モデルリリース(肖像権同意書)を用意するのは、写真を使う側、つまり発注企業です。同意を求める相手はカメラマンではなく、写真を掲載する会社だからです。どこまで使うかを決められるのも発注企業側です。カメラマンが撮影当日に持参する書面ではありません。
結論|モデルリリースは、写真を使う側が用意するのが基本
MODEL RELEASE OWNERSHIP

撮影の見積りを取っている段階で「同意書はそちらでご用意いただけますか」と聞かれ、答えに詰まる担当者は少なくありません。答えは、発注企業が用意する、が基本になります。理由は単純で、同意書は「この写真を、こう使わせてください」と被写体にお願いする書面だからです。使い方を決めているのは撮影者ではなく、採用サイトや社内報にその写真を載せる会社のほうです。
カメラマンは、指定された場所で、指定された人を、指定されたカットで撮ります。その写真をいつまで、どの媒体で、どこまで加工して使うのかを決める立場にはありません。決められない人が作った同意書は、肝心の利用範囲が空欄のまま社内を回ることになります。書式の見た目は整っているのに、後から読むと何に同意したのか分からない。この状態がいちばん困ります。
この記事は、社員や顧客が写る撮影を発注することになった広報・人事・総務の担当者に向けて書いています。整理するのは4つです。同意書は要るのか。誰が用意するのか。何を書けばよいのか。当日どう集めるのか。この順番で見ていきます。
なお、以下は法令の条文と撮影実務の整理です。自社のケースでどこまでの同意が要るか、どの書き方が適切かは、被写体との関係や写真の使い道によって変わります。実際の書面の文言と個別の当てはめについては、社内の法務部門または顧問弁護士にご確認ください。
モデルリリース(肖像権同意書)とは何か|法律に名前のない実務上の書面
モデルリリースとは、被写体から撮影と写真の利用について同意を得る書面のことです。ただしこれは法律上の名称ではなく、撮影業界の実務上の呼び名です。「モデルリリース」という言葉を法令の中から探しても出てきません。
さらに踏み込むと、肖像権を直接定めた条文も日本の法律には存在しません。肖像権は、明文の規定がないまま、裁判例の積み重ねによって人格的な利益として保護されてきた権利です。だから「肖像権法の第◯条にこう書いてある」という説明はできませんし、そう書いてある解説を見かけたら、そこは一度立ち止まったほうがよいところです。この記事でも、肖像権に条文番号を付けることはしません。
名前も条文もないということは、決まった様式もないということです。役所に届け出る書式があるわけではありません。A4一枚の紙でも、社内の申請フォームでも、電子的な同意記録でも構いません。大事なのは体裁ではなく、誰が、何に、どこまで同意したのかが、後から読み取れることです。
では、明文がないのに、なぜ同意書を作るのか。撮られた本人が「そんな使い方をされるとは思っていなかった」と感じたときに、話し合いの出発点になる記録がないと、公開を止める・差し替えるという判断を後追いでやることになるからです。同意書は権利を主張するための武器ではなく、撮る側と撮られる側の認識をそろえておくための記録だと考えてください。
同意書があっても、著作権の話は片づいていません
被写体の同意(肖像権まわり)と、写真そのものの権利(著作権)は別の問題です。社員から同意書をもらっていても、その写真を印刷物に使えるかどうかはカメラマンとの契約で決まります。著作権が誰のものになるのかは撮影データの著作権は誰のものか|企業が誤解している3点、見積書の「買い取り」「二次利用可」の読み方は写真の「買い取り」「二次利用可」の意味を、企業側の言葉で説明するで扱っています。この記事は被写体の同意だけを扱います。
なぜ「カメラマンが持ってくるもの」だと思われているのか
この誤解は、広告・モデル撮影の慣行から来ています。モデルを起用する広告撮影や、ストックフォトに写真を出す世界では、撮影者側が「写真を素材として提供する立場」になります。素材を売る人が、売る先に対して「この写真は使ってよい素材です」と示さなければならないので、撮影者が同意書を集めるのです。ここでは撮影者が利用範囲を設計する側にいます。
企業の採用撮影や社内報の撮影では、この構図がそっくり逆になります。写真を使うのは発注企業で、カメラマンは撮って納品したら手を離れます。「使う人が同意を取る」という原則に戻せば、用意するのは発注企業側になります。同じ「撮影」でも、写真の行き先が違えば、同意書を持つ人も変わるということです。
元カメラマンとして正直に書くと、私が現場に立っていた頃、同意書の話が事前に整理されていた企業撮影の現場は、そう多くありませんでした。集合写真を撮り終えたあとで「この写真、採用サイトに出しても大丈夫でしたっけ」という会話が始まる。その場では誰も答えを持っていないので、とりあえず全員を撮って、公開の直前に人事の方が一人ずつ確認して回る。撮影自体は成立しているのですが、社内の手間だけが後ろにずれている状態でした。
そして、この話が撮影当日に出ると、進行が止まります。カメラマンは待つしかなく、拘束時間だけが進みます。同意書は、撮影の品質にも予算にも関わる段取りの一部です。撮影の発注でどこが詰まりやすいかは撮影発注のトラブル事例集|納期・データ・著作権にまとめました。
被写体の3類型で、用意する人と同意の取り方が変わる
「同意書は要るのか」という問いには、被写体が誰かによって別々の答えが出ます。①自社の役員・社員、②取引先や顧客など社外の特定個人、③イベントの来場者や通行人の写り込み。この3つで、用意する人も、同意の取り方も、代わりになる手段も変わります。
| 被写体の類型 | 用意する人 | 同意の取り方 | 代わりになる手段 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|---|
| ① 自社の役員・社員 | 発注企業(人事・広報) | 個人ごとに書面、または社内システム上の電子同意 | 入社時の書面や社内規程に写真利用の定めがある場合は、その範囲で足りるかを確認する | 「業務命令だから同意は不要」と整理してしまう。退職後の扱いが空欄のまま残る |
| ② 取引先・顧客など社外の特定個人 | 発注企業(案件担当) | 個人ごとに書面。相手が法人所属なら所属先の許可も別に取る | 取材協力の覚書・対談の実施要項に、写真の利用条項を入れておく | 本人は快諾しているのに、所属先の広報部門が難色を示すというねじれ |
| ③ イベント来場者・通行人の写り込み | 発注企業(イベント事務局) | 一人ずつの書面は現実的でない | 申込時の注意事項、会場入口の掲示、開会時のアナウンス、撮影を望まない人の意思表示手段 | 掲示を出しただけで終わりにして、写りたくない人の逃げ道を用意していない |
①でとくに多いのが、「業務として撮っているのだから同意は要らない」という整理です。撮影そのものを業務の一環として行うことと、その写真を社外向けの媒体でどう使うかは、切り分けて考えたほうが揉めません。役員・経営者のポートレートも同じで、掲載する媒体と期間を先に決めておくと、後で差し替えるかどうかの判断が速くなります。役員撮影の準備全体は社長・役員のプロフィール写真、失敗しないための全知識にまとめています。
②は、本人の同意だけでは足りないことがある類型です。相手が会社員なら、写っているのは個人であると同時に、その会社の社員でもあります。本人がその場で快諾しても、所属先の広報部門が掲載媒体を見て難色を示す、というねじれは実際に起きます。取材や対談の撮影では、相手企業の広報窓口にも掲載媒体を伝えておくと、後戻りが減ります。
③は、書面を集めること自体が現実的でない類型です。ここは運用の考え方が①②と大きく変わるため、後の章で分けて扱います。
社員を撮る場合|個人情報保護法の観点から先に決めておくこと
社員を撮るときは、肖像権まわりの同意とは別に、個人情報保護法の観点も出てきます。顔写真は、氏名や所属と結びつくことで、特定の個人を識別できる情報になりうるためです。
個人情報保護法は「個人情報」を、生存する個人に関する情報であって、その情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)と定めています(第2条第1項第1号)。顔写真が単体で常に個人情報に当たると断定はできませんが、社員名簿や社員紹介ページと結びつく形で扱う以上、個人情報として扱う前提で設計しておくほうが、実務は結果的に楽になります。
| 条文 | 定めている内容 | 撮影の実務で決めておくこと |
|---|---|---|
| 第17条第1項 | 個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的をできる限り特定しなければならない | 「採用サイト・会社案内・社内報・名刺・社員証」など、載せる媒体を具体的に書き出す。「広報活動全般」で止めない |
| 第21条第2項 | 本人から直接書面(電磁的記録を含む)に記載された本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ本人に対し、その利用目的を明示しなければならない | 同意書という書面で取得するなら、その紙の中に利用目的を書き込んでおく |
| 第18条第1項 | あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならない | 社内報用に撮った写真を採用広告に流用するときの社内手順を、先に決めておく |
| 第17条第2項 | 利用目的を変更する場合は、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない | 後から用途を足したくなったときに、誰がどう判断するかのフローを決めておく |
| 第21条第1項 | 個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を本人に通知し、又は公表しなければならない | 社内向けの個人情報の取扱いに、写真の利用目的が書かれているかを確認する |
| 第27条第5項第1号 | 利用目的の達成に必要な範囲内で個人データの取扱いの全部又は一部を委託することに伴って提供される場合、提供先は「第三者」に該当しない | 撮影を外注して写真データが撮影者側に渡る構図を、委託の枠組みで整理できるか法務に確認する |
表の一番上、第17条第1項の「できる限り特定」は、同意書づくりでいちばん効く項目です。「広報活動のため」とだけ書かれた同意書は、書いた側は広く取れているつもりでも、読んだ社員は自分がどこに出るのか分かりません。媒体名を並べて書くだけで、この曖昧さは消えます。そして媒体が決まると、撮り方も決まります。
表の最後の行が、撮影を外注する企業に関係する部分です。撮影を外注すると、社員の顔写真というデータが、一時的に撮影者側の機材とパソコンに置かれます。この構図は委託の枠組みで整理されることが多い部分ですが、自社のケースがそれに当たるかどうかの当てはめは事情によります。委託先の監督をどう行うか、データをいつ消してもらうかまで含めて、法務部門または顧問弁護士にご確認ください。
もうひとつ、頭の隅に置いておきたい区分があります。個人情報保護法は「要配慮個人情報」という区分を置いていて、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他、本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報を指します(第2条第3項)。写真そのものがこれに当たるかは個別の判断になりますが、健康状態や信条に関わることが読み取れる形で撮る場面では、扱いを別に考える必要が出てきます。
利用目的を具体的に書き出す作業は、法務対応であると同時に、撮影の設計そのものでもあります。採用サイトに載せる前提なら、撮る角度も表情も服装も決まってくるからです。採用媒体の写真がどこまで効くのかは採用サイトの写真で、応募数は本当に変わるのかで扱っています。
退職・異動のあと、その写真を使い続けてよいか
これは既存の解説記事がほとんど触れていない論点です。先に答えを書くと、法令から一意に導ける答えはありません。「退職したら削除する」と書いてある条文はないからです。実務上の整理は、法律に答えを探すのではなく、事前に取り決めておく項目として同意書に書き込む、というものになります。
実際に起きるのは、こういう場面です。3年前に撮った社員紹介ページの写真がある。その社員はすでに退職している。採用サイトはまだ生きている。人事に「あの写真、外してもらえませんか」と連絡が入る。ここで社内の誰も判断基準を持っていないと、その都度の対応になり、担当者が一人で抱え込むことになります。
| 事前に決めておく項目 | 決め方の例 | 決めていないと起きること |
|---|---|---|
| 在籍中に撮った写真を、退職後も使い続けるか | 退職の申出から◯営業日以内に差し替える/次回の媒体更新時にまとめて差し替える | 退職者ごとに個別対応が発生し、対応の速さも範囲もばらつく |
| 差し替えの依頼窓口 | 人事または広報の部署名とメールアドレスを、同意書に明記しておく | 依頼が現場を経由して届かない。届いても誰が動くのか決まらない |
| 同意の撤回を申し出られたときの扱い | 申出から対応までの期間と、対応する範囲(Web・印刷物・配布済み媒体)を書いておく | 印刷済みのパンフレットまで回収するのかを、その場で判断させられる |
| 印刷物・配布済み媒体の扱い | 増刷時から差し替える、といった線を先に引いておく | 回収の要望と現実の間で板挟みになる |
| 異動で所属・肩書が変わったときの扱い | 肩書の記載を写真とセットで更新する担当と時期を決める | 古い肩書のまま外部媒体に残り、問い合わせの原因になる |
| 撮影データの保存期間 | 社内での保管年数と、撮影者側での削除時期を決める | データがどこに何年残っているのか、誰も把握できなくなる |
同意の撤回についても考え方は同じです。撤回の申出があったときに、どこまで戻すのか。Webサイトの画像を差し替えるのは比較的すぐできますが、すでに印刷して配ったパンフレットは回収できません。この線を同意書の中で先に引いておくと、申出があったときに「できること」と「できないこと」を落ち着いて説明できます。
どの線を引くのが自社にとって適切かは、写真の使い道と社内の運用体制によって変わります。文言の妥当性は法務部門または顧問弁護士にご確認ください。この章でお伝えしたいのは、答えを一つに定めることではなく、「決まっていない」状態のまま撮影日を迎えないことです。
イベント撮影の写り込み|掲示とアナウンスでどこまで足りるか
来場者200人のセミナーで、一人ずつ同意書を集めるのは現実的ではありません。実務では、申込時の案内・会場の掲示・開会時のアナウンス・撮影を望まない人の意思表示手段、という4点の組み合わせで運用されています。ただし、これで足りるかどうかは、撮り方と使い道によって変わります。
個人情報保護法は、個人情報を取得した場合、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに利用目的を本人に通知し、又は公表しなければならないと定めています(第21条第1項)。また、取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合には、この通知・公表等の規定を適用しないという定めも置かれています(第21条第4項第4号)。会場の入口に「本イベントは記録・広報用に撮影します。撮影した写真は当社Webサイト等に掲載する場合があります」と掲示する運用は、この通知・公表を意識したものです。
現場で用意しておくとよいのは4点です。第1に、申込フォームやチケットの注意事項に、撮影と掲載の案内を入れておくこと。第2に、会場の入口と受付に、同じ内容を掲示すること。第3に、開会時に司会からアナウンスすること。第4に、撮影を望まない人が意思表示できる手段を用意することです。受付で申し出てもらう、色違いのネームホルダーを渡す、撮影が入らないエリアを設ける、といった方法があります。
抜けがちなのは4点目です。掲示は出ているのに、写りたくない人がどうすればよいのかが書かれていない。これは「同意を取った」というより「告知をした」という状態にとどまります。逆に、意思表示の手段さえ用意しておけば、撮影側にも当日その場で共有できます。このネームホルダーの方は正面から撮らない、この列は引きの画角に入れない、といった形で、撮影の側でも配慮ができるようになります。
もう一点。写り込みの範囲を超える使い方をするなら、話は変わります。特定の一人に大きく寄ったカットを広告のメインビジュアルに使う、氏名や所属を添えて紹介するといった場合は、その方には個別に同意を取りにいくほうが安全です。掲示とアナウンスで足りるかどうかは、撮り方と使い道の組み合わせで変わる、と考えてください。個別の判断は法務部門または顧問弁護士にご確認ください。
モデルリリースに書いておく項目と、そのまま使える文例
同意書に決まった様式はありませんが、書いておく項目はおおむね決まっています。撮影日と場所、被写体、利用目的と媒体、利用期間、加工の範囲、第三者提供の有無、撤回の窓口、データの保存期間。この8つが埋まっていれば、後から読んで意味の分かる書面になります。
| 記載項目 | 書く内容 | 抜けたときに起きること |
|---|---|---|
| 撮影日・撮影場所 | 2026年◯月◯日、本社◯階会議室、など特定できる形で | どの撮影についての同意なのか特定できず、別の撮影にも及ぶのかが曖昧になる |
| 被写体 | 氏名(自署または記名)と所属 | 誰の同意なのかを後から追えない |
| 利用目的と媒体 | 採用サイト、会社案内、社内報、名刺、社員証、公式SNS、求人媒体など具体的に列挙 | 「広報目的」だけでは、どこまで載せてよいかが都度判断になる |
| 利用期間 | 期間を定める/定めない(定めない場合はその旨と、撤回の扱いを明記) | 何年前の写真まで使ってよいのかが分からなくなる |
| 加工の範囲 | トリミング、色調補正、背景の合成、イラスト化などの可否 | 切り抜きや合成の段階で、本人の認識と食い違う |
| 第三者提供の有無 | 求人サイト、取引先の媒体、報道機関への提供を含むかどうか | 外部の求人サイトへ転載する段階でつまずく |
| 撤回・差し替えの窓口 | 部署名とメールアドレス、対応の範囲と期間 | 申出の受け皿がなく、現場で止まる |
| データの保存期間 | 社内での保管年数と、撮影者側での削除時期 | データの所在が把握できなくなる |
以下は、社員を撮影する場合の短い文例です。項目の並びを確認するための例文なので、自社の実情に合わせて足し引きしてお使いください。
写真等の利用に関する同意書
私は、下記の撮影において撮影された私の写真について、下記の利用目的および媒体の範囲で、株式会社◯◯が利用することに同意します。
1. 撮影日・撮影場所:2026年◯月◯日/◯◯
2. 利用目的:採用活動、広報活動および社内周知のため
3. 利用媒体:当社採用サイト、当社コーポレートサイト、会社案内、社内報、当社公式SNS、名刺・社員証
4. 利用期間:定めない(第6項の申出があった場合は同項による)
5. 加工:トリミングおよび色調補正を行う場合があります
6. 撤回:利用の停止を希望する場合は、◯◯部(メール:◯◯)までお申し出ください。お申し出を受けた後、当社Webサイト上の掲載は◯営業日以内に停止します。印刷物については、増刷の際に差し替えます。
7. 保存期間:撮影データは当社にて◯年間保管します。
年 月 日 氏名(自署) 所属
この文例は、そのまま契約書として使えるものではありません
上記は記載項目を確認するための例文です。自社の就業規則、個人情報の取扱いに関する社内規程、すでに運用している同意取得フローとの整合が取れているか、想定している利用範囲に対して文言が足りているかは、社内の法務部門または顧問弁護士のレビューを前提にしてください。なお、日本プロカメラマン手配では業務委託契約と秘密保持契約(NDA)の標準雛形をご用意していますが、被写体との同意書は発注企業ごとに事情が異なるため、貴社の書式でご準備いただく形になります。
誰がいつ集めるか|撮影当日の段取りに落とす
同意書は、撮影当日に集めるものではなく、撮影前に集め終えておくものです。当日に配ると、読む時間・質問に答える時間・記入する時間が全員分積み上がり、撮影の時間割がそのまま後ろにずれます。
数字にすると分かりやすくなります。ポートレート撮影は1時間あたり6〜8名で組むのが保守的な計算です。ここに一人3分の記入時間が乗ると、20名で1時間近い遅れになります。拘束時間はカメラマンの現地到着から撤収完了までで計測しますから、この遅れは延長料金の話に直結します。同意書の回収は、法務の作業であると同時に、コストの話でもあるということです。
| タイミング | 担当 | やること |
|---|---|---|
| 撮影の2〜3週間前 | 広報・人事 | 利用目的と媒体を確定し、同意書の文面を法務部門または顧問弁護士のレビューに回す |
| 撮影の1〜2週間前 | 広報・人事 | 対象者に同意書を配布する(紙または社内フォーム)。撮影の目的と使い道を一緒に伝える |
| 撮影の3営業日前 | 広報・人事 | 回収状況を確認し、未提出者と、撮影を望まない人を洗い出す |
| 撮影の前日 | 発注担当 → 撮影側 | 撮影スロット(時間割)を確定し、撮影しない人・掲載しない人を反映して共有する |
| 撮影当日 | 現場担当 | 未提出者への対応を、その場のルールで統一する(撮らない/撮るが公開は保留) |
| 撮影後 | 広報・人事 | 同意書を保管し、掲載する段階で同意の範囲と照らし合わせる |
当日に「まだ出していない人」が出るのは、前提として組み込んでおくとよいです。撮らないのか、撮るけれど公開は保留するのか。どちらで運用するかを先に決めておけば、現場で一人ずつ判断せずに済みます。撮影の現場は判断する場所ではなく、決まったことを撮る場所だと考えてください。
発注前に確認しておく項目の全体像は撮影を外注する前に確認すべきチェックリスト20項目にまとめてあります。同意書の話も、単発の課題としてではなく、そのチェックリストの一項目として組み込んでおくと抜け落ちません。
日本プロカメラマン手配の場合|同意書の運用は発注企業側で持っていただく前提です
私たちのサービスでも、被写体の同意書は発注企業側でご用意いただく前提でご案内しています。理由はこの記事のはじめに書いたとおりで、写真をどう使うかを決めているのは、ご発注いただいた企業だからです。私たちが用意した書面では、いちばん大事な利用範囲の欄を埋められません。
一方で、撮影の段取りの側では深く関わります。日本プロカメラマン手配は、株式会社ファーストブレイクが運営する企業専門のカメラマン手配サービスです。打ち合わせ、撮影当日のディレクション、納品までを運営会社が一貫して担当し、ポートレート撮影では事前に撮影スロット(時間割)を作成します。この時間割を組む段階で、同意書の回収がどこまで進んでいるか、撮影しない方がいるか、掲載を保留する方がいるかを反映できます。当日にその話が出て止まる、という事態を前に倒せるということです。
契約面では、業務委託契約と秘密保持契約(NDA)の標準雛形をご用意しています。社員の顔写真という情報を扱う以上、撮影者側の守秘義務と、データの取り扱いについて書面を交わしておく意味があります。ただし、雛形の内容だけで自社の法務判断が済むわけではありませんので、社内の法務部門または顧問弁護士のレビューを前提にお使いください。
料金は時間単位です。ハーフ(半日・4時間枠)が60,000円+税=66,000円、フル(1日・8時間枠)が120,000円+税=132,000円。標準機材と商用利用権は基本料金に含まれ、交通費やスタジオ代などの諸経費は実費のパススルーで、運営会社の上乗せはありません。ポートレートの目安は、ハーフで最大20名、フルで最大40〜50名です。料金の内訳は企業撮影の相場を、内訳まで全部公開するに書いています。
ここで一つ切り分けておきます。基本料金に含まれる「商用利用権」は、撮影した写真をカメラマンとの関係で企業が業務用途に使える、という意味です。写っている社員や来場者の同意とは別の話になります。カメラマン側の権利処理と、被写体側の同意。この両方がそろって、はじめて公開できる状態になる、と整理してください。
まとめ|同意書は「誰が使うか」から決まる
モデルリリース(肖像権同意書)は、法律に名前のない実務上の書面です。肖像権を直接定めた条文も存在しません。だからこそ、正しい様式を探すよりも、自社がその写真をどう使うのかを先に書き出したほうが早く前に進みます。用意するのは、使い方を決めている発注企業です。
被写体は3つに分けて考えてください。自社の社員なら、個人情報保護法の観点も含めて利用目的と媒体を具体化する。社外の特定個人なら、本人と所属先の両方に掲載媒体を伝える。イベントの写り込みなら、告知と、写りたくない人の逃げ道をセットで用意する。そのうえで、退職後の扱いと撤回の窓口という、後から効いてくる2項目を書面に入れておきます。
撮影を発注する前に、次の項目を埋めておいてください。
- 写真を載せる媒体を具体的に書き出した(採用サイト・会社案内・社内報・名刺・社員証・SNS・求人媒体など)
- 利用期間と、期間を定めない場合の扱いを決めた
- トリミング・色調補正・背景合成など、加工の範囲を決めた
- 第三者提供(求人サイト・取引先の媒体・報道機関)を含むかどうかを決めた
- 退職・異動のあとにその写真を使い続けるかどうかを決めた
- 同意の撤回・差し替えの窓口と、対応する期間・範囲を決めた
- 撮影データの保存期間と、撮影者側での削除時期を決めた
- 同意書の文面を、社内の法務部門または顧問弁護士のレビューに回した
- 撮影の1〜2週間前に配布し、3営業日前に回収状況を確認する日程を組んだ
- 未提出者が出た場合の当日の扱い(撮らない/撮るが公開は保留)を決めた
埋まらない項目が残ったまま撮影日を迎えると、その判断は当日の現場に持ち込まれます。10人が待っている前で、誰かが一人で決めることになる。そうならないように、この10項目を先に片づけておけば、撮影当日は撮ることに集中できます。社内で予算の説明が要る段階でしたら社内の稟議を通すための「撮影費用」の説明の仕方も参考になるはずです。
この記事の次に読むと、判断が一段進みます
被写体の同意が整理できたら、次は写真そのものの権利と、発注の設計です。
- 写真の権利が誰のものになるかを整理したいとき:撮影データの著作権は誰のものか|企業が誤解している3点
- 見積書の「買い取り」「二次利用可」を読み解きたいとき:写真の「買い取り」「二次利用可」の意味を、企業側の言葉で説明する
- 発注前の確認事項をまとめて押さえたいとき:撮影を外注する前に確認すべきチェックリスト20項目
- どこでもめやすいかを先に知りたいとき:撮影発注のトラブル事例集|納期・データ・著作権
社員が写る撮影を予定していて、同意書の回収と撮影の時間割を一緒に組み立てたい、という段階でしたら、見積りの相談からお受けしています。撮影日と場所、撮影する人数、写真を使いたい媒体をお知らせいただければ、どの枠が必要か、当日の時間割をどう組むか、諸経費がいくらになるかまで書き出してお送りします。稟議に添付できる形式でもお出しできますので、社内の比較材料にお使いください。
よくある質問
モデルリリース(肖像権同意書)は、カメラマンが用意してくれるものですか
企業の撮影では、発注企業が用意するのが基本です。同意書は「この写真をこう使わせてください」と被写体にお願いする書面であり、使い方を決めているのは撮影者ではなく、写真を掲載する企業だからです。広告撮影やストックフォトの世界では撮影者側が集める慣行がありますが、これは撮影者が素材の提供者になるという構図によるものです。自社のケースでどこまでの同意が要るかは、社内の法務部門または顧問弁護士にご確認ください。
社員を撮影した写真を採用サイトに使うのに、同意書は要りますか
書面の形で残しておくことをおすすめします。肖像権を直接定めた条文は存在しませんが、個人情報保護法は個人情報の利用目的をできる限り特定することを求めており(第17条第1項)、本人から直接書面で本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ利用目的を明示することを求めています(第21条第2項)。同意書に「採用サイト・会社案内・社内報」といった媒体を具体的に書いておけば、この明示を兼ねられます。当てはめは個別の事情によりますので、法務部門または顧問弁護士にご確認ください。
退職した社員の写真を、採用サイトに使い続けてよいですか
法令から一意に決まる答えはありません。実務では、退職後の扱いを同意書の中で先に決めておく形をとります。退職の申出から何営業日以内にWebサイトの掲載を差し替えるか、印刷物は増刷時からにするか、といった線を引いておくと、退職者ごとの個別対応になりません。決めていない状態で申出を受けると、その都度の判断になり、対応がばらつきます。文言の妥当性は法務部門または顧問弁護士にご確認ください。
イベントの来場者全員から同意書をもらう必要がありますか
一人ずつ書面を集める運用は現実的ではないため、申込時の案内・会場の掲示・開会時のアナウンス・撮影を望まない人の意思表示手段、という組み合わせで運用されるのが一般的です。個人情報保護法は、個人情報を取得した場合、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに本人に通知し、又は公表することを求めています(第21条第1項)。ただし、特定の一人に大きく寄ったカットを広告に使うなど、写り込みの範囲を超える使い方をするなら、その方には個別に同意を取りにいくほうが安全です。
著作権を譲り受けていれば、被写体の同意は要らないのではありませんか
別々の話として扱ってください。著作権はカメラマンとの間の権利の問題で、被写体の同意は写っている人との問題です。著作権を譲り受けていても、写っている社員が「その媒体に載せるとは聞いていない」という状態であれば、掲載の判断は別に必要になります。逆に同意書があっても、その写真を印刷物に使えるかどうかはカメラマンとの契約で決まります。両方がそろって、はじめて公開できる状態になると考えてください。
