フリーランス新法で、撮影を発注する企業に生まれた5つの義務

結論から言うと、フリーランス新法には資本金の基準も従業員数の基準もありません。個人のカメラマンに撮影を発注している会社であれば、規模にかかわらず対象になります。単発の撮影1回でも、取引条件を書面か電磁的方法で明示する義務(第3条)と、役務の提供を受けた日から60日以内に支払期日を定める義務(第4条)は発生します。一方で、買いたたきや報酬の減額を禁じる7つの禁止行為(第5条)は、1か月以上の業務委託が要件です。

目次
企業専門の出張撮影「日本プロカメラマン手配」が、手配の現場から書いています。料金はハーフ66,000円・フル132,000円(税込)。料金表を見る/無料で見積りを依頼する

フリーランス新法は、資本金も従業員数も関係なく撮影の発注にかかる

FREELANCE LAW BASICS

チェックリストにペンでチェックを入れる手元、発注前の打ち合わせ資料イメージ

フリーランス新法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。通称はフリーランス・事業者間取引適正化等法、またはフリーランス法。2024年(令和6年)11月1日に施行され、個人で働く人に業務を委託する事業者に、取引条件の明示や報酬の支払期日など7つの義務を課しています。

「うちは大企業ではないから関係ない」と考えている方に、最初にお伝えしたいことがあります。この法律には、下請法(2026年1月1日から中小受託取引適正化法=取適法)にあったような資本金の基準も、業種・業界の限定もありません。従業員が3人の会社でも社長ひとりの会社でも、個人のカメラマンに撮影を委託した時点で義務が生じます。ここが、これまでの取引適正化の法律といちばん違うところです。

この記事は、個人カメラマンに撮影を発注している広報・人事・総務・管理部門の方に向けて書いています。7つの義務のうち、撮影の発注で実際に効いてくる5つに絞って説明し、残る2つが絞り込みから外れる理由も書きます。

なお、以下は公正取引委員会が公表しているパンフレット等をもとにした、制度の一般的な整理です。自社の取引がどの義務の対象になるかは契約の形や期間で変わります。最終的な当てはめは、法務部門または顧問弁護士にご確認ください。

フリーランス新法の対象になるのは誰か|個人カメラマンと発注企業の関係を整理する

フリーランス新法が守る相手は「特定受託事業者」です。定義は2つあり、従業員を使用しない個人と、代表者ひとりだけで他に役員がおらず従業員も使用していない法人です。屋号で活動している個人カメラマンも、ひとり法人にしているカメラマンも当てはまります。法人化しているから対象外、ということにはなりません。

ここで言う「従業員を使用」は、週の所定労働時間が20時間以上で、かつ31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇っている状態を指します。派遣の受入れも含み、同居の親族だけの場合は該当しません。撮影アシスタントをスポットで頼んでいる程度なら、通常はこの基準に届きません。

発注する側は2種類に分かれます。用語が似ていて紛らわしいので、表で整理します。

呼び方あてはまる事業者負う義務
業務委託事業者フリーランスに業務委託をする事業者すべて。フリーランス同士の取引も含む取引条件の明示義務(第3条)
特定業務委託事業者従業員を使用する個人、または役員が2人以上いる法人・従業員を使用する法人7つの義務すべて(期間の要件があるものを除く)

一般的な事業会社は、従業員を雇っているか役員が2人以上いるかのどちらかに当てはまるため、ほぼ「特定業務委託事業者」になります。資本金や売上の規模を確認するまでもなく、7つの義務がかかる側に立っています。逆に社長ひとりで従業員のいない法人が発注する場合は、取引条件の明示義務だけがかかります。

対象取引は、物品の製造・加工委託、情報成果物の作成委託、役務の提供委託の3つです。撮影の発注は、写真データという成果物の作成委託でもあり、現場に来てもらう役務の委託でもあります。どちらで読んでも対象から外れません。対象外は消費者との取引だけです。

社内の紹介で「知り合いのカメラマン」に頼んでいる場合、そもそも契約書も発注書もない状態になっていることがあります。法律の話に入る前に取引の形を整理したほうが早いので、「知り合いのカメラマン」に頼むリスクを冷静に整理するもあわせてお読みください。

撮影の発注パターン別に見る、かかる義務の一覧表|単発1日・月イチ・年間契約

7つの義務のうち、期間の要件がないものが4つ、1か月以上の業務委託が要件のものが1つ、6か月以上の業務委託が要件のものが2つあります。まず全体像を条番号つきで並べます。

義務条期間の要件撮影の発注での効き方
取引条件の明示義務第3条なし単発1回の撮影でもかかる。5つに含む
期日における報酬支払義務第4条なし単発1回の撮影でもかかる。5つに含む
発注事業者の禁止行為(7類型)第5条1か月以上継続発注に入った時点でかかる。5つに含む
募集情報の的確表示義務第12条なし自社でカメラマンを募集するときにかかる。5つに含む
ハラスメント対策に係る体制整備義務第14条なし撮影現場は社外の人が混ざる場。5つに含む
育児介護等と業務の両立に対する配慮義務第13条6か月以上単発〜数回の撮影発注では要件を満たさない
中途解除等の事前予告・理由開示義務第16条6か月以上単発〜数回の撮影発注では要件を満たさない

5つに絞る根拠は、いま挙げた期間の要件です。撮影の発注は単発1日から数回のスポットが中心で、6か月以上の継続委託まで踏み込む会社は多くありません。7つあることを伏せる理由はないので、外した2つは下のボックスにまとめます。

この記事の5つに入れなかった、残り2つの義務

育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(第13条)と、中途解除等の事前予告・理由開示義務(第16条)は、いずれも6か月以上の期間で行う業務委託が要件です。中途解除の予告は解除日または契約満了日から30日前までに行い、理由を求められたら遅滞なく開示します。年間契約でカメラマンを押さえている会社はこの2つも対象です。一回限りであることが明らかな契約は「不更新」に当たらないなど例外もあるので、枠組みを組む前に法務へご相談ください。

次が、この記事でいちばんお伝えしたい表です。期間の始期は第3条で明示する「業務委託をした日」、終期は「給付を受領する予定日」と「契約の終了日」のうち最も遅い日で判定します。終期は予定日で見るため、実際の納品が前後しても判定は動きません。

撮影の発注パターン期間の判定期間要件のない義務(第3条・第4条・第12条・第14条)禁止行為(第5条/1か月以上)両立配慮・中途解除予告(第13条・第16条/6か月以上)
単発1日|4月10日に発注し、4月20日に撮影、4月28日に納品予定1か月未満かかるかからないかからない
単発1日|4月1日に発注し、5月15日に納品予定(撮影は4月中)1か月以上かかるかかるかからない
月1回のレギュラー撮影を3か月継続(間隔は1か月未満)1か月以上6か月未満かかるかかるかからない
年間契約|4月1日から翌年3月31日までの基本契約6か月以上かかるかかるかかる
単発を年2回|4月と9月に1日ずつ(間が3か月以上空く)それぞれ1か月未満として判定かかるかからないかからない

2行目に注目してください。撮影日が1日だけの単発案件でも、発注から納品予定日までが1か月をまたげば、7つの禁止行為がかかる取引になります。「単発だから禁止行為は関係ない」は正確ではありません。撮影日ではなく発注日と納品予定日で見る、と覚えておいてください。

継続発注の通算にも決まりがあります。更新と認められるのは、当事者が同一で給付または役務提供の内容が一定程度の同一性を持ち、かつ前後の空白期間が1か月未満である場合で、最初の始期から最後の終期までを通算して判定します。同一性は原則として日本標準産業分類の小分類(3桁分類)を参照するとされています。

なお公正取引委員会のパンフレットには、一定期間に該当することを逃れるために空白期間を1か月と1日だけ空けるような行為をしないように、と明記されています。表は「1か月未満に収めればよい」ではなく「1か月をまたぐ発注は対象になる」と読むほうが安全です。

義務1|取引条件の明示義務(第3条):単発の撮影1回でもかかる

取引条件の明示義務は、期間の要件がない義務です。撮影を1日だけ頼む場合でも、業務委託をしたら直ちに、書面または電磁的方法で取引条件を明示することが求められ、口約束だけの発注は認められません。しかもこの義務は、フリーランスに発注するすべての業務委託事業者にかかります。発注する側がフリーランスでも義務を負う、7つのなかで最も広く適用される規定です。

明示する事項は8つです。撮影の発注に置き換えると、次のようになります。

  • 業務委託事業者および特定受託事業者の名称(自社名とカメラマンの氏名または屋号。識別できれば通称や記号でもよい)
  • 業務委託をした日(発注の合意をした日)
  • 特定受託事業者の給付の内容(何を何カット、どの規格・仕様で納品してもらうか。業務委託の目的である使用の範囲を超えて知的財産権を譲渡・許諾させる場合は、その範囲も明記し、対価を報酬に加える必要がある)
  • 給付を受領する期日、または役務の提供を受ける期日(撮影日、納品日)
  • 給付を受領する場所、または役務の提供を受ける場所(撮影場所、データの受け渡し方法)
  • 検査をする場合は、検査を完了する期日(該当する取引のみ)
  • 報酬の額および支払期日(額の記載が難しければ算定方法でもよい。支払期日は具体的な日を特定する。発注側が諸経費を負担する場合は総額が把握できるように明示する)
  • 金銭以外の方法で報酬を支払う場合は、その支払方法に関すること(該当する取引のみ)

3番目は、撮影の発注でとくに抜けやすい項目です。採用サイトに載せるのか駅貼りのポスターにも使うのか、二次利用の範囲を書かないまま「撮影一式」とだけ発注しているケースがあります。用途の書き忘れは、法律以前に金額の食い違いを生みます。

明示の方法は、書面でも電磁的方法でもかまいません。電磁的方法には電子メール、SMS、SNSのメッセージ機能、チャットツール、ファックスなどが含まれ、どれを使うかは発注事業者が選べます。書類の名称も自由です。「チャットで発注しているから違反」ではなく「送っている内容に8項目が入っているか」が問われます。

ただし電磁的方法で明示した場合でも、カメラマン側から書面の交付を求められたら、保護に支障がないと認められる場合を除いて遅滞なく交付する必要があります。チャット中心の運用なら、すぐ出せる発注書のフォーマットを用意しておいてください。

現実的なのは、8項目が自然に埋まるフォーマットを1枚作り、メールかチャットに貼る運用です。発注前に確認する項目全体は撮影を外注する前に確認すべき20のことに整理してあり、法律が求める8項目はそのチェックリストにほぼ含まれています。

義務2|期日における報酬支払義務(第4条):起算点は請求書の受領日ではない

支払期日は、給付を受領した日、または役務の提供を受けた日から起算して60日以内の、できる限り短い期間内に定めることとされています。誤解が多いのが起算点です。「請求書を受け取ってから60日以内」ではありません。撮影という役務の提供を受けた日、あるいは写真データを受領した日から数えます。この義務も期間の要件がなく、単発1回から適用されます。

カメラマンから請求書が届くのが撮影の1か月後、というのはよくある話です。そこに自社の締め日と支払サイトを重ねると、すぐ60日を超えます。撮影日を起点に逆算する発想へ切り替えてください。

支払期日の「書き方」にも要件があります。具体的な日を特定できるように定める必要があり、公正取引委員会のパンフレットには認められる書き方と認められない書き方が例示されています。

発注書への書き方評価理由
「2026年6月30日支払」認められる支払う日が1日に特定できる
「毎月末日締切、翌月末日支払」認められる締切と支払日の組み合わせで日が特定できる
「2026年6月30日まで」認められないいつが支払期日か特定できず、支払期日を定めたと認められない
「納品後60日以内」認められない同じく日が特定できない。60日以内であっても書き方として不足

「60日以内に払うのだから問題ない」と考えて、発注書に「60日以内」と書いている会社は少なくありません。この書き方は支払期日を定めたことにならないとされています。社内では日程が決まっているのに書面の一語で要件を満たさなくなるので、テンプレートの1行を直してください。

月単位の締切制度そのものは認められています。ただし月初に受領した分も60日以内に支払われる設計が必要で、毎月末日締切なら翌月末日までに支払期日を設定します。引っかかりやすいのが「月末締め翌々月払い」の社内ルールです。月初に撮影を受けた分は支払いまで最長90日近く空くため、撮影費だけを別フローにするか支払サイトを見直すかの判断が要ります。

なお「受領後60日以内」は「受領後2か月以内」として運用するため、31日ある月も30日の月も同じ1か月として考えます。金融機関の休業日や再委託の特例など細かい定めもありますが、まずは自社の標準的な支払サイトが原則の60日に収まっているかの確認から始めてください。

義務3|発注事業者の禁止行為(第5条):1か月以上の業務委託でかかる7類型

7つの禁止行為は、特定業務委託事業者が1か月以上の業務委託をする場合にかかります。撮影日が1日でも、発注から納品予定日までが1か月をまたげば対象です。

  • 受領拒否
  • 報酬の減額
  • 返品
  • 買いたたき
  • 購入・利用強制
  • 不当な経済上の利益の提供要請
  • 不当な給付内容の変更・やり直し

押さえておきたいのは、フリーランス側の了解を得ていても違反になる点です。発注事業者に違法性の意識がなかった場合も同じで、「カメラマンさんも納得してくれたので」という説明は成り立ちません。社内で「相手がいいと言ったから」が通る運用なら、そこは組み替えてください。

受領拒否には、一方的な都合による発注の取消しや、納期を延期しておいて定めた納期に受け取らないことも含まれます。撮影の日程が自社都合で流れるのはよくありますが、1か月以上の委託なら受領拒否に当たるおそれが出ます。返品は、不良品などを速やかに返すことは認められ、直ちに発見できない不備であれば6か月以内とされています。

買いたたきは、通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬の額を不当に定めることです。判断は、十分な協議が行われたかという決定方法、決定内容、通常支払われる対価との乖離、原材料等の価格動向を総合的に勘案して行われます。公正取引委員会のパンフレットには、食品メーカーが映像クリエイターに広告動画の制作を委託した際、見積書作成時より納期を大幅に短縮して発注したのに当初の見積額のままにし、通常の対価を大幅に下回る報酬の額を定めた違反例が挙げられています。

この「条件を変えたのに金額を据え置く」形は撮影でも起きます。撮影人数が20名から40名に増えたのに見積り時の金額のまま進める、撮影場所が1拠点から3拠点に増えたのに据え置く。条件変更のタイミングで再見積りを取っていれば避けられます。見積り金額が相場から離れているときの見方は、撮影の見積もりが安すぎるとき、何が抜けているのかにまとめています。

購入・利用強制にも撮影に近い違反例があります。番組制作会社が撮影を委託しているカメラマンに、関連会社が制作した映画のチケットを目標枚数を定めて購入させた例です。重要なのは、発注事業者に強制の認識がなくても事実上購入等を余儀なくさせていると認められる場合は該当する、とされている点です。自社商品の販促で委託先にも声をかける慣行がある会社は、対象範囲を見直してください。

報酬の減額は、名目・方法・金額にかかわらずあらゆる減額行為が禁止されています。協賛金の徴収のように別の名目で回収する形も含まれます。撮影の発注で起きやすいのは、後で触れる振込手数料の差し引きです。

義務4|募集情報の的確表示義務(第12条):自社でカメラマンを募集するときにかかる

募集情報の的確表示義務は、広告等でフリーランスの募集情報を出すときに、その情報を的確に表示することを求めるものです。特定業務委託事業者にかかり、期間の要件はありません。撮影を1件ずつ発注する場面では出番が少ないものの、対象になる会社はあります。

該当しやすいのは、自社サイトや求人媒体、SNSで「業務委託のカメラマンを募集します」という告知を出している会社です。イベントの多い会社が、スポットで動けるカメラマンをプールする目的で募集をかけることがあります。掲載した報酬の目安、業務内容、稼働の頻度が実際の発注と食い違わないようにしてください。募集ページを作った部署と発注する部署が分かれていると条件が更新されないまま残りがちなので、募集情報のオーナーを1人決めるだけでも対応は進みます。

撮影の見積りは、内訳つきで無料です

用途・日程・場所をお知らせいただければ、拘束時間と人員の内訳が分かる見積りをお送りします。料金はハーフ(4時間枠)66,000円・フル(8時間枠)132,000円(税込)です。

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義務5|ハラスメント対策に係る体制整備義務(第14条):撮影現場は社外の人が混ざる場

ハラスメント対策に係る体制整備義務も、特定業務委託事業者にかかり、期間の要件はありません。委託先のフリーランスがハラスメントを受けることのないよう、必要な体制を整えることが求められます。社内向けの相談体制と別物を作る話ではなく、委託先も対象に含める視点を足すことになります。

撮影の現場は、この義務が具体的に効いてくる場面です。カメラマンは自社の会議室やイベント会場に入り、役員や社員を被写体として撮影します。当日は代理店、会場スタッフ、ヘアメイクなど複数の会社の人が同じ場所にいて、指示系統が曖昧なまま誰かがカメラマンに強い言い方をする、という場面が起きうる構造です。

私自身、元カメラマンとして企業の撮影に入っていた頃、当日はじめて会う担当者から「聞いてないんだけど」と現場で言われることが何度かありました。原因はほとんどが社内で情報が回っていなかったことです。外部の人間はその場で言い返せず、黙って撮り続けることになります。当日の指示を出す人をひとりに決めて事前に共有する。それが体制整備の入口だと考えています。何をどこまで整えるかは自社の就業環境整備の方針と一体なので、人事・法務と一緒に確認してください。

フリーランス新法と取適法(2026年1月施行の旧下請法)は何が違うのか

いちばん大きな違いは、発注事業者が自ら用いる役務の委託が対象に入るかどうかです。取適法では、発注事業者が他者に提供する役務が役務提供委託の対象で、自ら用いる役務の委託は対象外とされています。一方フリーランス新法は、自ら用いる役務の提供をフリーランスに委託することも対象に含みます。この違いは公正取引委員会のパンフレットに明記されています。

撮影に当てはめます。自社のコーポレートサイトに載せる写真、採用サイト用の社員写真、社内報に使うイベント写真。いずれも自社で使うために撮ってもらうものです。こうした発注は取適法の役務提供委託には当たらない可能性があり、その場合は取適法の枠外です。ただしフリーランス新法には自ら用いるかどうかの区別がないため、こちらの対象には該当しうる関係です。「下請法の資本金基準に当たらないから関係ない」と整理していた会社ほど、確認する価値があります。

比較軸フリーランス新法取適法(中小受託取引適正化法)
施行2024年11月1日2026年1月1日(下請法を改正・改称)
規模の基準資本金基準・従業員数基準ともになし資本金基準に加えて従業員数基準が新設(製造委託等は300人、情報成果物作成委託・役務提供委託は100人が目安)
業種の限定なし。建設業法の建設工事も対象建設業法の建設工事は対象外
自ら用いる役務の委託対象に含まれる役務提供委託の対象外
守られる相手特定受託事業者(従業員を使用しない個人・ひとり法人)中小受託事業者(資本金または従業員数の基準に当てはまる事業者)

取適法の側にも撮影の発注に効く改正が入っています。手形払い等の禁止、協議に応じない一方的な代金決定の禁止、振込手数料を受託側に負担させることの禁止です。用語も変わり、親事業者は委託事業者、下請事業者は中小受託事業者になりました。社内規程に旧表記が残っていれば見直すタイミングです。

自社の個別の発注がどちらの対象になるかは、契約の形、当事者の規模、成果物の用途で変わります。この記事は制度の枠組みを整理したもので、当てはめの判断まではできません。方針を決める前に法務部門または顧問弁護士に事実関係を渡して確認してください。消費税の側でも同じ整理が必要なので、あわせてインボイス制度で個人カメラマンへの発注はどう変わったかもご覧ください。

発注担当者がつまずきやすい5つの場面

ここまでの内容を、実際に手が止まる場面に置き換えます。

社内で起きている状態関係する義務直し方
撮影の依頼を電話とチャットだけで済ませ、発注書を出していない取引条件の明示義務(第3条)チャットでの明示は認められる。8項目が入った定型文を1つ作り、それを貼る運用にする
「請求書を受け取ってから60日以内に払えばよい」と理解している報酬支払義務(第4条)起算点は役務の提供を受けた日または給付を受領した日。撮影日から逆算する
支払いが「月末締め翌々月払い」の社内ルールに乗っている報酬支払義務(第4条)月初に受けた撮影が60日を超える。撮影費を別フローにするか支払サイトを見直す
発注書の支払欄に「納品後60日以内」と書いている報酬支払義務(第4条)支払期日を定めたと認められない。具体的な日を特定する書き方に変える
振込手数料を報酬から差し引いて送金している報酬の減額(第5条/1か月以上の委託)報酬の減額に当たりうる。手数料の負担をどちらが持つかを明示のうえ確認する

最後の振込手数料は、実務でとくに多い論点です。公正取引委員会のパンフレットには、出版社が記者に報酬を振り込む際の手数料を負担させ報酬額から差し引いた、という報酬の減額の違反例が挙げられています。撮影の発注でも、経理システムの初期設定が差引のまま、というケースがあります。悪意の有無ではなく差し引いた事実で判断されるので、支払フローの設定を一度見ておいてください。

出張費や機材費、レタッチ費の扱いをどこまで認めるかという請求段階の判断は、出張費・機材費・レタッチ費、追加請求されるのはどこまで妥当かに整理してあります。

私が個人でカメラマンをしていた頃、発注書をもらえた案件は半分くらいでした。残りはメール本文に「◯月◯日、御社会議室で社員20名の撮影をお願いします」と書かれているだけです。それでも仕事は回っていましたが、揉めたときに立ち返る書面がない状態でした。条件を先に書いて渡すのは、法律への対応というより双方の手戻りを減らす作業です。

違反したらどうなるか|勧告・命令・公表と50万円以下の罰金

いきなり罰金が科されるわけではありません。フリーランス側は公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省に申出ができ、行政は報告徴収・立入検査を行ったうえで、指導・助言、勧告、命令・公表という順に対応します。命令に違反した場合に50万円以下の罰金が定められている、という構造です。

金額よりも実務上重いのは公表です。採用サイトの写真を撮ってもらう発注で社名が公表されれば、その写真を使う目的と矛盾します。とはいえ脅すような話でもありません。すでに公表された勧告事例には、支払期日を役務提供日から60日を超えて設定していたことを理由とするものが報じられています。裏を返せば、フォーマットを直せば済む範囲の話でも指摘の対象になる、ということです。

あわせて押さえておきたいのが報復措置の禁止です。フリーランスが行政に申出をしたことを理由に、契約解除や取引停止といった不利益な取扱いをしてはならないと定められています。相談窓口として「フリーランス・トラブル110番」も用意されています。知らずに要件を満たしていない会社は多いのですが、直す作業そのものは難しくありません。多くの場合、発注書のフォーマットと支払サイトの2か所です。

社内の発注フローを整える順番|担当者のチェックリスト

優先順位をつけるなら、単発の発注1回からかかる第3条と第4条が先です。この2つで発注件数の大半がカバーできます。以下は社内の手順書に落とすときの確認項目です。

  • 撮影の発注に使う発注書または定型メールに、第3条の8項目が入っているか
  • 写真の用途と二次利用の範囲を、発注時に文字で書いているか
  • 発注書の支払期日欄が「◯年◯月◯日支払」または「毎月◯日締切、翌月◯日支払」の形式になっているか
  • 自社の標準支払サイトで、撮影日から起算して60日以内に着金する計算になっているか
  • 振込手数料を報酬から差し引く設定になっていないか、経理システムの初期値を確認したか
  • 発注日から納品予定日までが1か月をまたぐ案件を把握しているか(禁止行為の対象になる)
  • 撮影条件が変わったとき、再見積りを取り直す手順が決まっているか(買いたたきの回避)
  • 撮影当日にカメラマンへ指示を出す担当者を、1人に決めて事前に共有しているか

このうち今日から動かせるのは上の4つです。発注書のテンプレートを1枚直し、支払期日の書き方を変え、経理の振込設定を確認する。ここまでで単発の撮影発注についての義務はおおむね形になります。

撮影の窓口を法人に一本化すると、5つの義務はどう変わるか

正直に書くと、手配会社を通せば義務がなくなる、という単純な話ではありません。ただし契約と請求の相手が変われば、発注企業から見た構造は変わります。フリーランス新法が守る特定受託事業者は、従業員を使用しない個人か、代表者以外に役員がおらず従業員も使用しない法人です。役員が2人以上いる法人や従業員を雇っている法人はこの定義から外れるため、そうした法人との取引は対象外になりうる、という整理です。

では実際に撮影するカメラマンが個人事業主だった場合はどうなるか。公正取引委員会のパンフレットには、単に仲介をしているだけなら特定業務委託事業者に該当しないものの、フリーランスに再委託している場合や実質的に業務委託をしているといえる場合は該当する、と説明されています。判断は委託内容への関与状況等を総合考慮して行われます。つまり、再委託している手配会社の側が明示や支払期日の義務を負う立場になります。

発注企業にとっての実務上の意味は、管理する契約の本数が減るという一点です。都度カメラマンを探して個別に発注していると、案件ごとに8項目の明示と支払期日の管理が発生します。もちろん法律の対象かどうかで発注先を選ぶ話ではありません。まず撮影の要件で選び、同等の候補が並んだときに管理コストを見る、という順番が現実的です。会社・個人・エージェントで何が変わるかは撮影会社と個人カメラマンとエージェント、どう違うのかで比較しています。

まとめ|今日確認するのは、発注書の有無と支払期日の書き方

フリーランス新法は、資本金の基準も従業員数の基準もなく、個人カメラマンに撮影を発注するすべての企業にかかります。義務は全部で7つ。取引条件の明示義務(第3条)、期日における報酬支払義務(第4条)、募集情報の的確表示義務(第12条)、ハラスメント対策に係る体制整備義務(第14条)には期間の要件がなく、単発1回から適用されます。7つの禁止行為(第5条)は1か月以上の業務委託が要件で、判定は撮影日ではなく発注日から納品予定日までで行います。残る2つ(第13条・第16条)は6か月以上の継続委託が要件です。支払期日の起算点は請求書の受領日ではなく、役務の提供を受けた日または給付を受領した日から60日以内で、「60日以内」という書き方では支払期日を定めたことになりません。振込手数料の差し引きは報酬の減額に当たるおそれがあります。自社サイト用の写真のように自ら用いる役務の委託は、取適法の枠外であってもフリーランス新法の対象に該当しうる関係です。当てはめは法務部門または顧問弁護士にご確認ください。

私たち日本プロカメラマン手配は、企業専門のカメラマン手配サービスです。運営は株式会社ファーストブレイク(横浜市中区)、代表の私・宮崎大地は元カメラマンで、2012年の創業から法人とのお取引は300社を超えました。全国の登録カメラマンから用途に合う人を選んでアサインし、打ち合わせ、当日の進行のディレクション、納品までを窓口として引き受けています。業務委託契約とNDAの標準雛形(著作権譲渡・直接取引禁止・代替体制協力の条項を含む)があり、内容は貴社の法務レビューを前提としてお出ししています。料金はカット数ではなく拘束時間制で、ハーフ(半日・4時間枠)が60,000円+税=66,000円、フル(1日・8時間枠)が120,000円+税=132,000円、延長は30分ごと8,580円(税込・30分単位で切り上げ)です。標準機材と商用利用権は基本料金に含まれ、諸経費は実費のパススルーで当社の上乗せはありません。内訳は料金ページで公開しています。

この記事の次に読むと、判断が一段進みます

義務の全体像がつかめたら、次は発注そのものの設計です。

発注のたびに取引条件の明示と支払期日の管理を繰り返すのが負担になっている、という段階でしたら、窓口を1社にまとめる形もご検討ください。撮影日と場所、撮影する人数、写真の用途をお知らせいただければ、どの枠が必要か、諸経費がいくらになるかまで書き出してお見積りをお出しします。稟議に添付できる形式でもお送りできますので、社内の比較材料にお使いください。

よくある質問

フリーランス新法は、単発で1回だけ撮影を発注する場合もかかりますか

かかります。取引条件の明示義務(第3条)と期日における報酬支払義務(第4条)には期間の要件がなく、単発1回でも適用されます。一方、買いたたきや報酬の減額を含む7つの禁止行為(第5条)は1か月以上の業務委託が要件です。この1か月は業務委託をした日から給付の受領予定日または契約終了日までで判定するため、撮影日が1日でも発注から納品まで1か月をまたげば対象です。当てはめは法務部門または顧問弁護士にご確認ください。

資本金1,000万円の会社でもフリーランス新法の対象になりますか

なります。フリーランス新法には資本金の基準も従業員数の基準もなく、業種・業界の限定もありません。個人のカメラマンに撮影を委託した時点で義務が生じます。従業員を雇っている会社、または役員が2人以上いる法人は「特定業務委託事業者」にあたり、7つの義務が対象です。資本金基準があるのは取適法(2026年1月1日施行の旧下請法)のほうで、その基準に当たらないことはフリーランス新法の対象外である理由になりません。

報酬の支払期日は、請求書を受け取ってから60日以内でよいですか

いいえ、起算点が違います。支払期日は、給付を受領した日または役務の提供を受けた日から起算して60日以内の、できる限り短い期間内に定めます。請求書の受領日ではありません。撮影の請求書は撮影から1か月後に届くこともあり、請求書起点で数えると60日を超えるおそれがあります。「月末締め翌々月払い」の社内ルールも、月初に受けた撮影が60日を超えるため見直しが必要です。

撮影の発注書をチャットで送っても、取引条件の明示義務を満たしますか

明示の方法としては認められています。書面のほか、電子メール、SMS、SNSのメッセージ機能、チャットツール、ファックスなどの電磁的方法が使え、どれを選ぶかは発注事業者が決められます。問われるのは方法ではなく、名称・業務委託をした日・給付の内容・受領または役務提供を受ける期日と場所・検査完了期日・報酬額と支払期日の8事項が入っているかです。なお電磁的方法で明示した場合も、書面の交付を求められたときは遅滞なく交付する必要があります。

振込手数料をカメラマンの報酬から差し引いてもよいですか

報酬の減額に当たるおそれがあります。公正取引委員会のパンフレットには、出版社が記者に報酬を振り込む際の手数料を負担させ報酬額から差し引いた、という違反例が挙げられています。報酬の減額は1か月以上の業務委託にかかる禁止行為で、名目・方法・金額にかかわらず対象とされ、フリーランス側の了解を得ていても違反になります。手数料の負担は発注時の取引条件として明示してください。取適法の側でも、振込手数料を受託側に負担させることが禁止されています。

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