しが要るのは、移転・CI刷新・サイトリニューアルのように既存カットの大半が使えなくなる場合か、トリガーが3本以上同時に立った場合です。それ以外は部分差し替えで足ります。トリガーが0〜1本なら、棚卸しだけやって見送るのが合理的な判断です。
いま動くかどうかを迷っているなら、撮影の見積りを取る前に、写真の棚卸しから始めてください。一覧を作って、出どころを埋めて、用途で分類して、使えないカットに印をつける。この作業が終わった時点で、撮るかどうかも、撮る範囲も、稟議書に書く数字も、ほとんど自動的に決まります。撮らないという結論になったとしても、その一覧は次の変化が起きたときにそのまま使えます。
この記事の次に読むと、判断が一段進みます
- いまの写真の出来そのものに不満があるとき:撮り直しになった企業の実例と、その原因分析
- 撮ると決めて、社内で予算を取りにいくとき:社内の稟議を通すための「撮影費用」の説明の仕方
- 既存写真の権利関係を整理したいとき:撮影データの著作権は誰のものか
- 来年以降の撮影の持ち方まで決めたいとき:年間で撮影を発注する企業のコスト最適化パターン
棚卸しの一覧ができたら、撮る範囲と枠の相談だけでもお持ちください。撮影したい場所、被写体になる人数、写真を使いたい媒体、公開の期日をお知らせいただければ、ハーフとフルのどちらの枠が必要か、諸経費がいくらになるかまで書き出してお送りします。今回は見送りという結論になりそうな場合も、その前提でご相談いただいて構いません。
よくある質問
コーポレートサイトの写真は何年で撮り直すべきですか
年数では判断していません。判断材料になるのは、会社側に起きた変化です。役員の交代、オフィスの移転や改装、ロゴ・CIの刷新、事業内容の変更、サイトのリニューアル、写真の出どころが分からなくなったこと、写り込んだ什器や掲示物が現状と食い違ったこと。この7つのどれかが立った時点が更新を検討するタイミングです。年数は撮り直しの根拠ではなく、いま使っている写真を点検するきっかけとして使ってください。
サイトの写真は全部撮り直さないといけませんか
全部を撮り直す必要はありません。判断は全面撮り直し・部分差し替え・今回は見送りの3段階です。全面が必要なのは、移転や改装、CIの刷新、サイトのリニューアルのように既存カットの大半が使えなくなる場合か、トリガーが3本以上同時に立っている場合です。使えなくなるのが特定のページや特定の人物に限られるなら部分差し替えで足ります。会社側に変化が起きていないなら、棚卸しだけ先にやって見送るという判断も合理的です。
役員が1人だけ交代したとき、その人だけ撮り直せばよいですか
既存の撮影条件を再現できるなら1人分で足ります。判断の分かれ目は、前回の撮影記録(撮影場所・背景・レンズ・照明の位置・服装の指定)が残っているかどうかです。役員のポートレートは一覧に並べた状態で見られるため、新任者だけを別の日・別の場所で撮ると、背景の明るさや顔の大きさ、影の落ち方の違いでその1人だけが浮きます。記録が残っていない場合は、役員一覧をまとめて撮り直したほうが確実です。
サイトのリニューアルと写真の撮影は、どちらを先に決めるべきですか
撮影の内容はデザインが固まってから決め、撮影の枠だけは先に押さえてください。新デザインが要求する縦横比やトリミング位置が決まらないと、必要なカットの構図が決まらないためです。一方で、デザイン確定を待ってから撮影の相談を始めると、撮影日・レタッチ・サイトへの実装が公開日に間に合わなくなることがあります。制作会社に依頼している場合は、写真が制作費に含まれるのか支給素材の前提なのかも、早い段階で確認しておくと手戻りが減ります。
昔の写真の撮影者が分からない場合、そのまま使い続けてよいですか
利用条件が確認できない写真を使い続けてよいかどうかは、契約の内容と個別の事情によります。この記事で法的な判断はお示しできませんので、自社の法務部門または顧問弁護士にご確認ください。実務の進め方としては、確認できない写真を差し替えの優先対象として撮影リストに入れてしまうほうが早いことが多いです。日本プロカメラマン手配では商用利用権を基本料金に含めているため、新しく撮ったカットについては、サイト・営業資料・採用資料・社内報・印刷物といった業務用途で追加料金なく使えます。
