写真の「買い取り」「二次利用可」の意味を、企業側の言葉で説明する

結論から言うと、「買い取り」「二次利用可」「使用権」「著作権フリー」は、どれも著作権法の条文に出てこない言葉です。法律上の定義がないため、同じ「買い取り」でも会社ごとに中身が変わります。見積書で確認すべきなのは、どの言葉が使われているかではなく、その言葉が「何ができる約束」になっているかです。用途・媒体・期間・地域の4つに置き換えて聞き直すと、社内にも説明できる形になります。

目次

写真の「買い取り」「二次利用可」は、著作権法にない業界用語

RIGHTS TERMS DECODED

見積書・料金表を並べて確認するシーン

著作権法の条文を頭から終わりまで探しても、「買い取り」「二次利用」「使用権」「著作権フリー」という語は出てきません。条文が用意している仕組みは、権利そのものを移す「譲渡」(第61条第1項)と、権利は移さずに使ってよいと認める「利用の許諾」(第63条第1項)の2つです。撮影の現場で飛び交う言葉は、この2つの仕組みと、データという物の受け渡しを、それぞれの会社が自分の言い方でラベル付けしたものだと考えてください。

ラベルなので、意味は書いた人の意図で変わります。A社の見積書の「買い取り」は著作権の譲渡を指しているのに、B社の見積書の「買い取り」は「追加料金なしで何度でも使ってよい」という許諾を指している、ということが普通に起こります。どちらも間違いではありません。言葉が同じでも約束の中身が違うだけです。

この記事は、撮影の見積書に「買い取り」「二次利用別途」と書かれていて、それが何を意味するのか社内で説明できずに止まっている広報・マーケティング・人事・総務の方に向けて書いています。扱うのは言葉の意味の翻訳です。権利が最終的に誰のものになるかという帰属そのものの判断は、契約書の文言と取引の実態で決まるため、この記事では前提として1章だけ触れます。

なお、以下は著作権法の条文をもとにした一般的な整理です。自社の契約がどの形に当たるか、提示された条件で目的の使い方ができるかは、契約書の書き方と個別の事情によって変わります。最終的な当てはめは、法務部門または顧問弁護士にご確認ください。

前提|写真の著作権は、撮影した人に自動的に発生する

写真の著作権は、シャッターを切った時点で撮影した人に発生します。著作権法は著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定め(第2条第1項第1号)、写真の著作物という区分を置いています(第2条第4項)。その著作物を創作する者が著作者です(第2条第1項第2号)。そして著作者人格権と著作権の享有には「いかなる方式の履行をも要しない」と定められています(第17条第2項)。登録も申請も要りません。

ここで発注側が誤解しやすいのが、法人が著作者になる仕組み(第15条第1項)です。条文は「法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物」で、法人名義で公表するものについて、別段の定めがなければ法人を著作者とすると定めています。ポイントは「業務に従事する者」で、これは雇用関係にある人が基本です。外部に業務委託した個人カメラマンは通常これに当たらないと考えられますが、当てはめは事案によるため断定はできません。判断が必要な場面では法務部門または顧問弁護士にご確認ください。

つまり、お金を払って発注しただけでは権利は動きません。動かすには、第61条の譲渡か、第63条の許諾のどちらかを契約で決める必要があります。見積書に書かれた「買い取り」「二次利用可」という言葉は、このどちらを選んだのかを名乗っているつもりの言葉です。名乗り方に決まりがないので、読み解きが必要になります。

権利の話を後回しにしたまま撮影を進めて、公開直前に使い方でもめる例は珍しくありません。実際にどんな詰まり方をするのかは撮影発注のトラブル事例集|納期・データ・著作権にまとめています。

「買い取り」という言葉が指しうる3つの中身|譲渡・許諾・データの引き渡し

「買い取り」と書かれているとき、実際に約束されている中身は3つのどれかです。著作権そのものを譲り受ける譲渡か、使ってよいと認めてもらう許諾か、単にデータや原作品を受け取るだけの引き渡しか。この3つは、後で自社が何をできるかがまったく違います。

「買い取り」が指しうる中身著作権法での位置づけ自社ができるようになること見落としやすい点
(1) 著作権の譲渡第61条第1項「著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる」譲り受けた範囲の権利者になる。以後の利用に相手の許諾が要らなくなる第61条第2項により、第27条・第28条の権利は契約書に特掲がないと譲渡人に留保されたものと推定される
(2) 利用の許諾(ライセンス)第63条第1項「著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる」許諾された方法と条件の範囲で使える。権利者はカメラマンのまま第63条第2項により使えるのは「許諾に係る利用方法及び条件の範囲内」。第63条第3項により利用権は著作権者の承諾なく譲渡できない
(3) データ・原作品の引き渡し有体物・データの受け渡しであり、著作権の移転とは別のできごと手元にファイルが残る。バックアップや再納品の依頼が不要になる第18条第2項第2号は、未公表の写真の原作品を譲渡した場合に展示への同意を推定するにとどまる

(1)の譲渡でとくに注意したいのが、第61条第2項です。条文は「著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する」と定めています。第27条は翻訳・翻案などの権利、第28条は二次的著作物の利用に関する原著作者の権利です。

「著作権をすべて譲渡する」と書いてあっても、それだけでは足りないことがある

第61条第2項の推定が働くため、「著作権のすべてを譲渡する」という一文だけでは、第27条・第28条の権利は譲渡人に残ったものと推定されます。写真を切り抜いて別のビジュアルに作り替える、イラスト化する、といった加工を予定しているなら、この2つの条番号を挙げて特掲しているかどうかを契約書で確かめてください。条項の書き方そのものは法務部門または顧問弁護士のレビューを前提にしてください。

(2)の許諾は、権利者が変わらない代わりに、決めた範囲の中でしか使えません。第63条第2項が「許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において」と限定しているためです。範囲が書かれていない見積書は、使ってよい範囲が広いのではなく、範囲が決まっていないだけです。あとから解釈が割れる余地が残ります。

(3)は、意外と多い勘違いです。データを受け取ることと、権利を受け取ることは別のできごとです。納品されたJPEGが自社のサーバーにあることと、その写真をどこまで使ってよいかは、まったく別の話として決まります。見積書の「データ納品」「原データ込み」という行は、権利の説明ではなく成果物の説明だと読んでください。見積書全体をどう査定するかは撮影見積書の読み方|どこを見れば適正か分かるかで扱っています。

3つのどれを選んでも移らないもの|著作者人格権は譲渡できない

譲渡・許諾・データの引き渡しのどれを選んでも、著作者人格権はカメラマンに残ります。第59条が「著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない」と定めているためです。「買い取ったのだから何をしてもよい」と社内で説明してしまうと、ここで食い違いが起きます。

権利条文上の内容譲渡できるか
著作権(複製権など)第21条の複製権、第23条第1項の公衆送信権等、第27条の翻案権等、第28条の二次的著作物の利用に関する原著作者の権利など第61条第1項により、全部または一部を譲渡できる
公表権第18条第1項。未公表の著作物を公衆に提供・提示する権利第59条により譲渡できない
氏名表示権第19条第1項。著作者名を表示するか、表示しないこととするかを決める権利第59条により譲渡できない
同一性保持権第20条第1項。著作物および題号の同一性を保持し、意に反する変更・切除その他の改変を受けない権利第59条により譲渡できない

ただし、条文には調整の仕組みも置かれています。公表については、未公表の著作物の著作権を譲渡した場合、その著作権の行使により公衆に提供・提示することに同意したものと推定されます(第18条第2項第1号)。氏名表示については、利用の目的・態様に照らして著作者が創作者であると主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り省略できるとされています(第19条第3項)。

改変については、著作物の性質、利用の目的・態様に照らしてやむを得ないと認められる改変が適用外とされています(第20条第2項第4号)。これは「トリミングや色調整ならいつでも自由」という意味ではありません。どこまでが「やむを得ない」に当たるかは個別判断になるため、加工を前提にするなら、条文の解釈に頼らず、改変してよい範囲を契約で決めておくほうが実務的です。

社内向けには、こう説明すると通りやすくなります。「お金で動かせるのは使い方の権利で、名前をどう出すか・作品を勝手に作り替えられないという人格の部分は、法律上そもそも動かせない。だから、そこは交渉ではなく取り決めで合わせる」。

「二次利用」は、著作権法の「二次的著作物」とは別の言葉

見積書の「二次利用」と、著作権法の「二次的著作物」は別物です。著作権法は二次的著作物を「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物」と定義しています(第2条第1項第11号)。作り替えて新しい著作物が生まれた状態を指す言葉です。

一方、撮影の現場で言う「二次利用」は、最初に決めた用途の外へ写真を持ち出すこと、つまり別の媒体への転用を指して使われることが多い言葉です。採用サイト用に撮った写真を会社案内のパンフレットに載せる、社内報の写真を交通広告に使う、といった場面です。作り替えていなくても「二次利用」と呼ばれます。定義がずれているので、同じ言葉で違う話をしてしまいます。

やろうとしていることで分けると、こうなります。同じ写真を別の媒体にそのまま載せるだけなら、関係するのは第21条の複製権と第23条第1項の公衆送信権等です。写真を切り抜いて別のビジュアルに作り替えるなら第27条の翻訳権・翻案権等に関わり、譲渡契約であれば第61条第2項の特掲の有無が問題になります。さらに、作り替えたものを使い回す場面では、二次的著作物の利用について原著作物の著作者が同種の権利を専有すると定めた第28条が残ります。

ここが「二次利用可」という表記の弱いところです。その4文字が、複製権と公衆送信権の対象媒体を増やすことだけを指しているのか、第27条の翻案まで許すのかは、言葉からは決まりません。「二次利用は別途」と書かれている場合も同じで、追加費用が発生する条件が用途の追加なのか媒体の追加なのか期間の延長なのかは、聞かないと分かりません。追加請求がどこまで妥当かという観点は出張費・機材費・レタッチ費、追加請求されるのはどこまで妥当かで整理しています。

言葉ではなく「何ができる約束か」で確認する|用途・媒体・期間・地域の4軸

用語を突き止めようとするより、できることを4つの軸で書き出すほうが早く終わります。第63条第2項が使ってよい範囲を「許諾に係る利用方法及び条件の範囲内」と定めている以上、実務でやるべきなのは、その「利用方法及び条件」を自社の言葉で埋めることだからです。用途・媒体・期間・地域の4軸に、改変の可否と再許諾の可否を足した6項目で足ります。

確認する軸決めておくことそのまま使える質問文
用途採用・広報・営業資料・IR・EC・広告など、どの目的で使えるか「この写真は、採用サイトのほかに会社案内と営業資料にも使いたいのですが、追加費用は発生しますか」
媒体自社サイト、採用サイト、SNS、印刷物、交通広告、プレスリリース、動画のサムネイルなど、載せる場所「使う媒体を一覧でお渡しします。この範囲であれば追加なしという形で見積りに書いていただけますか」
期間使用できる期間の上限があるか。あるなら何年か、更新の条件は何か「使用期間に制限はありますか。制限がある場合、期間が切れたあとに取り下げが必要なものはどれですか」
地域国内限定か、海外の拠点・多言語サイト・海外展示会でも使えるか「英語版サイトと海外の展示会でも同じ写真を使う予定です。地域の制限はありますか」
改変の可否トリミング、色補正、合成、テキストの重ね、切り抜きの可否「バナー用にトリミングと文字の重ねをします。改変してよい範囲を書面で決めさせてください」
再許諾の可否グループ会社、取引先、代理店、メディアへ写真を渡してよいか「取材を受けたときに媒体社へ提供することがあります。第三者へ渡してよいかを決めておきたいです」

期間の軸について補足します。著作権の存続期間は著作物の創作の時に始まり、別段の定めがある場合を除いて著作者の死後70年を経過するまで存続します(第51条)。つまり「そのうち権利が消えるから使えるようになる」という発想は、企業の撮影では意味を持ちません。期間の制限は法律ではなく契約で付くものなので、契約の側で確かめる項目になります。

この6項目は、発注前に決めておく条件の一部でもあります。権利以外も含めた発注前の確認事項は撮影を外注する前に確認すべき20のことにまとめました。

見積書・契約書によく出る表記と、そのとき聞くべき質問

実際の見積書に出てくる表記を、確認の質問文とセットで並べます。左の列の意味は、現場でそう使われることが多いという整理であって、法律上の定義ではありません。同じ表記でも会社によって中身が違うという前提のまま、右の列の質問で埋めていくのが安全です。

見積書・契約書の表記現場でよく使われている意味(法律上の定義ではない)確認する質問文
買い取り著作権の譲渡を指すことも、追加費用なしで使える許諾を指すこともある「買い取りというのは、著作権を当社に譲渡していただくという意味ですか。それとも、使ってよい範囲を広く認めていただくという意味ですか」
使用権権利はカメラマンに残したまま、決めた範囲で使ってよいとする許諾を指して使われることが多い「使用できる用途と媒体を列挙して、見積書に書いていただけますか」
二次利用可最初の用途の外でも使ってよい、という意味で使われることが多い「二次利用可というのは、媒体を追加してよいという意味ですか。写真を加工して別のものを作ることも含みますか」
二次利用は別途用途・媒体・期間のいずれかが増えたときに追加費用がかかる、という意味で使われることが多い「別途になるのは何が増えたときですか。金額の決め方も先に教えてください」
商用利用可営利目的の利用を認める、という意味で使われることが多い「広告出稿や商品パッケージへの掲載も商用利用に含まれますか。含まれないものがあれば教えてください」
著作権フリー著作権が消えているという意味ではなく、決められた条件の範囲で使ってよいという意味で使われることが多い「著作権フリーというときの条件を、用途・媒体・期間・地域で書き出していただけますか」
クレジット表記要撮影者名の表示を求める取り決め。第19条第1項の氏名表示権に関わる「表記する位置と書き方の指定はありますか。省略できる媒体があれば決めておきたいです」
改変不可トリミング・色補正・合成などを認めない取り決め。第20条第1項の同一性保持権に関わる「バナーのサイズに合わせたトリミングも不可ですか。認められる加工の範囲を教えてください」
原データ納品/RAW込み成果物の説明であり、権利の説明ではない「データをいただけることと、使ってよい範囲は別に決まるという理解で合っていますか」

この質問文は、相手を試すためのものではありません。書いた側も「うちではこういう意味で使っています」と説明したいのに、聞かれないまま契約が進んでしまうことのほうが多いからです。相見積もりの依頼段階で条件をそろえておくと、金額の比較も正確になります。依頼文の書き方は撮影の相見積もりを取るときの正しい依頼文を参考にしてください。

写真の条件をそのまま動画や被写体の話に持ち込まない

動画は写真と帰属のルールが異なります。映画の著作物については、その著作者が映画製作者に対して製作に参加することを約束しているときは著作権が映画製作者に帰属すると定められています(第29条第1項)。撮影と同時に動画も頼む場合は、写真の条件を流用せず、動画を別項目として条件を決めてください。また、写っている社員の肖像やプライバシー、撮影場所の施設が定める撮影・公開の条件は、著作権とは別の問題として残ります。「買い取り」で著作権の話が片付いても、被写体の同意や施設の使用条件までは片付きません。

日本プロカメラマン手配の場合|商用利用権は基本料金に込みで、追加料金はない

私たち日本プロカメラマン手配では、納品した写真の商用利用権を基本料金に含めています。採用サイト、社内報、SNS、印刷物など、企業の業務用途であれば追加料金なしで使えます。「二次利用は別途」という行が見積書に出てくることはありません。用途が増えるたびに稟議を通し直す、という手間を前提にしていない設計です。

運営は株式会社ファーストブレイク(横浜市中区)です。代表の私・宮崎大地は元カメラマンで、2012年の創業から法人とのお取引は300社を超えました。業務委託契約とNDAの標準雛形があり、著作権譲渡・直接取引禁止・代替体制協力の条項を含みます。内容は貴社の法務レビューを前提としてお出ししています。

料金は撮影のカット数ではなく拘束時間で決まります。ハーフ(半日・4時間枠)が60,000円+税=66,000円、フル(1日・8時間枠)が120,000円+税=132,000円で、標準機材と商用利用権が基本料金に含まれます。諸経費は実費のパススルーで当社の上乗せはありません。何にいくらかかっているかの内訳は企業撮影の相場を、内訳まで全部公開するで公開しています。

私がカメラマンとして自分で見積書を書いていた頃、「買い取り」という行を何の説明もなく入れていた時期があります。当時は業界の共通語だと思っていました。けれど発注側から意味を尋ねられたことは一度もなく、後年、手配する側に回ってから、あのとき言葉の中身を先に書いておけば互いに楽だったと気づきました。用語で片付けず条件で書く、というやり方は、その反省から来ています。

発注前に確認しておくこと|担当者のチェックリスト

見積書を受け取った段階で、次の8つが埋まっていれば、社内説明でも公開直前でも詰まりません。埋まっていない項目だけを質問すれば足ります。

  • 「買い取り」「二次利用」の語があるとき、それが著作権の譲渡か、利用の許諾かを書面で確認した
  • 写真を使う用途を、社内のどの部署のどの制作物まで含めるかまで書き出した
  • 載せる媒体(自社サイト・採用サイト・SNS・印刷物・広告出稿・プレスリリース)を列挙した
  • 使用期間と使用地域に制限が付いているかを確認した
  • トリミング・色補正・合成・文字の重ねなど、改変してよい範囲を決めた
  • グループ会社・取引先・代理店・媒体社へ写真を渡してよいかを決めた
  • クレジット表記の要否と、表記の位置・書き方を確認した
  • 使用範囲が増えたときの追加料金の決め方を、発注前に聞いた

そのうえで、見積書に1行だけ書き足してもらうとしたら、これが効きます。「納品する写真は、用途・媒体・期間・地域を問わず、発注者の業務のために追加費用なく使用できる。改変の可否および第三者提供の可否は別記のとおりとする」。この形にしておけば、あとから用語の解釈で議論になりません。実際の条項の文言は法務部門または顧問弁護士のレビューを前提にしてください。

まとめ|用語を突き止めるより、できることを書き出すほうが早い

「買い取り」「二次利用可」「使用権」「著作権フリー」は、著作権法にない言葉です。条文が用意しているのは第61条の譲渡と第63条の許諾で、業界用語はそのどちらか、またはデータの引き渡しに付けられたラベルにすぎません。だから、言葉の正解を探しても答えは出ません。

やることは3つです。第1に、その言葉が譲渡・許諾・データ引き渡しのどれを指しているかを聞く。第2に、用途・媒体・期間・地域・改変・再許諾の6項目を書き出して埋める。第3に、埋めた内容を見積書か契約書に書いてもらう。ここまでやれば、社内の誰に聞かれても、写真で何ができるかを1分で説明できます。

そして、譲渡でも許諾でも、公表権(第18条)・氏名表示権(第19条)・同一性保持権(第20条)という著作者人格権は、第59条により譲渡できずカメラマンに残ります。ここは金額で動かす対象ではなく、取り決めで合わせる対象です。自社の契約がどの形に当たるかの最終的な判断は、法務部門または顧問弁護士にご確認ください。

この記事の次に読むと、判断が一段進みます

権利まわりの言葉が読めるようになったら、次は見積書全体と発注の設計です。

用途が増えるたびに追加費用を確認する運用が負担になっている、という段階でしたら、権利の条件を先に固めた見積りをお出しします。撮影日と場所、撮影する人数、写真を使いたい媒体をお知らせいただければ、どの枠が必要か、諸経費がいくらになるかまで書き出してお送りします。稟議に添付できる形式でもお出しできますので、社内の比較材料にお使いください。

よくある質問

写真の「買い取り」とは、著作権を譲り受けたという意味ですか

そうとは限りません。「買い取り」は著作権法の条文にない言葉で、法律上の定義がないためです。実際には、著作権の譲渡(第61条第1項)を指していることも、権利は移さずに使ってよいと認める利用の許諾(第63条第1項)を指していることも、データを渡すだけのことを指していることもあります。見積書に「買い取り」とあったら、その3つのどれなのかを書面で確認してください。当てはめは法務部門または顧問弁護士にご確認ください。

「著作権をすべて譲渡する」と契約書にあれば、写真を加工して別のものを作れますか

その一文だけでは足りない可能性があります。著作権法第61条第2項は、著作権を譲渡する契約において第27条または第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定すると定めています。第27条は翻訳・翻案などの権利です。加工や作り替えを予定しているなら、この2つの条番号を挙げて特掲しているかどうかを確認してください。条項の書き方は法務部門または顧問弁護士のレビューを前提にしてください。

「二次利用可」と書かれていれば、SNSにも印刷物にも使えますか

その4文字だけでは決まりません。「二次利用」は著作権法にない言葉で、現場では別媒体への転用を指して使われることが多いものの、どの媒体まで含むかは書き手の意図で変わります。著作権法の「二次的著作物」は、翻訳・編曲・変形・脚色・映画化その他の翻案により創作した著作物のことで(第2条第1項第11号)、別媒体への転用とは別の概念です。使う媒体を列挙して、その範囲で追加費用が発生しないことを見積書に書いてもらってください。

買い取ったのに撮影者名の表記を求められるのはなぜですか

著作者人格権が譲渡できないためです。著作権法第59条は「著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない」と定めており、氏名表示権(第19条第1項)は著作権を譲渡してもカメラマンに残ります。ただし第19条第3項は、利用の目的・態様に照らして著作者が創作者であると主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り著作者名の表示を省略できるとしています。省略できるかは個別判断になるため、媒体ごとの扱いを発注時に決めておくのが実務的です。

撮影データを納品してもらえば、著作権も一緒に受け取ったことになりますか

なりません。データや原作品を受け取ることと、著作権が移ることは別のできごとです。著作権を移すには第61条第1項の譲渡を契約で決める必要があり、使ってよいだけなら第63条第1項の許諾になります。なお著作権法第18条第2項第2号は、未公表の写真の著作物の原作品を譲渡した場合について、原作品による展示の方法で公衆に提示することへの同意を推定するにとどまります。見積書の「データ納品」「原データ込み」は成果物の説明であり、権利の説明ではないと読んでください。

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